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小脳

吉田洋一

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テーマ:運動と脳

 前回のコラム「大脳基底核」に続き、「心地よい、楽しい運動」は、脳の可塑性を促進させます。
 今回は、運動と学習を司る「小脳」を紹介します。

 <小脳の特徴>
 小脳は、脳の後方の下側にあります。その名のとおり、大脳より小さく、重さは大脳の10%くらいです。小脳の表面は大脳と同じように「しわ」で覆われていて、この「しわ」を溝(
こう)といいます。小脳の溝は大脳よりも幅が狭く、平均2~3mmで規則的に入っています。そのため表面積で比べると、小脳は大脳の75%程度です。また、大脳の神経細胞は数百億個ですが、実は大脳よりはるかに神経細胞が多いのです。
 小脳の構造を見ると、中央に細長い虫部があり、左右がほぼ対称です。裂(深くて長い溝)小葉という単位に分けられ、10個の小葉からなります。

 <運動と学習の機能を持つ>
 小脳には2つの大きな働きがあります。
 一つは、筋力のバランスを調整して身体の平衡と姿勢を保つことです。事故や病気などで小脳を損傷すると、身体のバランスを失い、真っ直ぐに立っていられなくなったり、運動がスムーズに行えなくなったりすることがあります。
 もう一つは、身体が大脳の指示どおりに動いているかを確認することです。確認した結果は大脳に伝えられ、常に最適な状態が保たれているのです。
 小脳の働きの身近な例としては、練習によるスポーツの上達が挙げられます。経験したことのないスポーツをするとき、最初は常に意識を集中させ、身体を動かさなければなりません。が、練習を重ねるうちに身体が慣れ、動きも少しずつ無駄がなくなります。そして、複雑な動きも意識せずにできるようになります。つまり、「身体で覚える」学習をしたのです。

 近年、小脳は身体で覚える学習だけではなく、思考における学習にも関わることがわかってきました。スポーツにおける繰り返しの練習と同様に、頭の中で思考を繰り返すことにより、専門的な知識やものの考え方が身につくことも、小脳の働きによるものだといわれています。
 小脳には、学習機能を受け持つ回路のような部分があり、例えば大脳皮質がつくりだすイメージと、実際に取得した情報の内容を比べ、その誤差を修正するような活動を行っています。こうした活動により、情報処理の効率化か図られていると考えられています。

 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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