【WLBコラム】看護師のためのメンタルマネジメント〜責任と重圧に負けないしなやかな心のつくり方〜

山本武史

山本武史

テーマ:看護師

最近、看護師の方向けの研修に
多く登壇させていただいています。

その中で気がかりに思うことがあります。

それは、看護師の皆さまの
心の健康についてです。


一般的にも、
看護師はメンタルヘルスについて
ハイリスクグループだと言われています。

僕が考えるに、その理由は7つあります。


①直接人の命や健康に携わることの重責
②仕事量が多いだけでなく、その変動幅も大きい
③臨機応変かつ適切な対処が求められる緊張感
④多様な専門職同士など対人関係におけるしがらみ
⑤ハラスメントに巻き込まれやすい職場環境
⑥交代制による不規則な生活
⑦時間のコントロールが難しい業務内容



実際、厚生労働省が発表している
「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況 (平成26年度結果)」
によると、

看護職を含む医療・福祉(医療業)は、
社会福祉・介護事業に次いで、
精神障害の労災請求件数の多い職種の
第2位となっているようです。
(日本看護協会HP参照)



ということで、しっかりとした
メンタルマネジメントが求められるのが、
看護職の皆さまなんですね。


そんな看護職の方向けに、
シンプルかつすぐできる
メンタルマネジメントの手法を
紹介していきます。



看護師という職は、
憧れを抱いて就く人も多いようですね。


また、働くうちに大きなやりがいを
感じる人もたくさんいます。


そんな看護師という職をあきらめる前に、
ぜひ試してみてくださいね。



看護師を続けている人の特徴として、
(これは看護師を志した当初からの人も、
 看護職についてからそうなった人もいますが)

「責任感が強い」
「滅私奉公精神」
「思いやりの強さ」など、

自分よりも他者を優先させてしまう傾向が
強いように思います。


あなたはいかがですか?




「自分が幸せでなければ、
 他人を幸せにはできない」

これは、私が今は亡き父から
言われ続けてきた言葉です。


当時は、
「まぁ、そんなものかな」
程度にしか思っていませんでしたが、
今は至極真っ当な考え方に思えます。




例えば、仕事がうまくいかず
イライラしている時は
妻に笑顔で接することは難しいですし、

自分が悩み苦しんでいる時に
子どもの悩み相談に
乗ってやることはできません。


自分が満たされ、
心にゆとりがある時でないと、
誰かを心から大切にすることは
できないものです。



そもそも他者に献身的に関わることが
仕事である看護師のあなたは、

もしかしたら、
自分の心の状態などお構いなしに、
他者を大切にしているかもしれません。


しかし、気をつけてくださいね。


そこからあなた自身のメンタルを
傷つけてしまう可能性がありますから。




例えば、怒りの感情。

仕事中に怒りが
込み上げてくることはありませんか?



しかし、当然ながら仕事中に
怒りの感情をあらわにすることはできず、
仕事を投げ出してストレス発散することも
できませんよね。


結果として、
あなた自身の胸の内に
溜め込んでしまい、
辛い思いをされていることでしょう。



そしてさらに、
怒りの感情を抱えたままでは、
仕事に集中できず、
相手の話もきちんと傾聴できず、
仕事の効率が悪くなり、
そんな自分にまたイライラを募らせる
という悪循環に陥ってしまいませんか?



怒りの感情は落ち着いて受け流せるように、
あるいは何か怒りの原因となる出来事を
経験しても気にならないように
心の器を大きくすることを、
普段から心がけてみてください。



さて、小さなコップに
一つかみの塩を入れたら、
どうなるでしょう?



もう飲めたものではありませんよね。



しかし、琵琶湖ほどの大きな湖に
一つかみの塩を入れても、
塩分濃度はほとんど変わりません。



ちょっとしたことでイライラしてしまうのは、
心の水の量が少なくなってしまっている証拠です。


心の器を大きくして、
そこにたっぷりの水を蓄えるようにしましょう。



そうすることによって、
多少のことでは動じなくなり、
精神的なゆとりが持てるようになります。



では、どのようにすれば、
心の器を広げ、水をたっぷりと
蓄えられるのでしょうか?



