言葉のはじまり2
「その子の内側の体験の世界」第29回目を解説します。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
「その子を知る」28
○双方向性と一体性~生きるための刺激
乳幼児を育てている養育者は、思わずわが子を抱きしめたり、頬ずりしたり、キスをしたりという欲求に駆られます。
育児が子どもの安全を守り、栄養を与え、生存に必要な技能を受ける営みとすれば、これらのかかわりは不可思議ではあります。
これは養育者の一方的な思い入れではなく、むずがっていた乳児がそれで機嫌を直したり、イキイキとした笑顔を見せたりします。また、運動能力の発達につれて、自分からそれを求めてくるなど、乳幼児にも愛撫的なかかわりへの強い希求がみてとれます。
親が駆られるこの愛撫へのうながしは、乳幼児からの希求によって引き出される面を持ち、よって親子間の双方向的や一体的な交流があります。
フロイトは両者が同じ力のはたらきだと気づきました。
いずれも親密な愛撫的なかかわりとそれがもたらす深い安心感や充足感への強い希求で、そこにこそ人間の「性愛」の中核があると考えたのです。
つまり、フロイトは乳幼児を共同的な社会的な存在へと歩ませる力として、「性愛」を考えました。
私(吉田)は、乳幼児が養育者との愛撫的なかかわりをもって、お互いの双方向性と一体性が、乳幼児が生きるために必要な刺激を要求している術と解しています。
次回に続きます。