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運動で脳は変わる4(私の研究)

吉田洋一

吉田洋一

テーマ:運動と脳

 「子どもの脳の可塑性」から、私の研究に基づく神経発達症(発達障害)児の支援について説明します。また、特異な才能のある子どもたちについても、同様の支援が可能ではなかと思っています。
 脳細胞の数や脳の大きさ、脳細胞のつながりの数があるとき、つまり「脳の刈り込み」前に支援が必要なのです。なぜでしょうか。それは、ケアが必要な「脳のネットワーク」を再構築できるからなのです。そのためには、「楽しく、心地よい運動」が必要不可欠なのです。この運動は、いかに子どもたちの心身の発達のケアになっているのかご理解いただけると思います。
 詳細は前のコラム「脳を育てる」から最近のコラムテーマ「運動による心身の発達」をご覧ください。その中から重要でたいせつなコラムを再度紹介します。
 もう一つ、脳の理解でとても大事なことがあります。学校学習の知識脳と運動脳は同じだと思っている方が、大半だと思いますが、全く違う部位にそれぞれあります。なので、いくら知識脳への運動を指導しても子どもたちは運動が上手くなりません。これにつきましては、後日説明します。

「子どもの頃に楽器を習っていればよかった。今からじゃもう遅すぎる」多くの人が一度や二度こんな思いを抱いたことがあるのではないでしょうか。事実、子どもの脳は驚くほど柔軟で、言葉でも運動技能でも、あらゆるものをたちどころに身につけます。なぜ、子どもの脳は短期間でこれほどまでに多くのことを、しかも一見大した努力もせずに習得できるのでしょうか。
 子どもは、この世界で生きる術をすばやく見につける必要があります。そのとき脳内で見られるのは、脳細胞が互いに結合するだけでなく、それを切り離す「刈り込み」という驚異的な能力です。そして、のちの人生では決して戻らないような速さで、それは起きています。
 変化という脳の特性は、脳科学の専門用語で「神経の可塑性」といいます。これは脳の最も重要な特質です。なぜなら、子どもの頃ほどに柔軟ではないにしても、その特質が完全に失われてしまうことはないのです。大人になっても、80歳になっても、今でもそれはそこにあるのです。

 以前のコラム「脳を育てる」をもう一度解説します。
 前回、発達障害とは「何らかの精神発達のおくれをもち、それが生きにくさをもたらしている」と定義され、これが、脳の機能障害によるものとされ、簡単に説明しました。
 人間の行動は脳がもたらします。子どもについても、心身の発達を促進させるためには、脳を育てることになります。脳の神経回路は環境刺激により変化します。子育て、保育、教育、そして私の研究である「心地よい、楽しい運動」が、子どもの脳を育てることになります。これについては、後日説明します。
 脳が育つ条件としての一つ目は、神経伝達物質の分泌量を適量確保することにあります。神経伝達物質は、基本的には、神経細胞(ニューロン)が細胞体の核にある遺伝子の命令によって生産されるものですが、精神的環境や食生活によっても大きく左右されるのです。それゆえ、赤ちゃんの頃から、例えば精神的環境からいえば、スキンシップによりセロトニン量を増やすこと、楽しい雰囲気によりドーパミン量を増やすことなのです。このことはシナプス(細胞体や神経終末の樹状突起が、他の神経細胞(ニューロン)や組織に接する部分のわずかな隙間)にこうした神経伝達物質が伝えられるネットワークを作ります。
 脳が育つ条件の二つ目は、神経細胞(ニューロン)と神経細胞(ニューロン)の接点であるシナプスを増やすことです。神経細胞(ニューロン)は、脳全体で約1,000億個、大脳新皮質だけで140億個あるといわれています。乳幼児から20歳頃までは、この数はあまり変わらず、20歳頃過ぎると一日10万個程度は消滅するということです。
 幼児に比べ大人の方がより複雑な行動ができるのは、神経細胞(ニューロン)の数の問題ではなく、神経細胞(ニューロン)間のシナプスが増えていくことにあります。このシナプスが増えていくことを、脳のネットワークを作るといいます。
 生後、神経細胞(ニューロン)の数は変わりませんが、生後2~8カ月の間に、シナプスの数が急増します。例えば、新生児の大脳皮質のシナプス数は、成人の約2倍です。乳幼児の神経回路は、あらゆる感覚情報と記憶に関して可塑性が非常に高く、出生後の様々な経験から脳が目覚ましい発達を遂げます。
 また、乳幼児期に急増したシナプスは、10歳くらいまでに減少し、以後は一定の数になります。この間に、よく使用されて強化されたシナプスだけが残され、それ以外は余剰のシナプスとして「刈り込み」が行われます。どのシナプスが残るかは、それぞれ個人の経験によるのです。
 ここで注意してほしいのは、2つの神経細胞(ニューロン)が出会っても、必ずシナプスを作るわけではないということです。神経細胞(ニューロン)の軸索や樹状突起が伸びたときに、ターゲットになる神経細胞(ニューロン)が出す神経栄養因子ニューロトロフィン(タンパク質の一種)がなければ、誘導してもらえず、シナプスは形成されません。形成されない場合には、軸索や樹状突起を伸ばした方の神経細胞(ニューロン)は消滅します。ニューロトフィンには、神経成長因子(NGF)や線維芽細胞増殖因子(FGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)などがあります。この神経栄養因子は、後日説明する「心地よい、楽しい運動」で生成されることがわかりました。
 以上、発達障害のケアには、脳を育てることが必要であることを説明しました。そして、早期にケアすること、つまり早期に「脳の神経回路を変化させる」ことが、ケアにつながるということをご理解ください。