その方法を3つご紹介しますね。

①心のゆとりを作る
②時間のゆとりを作る
③人間関係のゆとりを作る


①心のゆとりを作る
まずは、あなたの心にゆとりを作っていきましょう。

どうやって作るかというと、
あなた自身の考え方を変えるのです。


それに適したカウンセリングテクニックを紹介します。
アメリカの臨床心理学者、
アルバート・エリスが提唱した論理療法の中心概念
『ABC理論』です。


これは、
状況や出来事(Activating event :『A』)の
受け止め方(Belief:『B』)が、
感情やその後の行動といった
結果(Consequence:『C』)を決める
という考え方です。






つまり私たちは、
図のように『Belief(受け止め方、価値観、信念)』
というメガネをかけていて、

そのメガネの色によって、
状況や出来事の印象を決めているのです。



目の前の状況が暗く見えたとしても、
そのサングラスを外し、
クリアなレンズのメガネにかけ替えることで、
色彩豊かな景色に一変するのです。



ここで、間違っても状況や出来事『A』を
変えようとしないでくださいね。



例えば、
「あのDr.の高圧的な態度をなんとかしよう」とか、
「あの患者のわがままを直してやろう」とか。


そんなことは無理ですよね。

変えられないことを変えようとすると、
それこそストレスになってしまいますから、
絶対にやめておきましょう。



そうではなく、
自分のメガネをかけ替えることに専念しましょうね。



自分のメガネを変えるには、
あなたが憧れる人とか尊敬する人の
メガネを借りると良いですよ。



「〇〇さんだったら、どう受け止めるかな?」とか
「〇〇さんなら、どう対処するだろうか?」と考えると、

視野が広がり、
意外と簡単に考え方が変わります。

ぜひ試してみてください。




②時間のゆとりを作る

仕事中、時間に追われていたり、
締め切り間近で焦ったりすると、
心のゆとりもなくなりますよね。


その状態で緊張感のある作業や
臨機応変な対応を求められたら…、
心が悲鳴をあげそうになることでしょう。



そうなる前に、
時間のゆとりを作る工夫をしましょう。



時間のゆとりを作る方法は、
実はたくさんあります。


今回は、看護職の特徴を考えつつ、
使えそうなノウハウを3つ紹介しますね。



一つ目は、生活習慣を変えてゆとりを作る。

二つ目は、イメージトレーニングでゆとりを作る。

三つ目は、スキルアップでゆとりを作る。



一つ目の生活習慣を変えて
ゆとりを作るというのは、
結論から言うと、『運動習慣』です。


特に適度な有酸素運動には、
ストレスホルモン(コルチゾール)を低下させて、
ごきげんホルモン(ドーパミン)を
増加させる作用があります。


むしゃくしゃしたときに
体を動かすと結構スッキリしますよね。

あれです。


1回30分、週に3回程度、
少し息が上がるくらいのウォーキングやジョギング、
あるいはサイクリングを楽しむ習慣を身につけてください。


ストレスコントロールがうまくいくと、
当然、仕事の生産性も上がり、
時間にゆとりが生まれます。



二つ目のイメージトレーニングについて。


これはスポーツ選手なら
プロ、アマ問わず広く取り入れられている、
本番に強くなるためのトレーニング方法です。


試合やレース前に展開を
イメージすることによって心の準備を整え、
本番での体の動きをスムーズにする効果があります。



あなたもぜひ、
仕事開始前に1日の予定をイメージして、
どこにリスクが潜んでいるか、

もしトラブルが起きた時に
どこで軌道修正できるか、
そのようなことを考えてみてくださいね。



心の準備が整うと、無駄な焦りが減り、
時間にゆとりをもたらしてくれますよ。



三つ目のスキルアップについては、
もはや言わずもがなですよね。


仕事の効率を上げて、
時間的ゆとりを生み出すためには、
作業効率が上がるようなスキルを身につけることです。


看護技術だけでなく、
電子デバイスの使い方、
コミュニケーション能力など、
仕事上使うものすべてのスキルアップを、
少しずつでいいので進めていきましょうね。




③人間関係のゆとりを作る

看護師のあなたは、
本当に多様な人々と接していることでしょう。

職場には職人気質の専門家たちが大勢いて、
中には気難しい人だっているでしょう。


また、患者もいろんな人がいますよね。


思いやりあふれる人ばかりではないでしょう。


さらに、普段関わる業者や関連施設など、
あげればキリがないくらいですよね。



そんな多様な人間関係の中、
悩みがない人などいないでしょうが、
あなたはいかがですか?


