運動で脳は変わる3
令和6年元日の能登半島地震におきまして、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
明けましておめでとうございます。
本年も、頭で覚える学習ではない、「身体で覚える学習」を通して子どもたちの心身を救う活動を推進します。
そして、相手に勝つスポーツという運動ではない、「心地よい、楽しい運動」を通して、個々人の運動の技術アップは子どもたちの心身を救う活動を推進します。
<安静時でも脳は活動>
人間の身体は安静にしているときも、常に自分の身体を維持するためにエネルギーを消費しています。これを基礎代謝と言います。最近の研究により、同様のことが脳でも起きていることがわかってきました。
これまで、脳の活動領域はいくつもの部分に分けられ、それぞれが特定の機能を担っていると考えられてきました。そして、実際に各領域の担っている役割がいくつか明らかにされました。
近年、それぞれの領域は一つだけでなく複数の機能を担当していることがわかりました。さらに一つの機能を実現するために、いくつもの領域によるネットワークが作られていることもわかってきました。つまり、脳の機能と領域は1対1で対応しているのではなく、多対多で対応していることになります。
このような研究から、複雑な認知機能を実現するには、脳内の大規模なネットワークがいくつもの関わっているのでないかと考えられるようになりました。そして、そうしたネットワークの中に、脳が特定の活動をしてない、いわゆるボーっとしている時も、脳内で活動しているネットワークが存在していることが明らかにされました。
そのようなネットワークは「安静時ネットワーク」と呼ばれています。
<記憶の整理と深いかかわり>
安静時ネットワークはいくつか知られていますが、代表的なものとして、ワーキングメモリネットワーク(WMN)やデフォルトモードネットワーク(DMN)などがあります。WMNは、背外側前頭前野や後頭部頂葉などの領域、DMNは内側頭前野、後部帯状回などの領域が中心です。
WMNは、黒板のように一時的に必要な情報を書き写しておく場所で、安静時だけでなく、課題に取り組む時にも積極的に利用されます。それに対して、DMNは課題を行っている時にはあまり活用されませんが、安静時に活動が高くなるのです。安静時でのDMNの活動量は、意図的な活動している時の20倍にも達すると推定されます。
人間は、睡眠状態の時に、記憶を整理して、脳に定着させようとしているといわれていますが、この時活動している領域は、DMNと一致しています。このようなことから、DMNは過去の記憶の呼び出しや将来の展望を描いたりするのに重要な働きをしているとみられています。
また、最近の研究から、自閉症やうつ病、統合失調症の発症とも関わりがあると考えられてきました。
次回に続きます。