 以前のコラム「脳の可塑性」をもう一度解説します。
 前回、発達障害のケアには、脳を育てることが必要であることを説明しました。早期に「脳の神経回路を変化させる」ことが、ケアにつながるといわれてもどうすればいいかわからないのが当たり前です。脳についてご理解いただくためにもう少し詳しく説明いたします。
 説明の前にこの二つの用語を覚えてください。「脳は変化し、その変化は保持される」「使われないシナプスは衰退し、使われるシナプスは強化される」です。
 これを脳の可塑性といいます。脳は経験によって変化し、その変化が長く残る特徴をもっています。このような特徴を「脳の可塑性」と呼んでいます。可塑性とは、一般に個体に外力を加えて変形させ、力を取り去っても元に戻らない性質、変化し、その結果が残るような性質のことをいいます。
 コンピュータと私たちの脳を比べてみると、脳の「可塑性」がよくわかります。現在、私たちが使用しているコンピュータはいろいろと複雑な機能をこなしますが、機械・装置としての物理的な構成要素であるハードウェアは使用しても変化することはありません。コンピュータからいろいろな機能をこなすことができるのは、ソフトウェアの働きによります。例えば、インターネットにアクセスするときに使用するブラウザーの働きは、使うと学習しユーザーに合わせて「賢く」なりますが、この機能もソフトウェアの中に書き込まれた機能です。一方、脳は神経組織の配線が変化して「賢く」なります。言い換えれば、ハードウェアが変化して賢くなる特徴をもっています。これが脳の可塑性です。(「脳の教科書」三上章允著 講談社 p103,104)
 では、脳では、どこがどのように変化して可塑性を成しているのでしょうか。
 脳では、脳の変化はシナプスで起きています。脳では、よく使われたシナプスの伝達効率が高まります。その結果、活動しやすい神経細胞のネットワークが強化されます。このように脳の変化が保持されたものが、記憶や学習です。
 シナプスでの伝達効率の変化は、シナプス棘の形成やシナプス発芽として現れます。シナプス棘は英語でとげという意味のスパインといいます。神経細胞(ニューロン)の樹状突起の表面に棘状に多数存在し、この棘にシナプスが付着します。棘あることによって樹状突起の表面積が増加し、より多くのシナプスが接続できます。また、棘の形が変化することによってシナプスで発生した電位の伝達効率が変化し、シナプスの伝達効率の変化に寄与すると考えられています。これを「シナプスの可塑性」といいます。(「脳の教科書」三上章允著 講談社 p105)
 発達障害とは「何らかの精神発達のおくれをもち、それが生きにくさをもたらしている」と説明しました。また脳の機能障害によるものと説明しました。
 前回説明しました発達障害の対応です。復習しましょう。コミュニケーション症群では、聞き返しはしない、つまり、苦手意識、恥ずかしさをつくらないことです。また、加齢にしたがって改善する可能性がありますので焦らないことです。自閉スペクトラム症では、変化を嫌い、恐ろしがるしぐさがあので、視覚的印象を活かしたものにします。また、強制しない一貫性のあることがたいせつで、わが子の安全性を保持します。注意欠如・多動症(ADHD)では、行動を統制するためのチェックリストなどを利用します。自己評価を下げないためにも「良い」評価とできることを保証してください。何といっても保護者のサポートが必要です。限局性学習症(学習障害、LD)では、わかりやすい教え方や身体のバランスの強化や感情の表現と理解を促します。発達性協調運動症では、競争的競技(勝ち負けだけの競技)に無理に参加させないことや適切な手助けをすることや時間がかかりますが徐々に身のこなしが滑らかになります。
 保護者の方は、このような発達障害の対応はやっているが効果がないとか悩んでいらっしゃる方が大勢だと推察いたします。
 まず、はじめに行う対応は、わが子の「脳の可塑性」です。とてもたいせつなことです。