人間関係で悩んでいませんか?

そんな人間関係の悩みを
一刀両断にする考え方を紹介しますね。



この考え方をマスターすれば、
人間関係の距離にゆとりが生まれ、
あなたのメンタルは、
何があっても健全に保てるようになるでしょう。



「すべての悩みは人間関係の悩みである」


そう断言する心理学者がいます。

彼の名はアルフレッド・アドラー。



フロイト、ユングと並んで
心理学の三大巨頭と呼ばれる人です。



アドラーは、
健全な人間関係を築くためには
「適切な距離」を取り、
その上で「貢献する」ことが
重要だと説いています。




看護師であるあなたは、
「貢献する」ことは当たり前のように
行っているでしょうが、

「適切な距離」は
ちゃんと取っているでしょうか?




人間関係において、
適切な距離を取ることをアドラー心理学では
『課題の分離』と呼びます。



簡単に言うと、
「わたしがすべきこと」と
「あなたがすべきこと」を分けて、
お互いに過干渉にならないよう
配慮しましょうということです。



世界的に見て、
人間関係の距離が近い日本人にとっては、
ちょっと冷たい印象に感じるかもしれませんが、

そんな日本でも
「親しき仲にも礼儀あり」
と昔から言われています。



やはり人間関係においては
『距離感』が大切なのです。



例えば、本を読むとき、
目の前に本を近づけすぎると
文字が読めませんよね?



また逆に、
遠く離し過ぎても読めません。


適切な距離を保つからこそ、
快適に読めるんですよね。


人間関係でも同じです。



近づきすぎると見るべきものが見えなくなり、
遠く離れ過ぎると手が届かなくなってしまいます。



適切な距離を心がけましょう。



そのための秘訣を一つ紹介します。


それは、
『相手の言動をいちいち真に受けなくて良い』
ということです。




『①心のゆとりを作る』で紹介した通り、
人はそれぞれのメガネをかけて
状況や出来事を見ています。



そして、そのメガネは、
それまでに経験したことによって
レンズに色付けがなされているので、
個人ごとにまったく異なります。



専門家に言わせると、
指紋と同じようなもので、
まったく同じ人などいないそうです。



つまり、誰かがあなたを
傷つけるような発言をしたとしても、
それはその人のメガネをかけて見た結果であり、

客観的事実でもないし、
真実でもないということです。



あなたが真に受ける必要はありません。


「そうか。この人は
 そういうふうに見ているんだな」

というくらいに、
軽く受け取っておきましょう。




看護師という仕事は、
人々の大切な命と健康を守る存在です。


そんな看護師の皆さまは、
私たちにとって、
とてもかけがえのない存在なのです。



誰かの心ない一言なんかで、
あなた自身を苦しめることなどしないでくださいね。



さて、ここまで

『看護師のためのメンタルマネジメント
 〜責任と重圧に負けないしなやかな心のつくり方〜』

として、
心の器を広くしてメンタルを健全に保つ
3つの方法を紹介してきました。


いかがだったでしょうか?


何か一つでも役立つことがあったら幸いです。



あなたが心健やかに、
社会的にかけがえのない、
その職務をまっとうされることを、
心から願っています。

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山本武史(コーチ)

ポテンシャルビジョン

これまで10,000人のビジネスパーソンに研修、コーチングを提供してきた中で気づいた、成果を最大化する時間管理法と、しなやかなメンタルを作る秘訣をわかりやすくお伝えします。

山本武史プロはテレビせとうちが厳正なる審査をした登録専門家です

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