遺産相続で誰がいくらもらえる?遺留分の計算方法
相続放棄とは、受け継がれるであろう遺産相続の権利を放棄する手続きのことです。
そして相続放棄の手続きとは、「家庭裁判所に相続放棄に必要な書類を提出して、裁判所に受理される」ことを言います。
今回は、「亡くなった人の一切の遺産を相続せずに、すべてを放棄する」相続放棄についてご説明します。
相続放棄のメリットとデメリットについて
まず、相続放棄のメリットとデメリットについてお話しします。
【メリット】
<被相続人の負債(借金)を返済する必要がなくなる>
遺産相続といえば、預貯金や不動産、そのほか価値のある遺品などを受け継ぐプラスの遺産を思い浮かべますが、借金や延滞金、税金の未払い金といったマイナスの遺産がある場合も考えられます。
相続放棄をするとマイナスの遺産を返済する義務も放棄することになるので、被相続人(亡くなった人)の借金などを負うことはなくなります。
<相続財産を分散させないでまとめられる>
相続放棄は各個人でするので、兄弟姉妹など複数の遺産相続人がいる場合、これを利用することで財産を分散せずにまとめて相続することが可能です。
例えば兄弟がA、B、Cさんの3人の場合、Aが相続放棄することでBさんとCさんに遺産が配分、AさんとBさんが相続放棄すれば、遺産はCさんひとりが相続することになります。
<相続トラブルに巻き込まれないで済む>
複数の法定相続人がいる場合、さまざまな遺産分割手続きを進めなくてはなりません。これだけでも大変なのですが、その上にお互いの意見が合わずトラブルになればさらに労力が必要となります。
トラブルが長期化して家庭裁判所での調停や審判を仰ぐとなると、解決までに3年以上かかることも珍しくありません。相続放棄をすることで、これら遺産相続に関する一切の手続きに関わる必要はなくなります。
【デメリット】
<プラスの遺産も相続できなくなる>
相続放棄をすると、マイナスの遺産だけではなくプラスの遺産の相続権利も同時に放棄することになります。例えば500万円の負債があって相続放棄した後、1000万円の遺産があることがわかっても、相続することはできません。
相続放棄する前に、被相続人の財産をしっかり調査することが重要です。
相続放棄の手順
以下が相続放棄の際の基本的な手順となります。
【1:相続放棄に必要な種類をそろえる】
・相続放棄申述書
・亡くなった人の戸籍謄本
・亡くなった人の住民票、または戸籍の附票
・相続放棄をする人の戸籍謄本
・収入印紙(800円)
・郵便切手
基本的にはこれらの書類をそろえますが、被相続人と相続人の関係などで他の書類が必要になることもあります。事前に司法書士などの専門家に確認しておきましょう。
※相続放棄に必要な費用
相続放棄には収入印紙や連絡用の切手、戸籍謄本、住民票などの代金がかかりますが、場合によっては被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本などが必要になることもあるので、その分の代金や郵送費、交通費もかかってきます。基本的には1000円~5000円程度と考えておきましょう。
【2:相続放棄に必要な書類を提出する家庭裁判所の確認】
相続放棄の書類を提出するのは、亡くなった人の最後の住所を管轄する家庭裁判所です。管轄の家庭裁判所がどこになるのかは、しっかりと確認しておきましょう。
【3:相続放棄申述書の必要事項に記入、家庭裁判所に必要書類を送る】
相続放棄申述書の必要事項に記入、捺印をしたら、必要書類一式を管轄の家庭裁判所に送ります。裁判所によっては郵送ではなく直接提出する必要があるので、確認しておきましょう。
【4:送られてくる「相続放棄照会書」に記入して返送する】
必要書類を提出すると「相続放棄照会書」が送付されます。これは裁判官からの質問状で、回答を記入して返送します。照会書の回答次第では、相続放棄が却下される可能性もあるので慎重に記入します。
【5:「相続放棄申述受理通知書」が届いて手続き完了】
「相続放棄照会書」を返送して1週間から10日間前後で、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これは相続放棄が認められたという通知書なので、送られてきた時点で相続放棄が完了となります。
※自分だけで手続きせずに、専門家に依頼する
相続放棄に必要な書類をそろえたり、「相続放棄照会書」の記入などは相続人が行うのは大変です。不備があり相続放棄が却下されてしまうと、二度と相続放棄することはできません。
相続放棄は、相続人の立場などによってその内容や手続き方法が異なります。複雑な部分も多々あるので、専門家に依頼するなどして、しっかりと手続きを行う必要があります。
相続放棄の主な注意点
【相続放棄手続きの期限3カ月とは】
相続放棄の手続きをするには、相続人が自身に相続が始まったことを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
間違いやすいですが、「被相続人が亡くなってから3カ月以内」ではありません。そのため、遠くの親戚などが亡くなって数年たっていても、亡くなったことを知ってから3カ月以内であれば相続放棄手続きができる、ということを覚えておきましょう。
【相続放棄ができなくなるパターン】
<期限を過ぎてしまう>
前述した通り、相続人が相続を知ってから3カ月以内に手続きをしないと相続放棄はできません。しかし、3カ月以内に相続放棄手続きを完了している必要はなく、相続放棄の手続き申請をしていれば問題ありません。
<遺産を処分してしまう>
不動産や価値のある遺品の一部を売却したり、財産に関する契約の締結、解除をすると相続放棄が不可になります。ただし、生命保険などは受け取っても相続放棄の手続きに影響はありません。重要な点としては、「マイナスの遺産を少額でも弁済してしまうと相続放棄ができなくなる」ということです。
<故意に遺産を隠す>
遺産のプラス分を隠してマイナス分だけを相続放棄することはできません。
【遺産の負債分が不明な場合の措置】
プラス分とマイナス分の遺産のどちらが多いのか不明なら、「限定承認」という方法が有効です。これは、プラスとマイナスの遺産があった場合に、マイナス分の遺産がプラス分の遺産を超えない範囲で相続するという方法です。
こうすることで、相続したマイナスの遺産の債務をプラスの遺産から弁済して、相続人固有の財産で弁済する責任を負わずにすみます。
【相続放棄をした場合のマイナスの遺産の行方】
相続放棄をすると最初から相続人ではなかったという判断となり、被相続人の両親や兄弟姉妹、その甥や姪という順番で相続権が移っていき、負債の支払い義務が生じます。身近な間柄なら相続放棄したことを伝え、疎遠な間柄なら手紙や代理人を通して早めに伝えてトラブルの防止対策をしておきましょう。