 以前のコラム「活発に、身体を動かす」をもう一度解説します。
 前回、発達障害のケアには、「脳の可塑性」が必要であることを説明しました。そして、それには脳を育てることが必要であることを説明しました。そして、早期に「脳の神経回路を変化させる」ことが、ケアにつながると説明しました。
 ここで保護者の皆さまから疑問が飛んできます。わが子は脳が育っていないのかという疑問です。答えは、そうではありません。脳は育っていますが、その神経回路を変化させ、シナプスを増やす方策がケアになるということを前回説明しました。
 このケアを行うための方策がタイトルにもありますように、「活発に、身体を動かすこと」です。ケアの重要なポイントは、タイトルですから簡単に短縮して「活発に」と表現しました。「活発に」とは、自ら、自主的に、自分の意思で、自己決定でなど他の人が指示、命令、指導など関与しないという意味です。
 子どもが活発に動く様子は、保護者の方はよくご存じです。そこには「笑顔」や「喜び」に溢れた「楽しい」「心地よい」子どもの身体運動があります。
 では、なぜ活発な身体運動がケアになるのでしょうか。それは、脳科学の研究により実証されたのです。アメリカの医学博士ジョンJ.レイティ氏は、「楽しく汗を流せる運動なら何でも良い。とにかく何か身体を動かすことに夢中になってほしい。」「運動は脳の機能を最善にする唯一にして最強の手段です。」「何百という研究論文に基づいており、その論文の大半は最近発表されたものだ。」「運動が脳の働きをどれほど向上させるかを多くの人が知り、それをモチベーションとして積極的に運動を生活に取り入れるようになることだ。もっとも、それを義務だと思ってほしくない。運動を無理強いするつもりはない。そんなことをしても無駄だ。ラットの実験により、強制された運動では自発的な運動ほどの効果がでないことがわかっている。運動したいと心から思えるようになることだ。」(「脳を鍛えるには運動しかない」ジョンJ.レイティ著 NHK出版 p12,308)
 また、スポーツ生理学者のクレイグ・ブルーダー氏は、学校の体育の授業において「生徒が上手くこなせて満足できるのも見つけ、無理なく楽しめる運動をさせることです。」「例えば、バスケットボールをしなさいというように、選択の余地を与えず、まるで強制的に押し付けていては、生徒はそれを続けるはずはありません。」「生徒たちは身体の働きを学ぶとともに、健康な生活習慣を身につけ、その楽しさを学んでいる。」「体育教師たちは幅広い選択肢を用意して、どの生徒もそれぞれ楽しめるものを見つけられるようにしている。」「子どもたちがテレビの前に座ることでなく、身体を動かすことに夢中になるように仕向けている。」(「脳を鍛えるには運動しかない」ジョンJ.レイティ著 NHK出版 p36)
 そして、カナダのマギル大学の心理学者ドナルド・ヘップ氏の著書「行動の機構―神経心理学理論」を発表し、ラットを使った研究で「使用がもたらす可塑性」という、学習によって刺激を受けたラットの脳のシナプスは、自らを配列し直すと説いた。ヘップの「使用がもたらす可塑性」を実証するため、バークレーの心理学者のグループは、脳にとって運動は新しい経験になるということ、つまり、感覚刺激と社会的刺激の多い環境で暮らすと、脳の構造と機能が変わることを発見した。つまり、ラットの好きな環境(環境富化)に置かれたラットたちは、学習作業をうまくこなしただけでなく、脳が重くなっていました。など、科学的な裏付けがたくさん発表されています。(「脳を鍛えるには運動しかない」ジョンJ.レイティ著 NHK出版 p58)
 保護者の皆さまは、わが子にとって「楽しい、心地よい身体運動」は何でしょうか。これまで、なかったでしょうか。もう一度、わが子が「活発に、身体を動かす」ことを考えてみましょう。そして、実践しましょう。

 以前のコラム「発達のケアは早期に」をもう一度解説します。
 前回、「身体を活発に動かすほどに脳を変えられる」つまり、神経回路に変化を与えられます。神経回路に変化を与えるとは、新しい脳のネットワークが形成されるということです。これをシナプスの可塑性といいます。新しい脳のネットワークとは、保護者の皆さまがお考えになる「定型発達」にということです。神経細胞の刈り込み前、つまり子ども期に早期にケアすることが重要になります。と解説しました。
 子どもの精神発達を推し進める力には、脳の生物的な基盤と栄養や感覚的な刺激のほかに、人間として社会的に文化的に創り出してきた人間同士の共同世界で生きていく力が必要です。つまり、すでに精神発達を遂げている、この世界を社会的に文化的に共有している人々(養育を中心とする大人たち)からのはたらきかけが必要であり、しかも、大人からのはたらきかけだけではなく、子どもの側にもそれに応えたり、子どもの側からも大人へ能動的にかかわろうとする力が必要となるのです。
 精神発達とは、一個の個体として生まれた子どもが、感覚を共有し、情動を共有し、関心を共有し、ふるまいを共有し、認識を共有するというように、周りの人びととの分かち合いを進めて、社会的・共同的な存在へと育っていく歩みです。つまり、発達の歩みと共に私たちの体験のしかたは基本的なところはみんなと同じになっていきます。これが「定型発達」というものです。
 この精神発達を「活発に、身体を動かすこと」で、また、人間同士の共同体験を持つことにより、脳の可塑性を促し、その子の精神発達を推し進める力を促進させたいのです。

 以前のコラム「脳からみた、子どもの心身の発達」をもう一度解説します。
 前回は、「楽しい、心地よい運動」は、「優越性追求の方向付け」であり、「生きる力」なのです。を紹介しました。
 さて、また脳についてお話いたします。なぜ、私が脳について訪問の皆さまに紹介しているかですが、「脳の発達と子どもの心身の発達が連動している」からに他なりません。子どもたちにテニスを教えて40数年経ちました。近年、脳科学の進歩で解らなかったことが解るようになりました。また、やはり、そうだったんだということもたくさん証明されてきました。
 訪問の皆さまへ一番にお伝えしたいのは、子どもを見た目つまり表面の表情や態度、発する言葉以外の内面の心つまり脳についてもご理解いただきたいと思い、コラムで述べさせていただいております。
 私は、脳科学者や脳外科医ではありませんので、実際に脳のこの部位をこうすればこうなる施術的なことはお話できません。が、脳科学の研究により「楽しい、心地よい運動」が脳に効果的な刺激を与えていることや子どもの心身の発達に深く関わっていることが実証されました。このことが発表されたときは、やはり、そうだったんだ。間違いなかったんだ。と、今までの自分の教え方で良かったんだと安堵したのでした。この経験から、子どもの心身の発達でお悩みの皆様方へお伝えしようとの思いでコラムを書いております。
 子どもの心身の発達でお悩みの方や子どものからだのおかしさにお気づきの方や子どもが神経発達症(発達障害)と診断された保護者の方に、このコラムで述べていることをもう一度簡単にご説明いたします。
 事例をお話しします。過去に、継父(離別)から虐待を受けたそしてきょうだいへの虐待を見た子がいます。精神病院へも入院しました。アスペルガー症候群の症状があります。その子が数年前から私のスクールに通っています。その子は、とてもテニスが好きなようです。「この子には大好きなものがある」という発見でした。それも「全身でボールを打っている」ときでした。そして、この時は、テニスで「みんなと同じことを一緒にできる」のでした。
 つまり、その子には、「生きる力」の優越性の追求があることに気付きました。私のテニス指導は全身の身体運動を伴ったもので、子どもたちには「楽しい、心地よい運動」として捉えられています。その子は、学校での大役や行事などで重荷の負荷から、触覚過敏や聴覚過敏を起こすことがありますが、その子の日々の生活は、大好きなテニスを通して、安定して過ごしています。その子の保護者も「どこに症状があるのか、わからないくらいです。」と明るい表情で語ります。
 また、その子は精神病院へも入院しましたが、精神の諸症状はみられません。当時の嫌なことは脳に記憶されているといいますが、その記憶の度合いを細くすることができます。これが、脳の仕組みです。つまり、テニスという「楽しい、心地よい運動」という脳の仕組みを増幅させると、脳のシナプスの可塑性により、新しい脳のネットワークをつくり出すことができるのです。使わない嫌な記憶のネットワークを細くすることができるのです。
 その子は、「楽しい、心地よい運動」により、脳に「新しいシナプスのネットワーク」を構築し続けていると考えています。また、「Jr-Open」についても、同様の思いで活動しています。

 以前のコラム「新しい脳のネットワークをつくる」をもう一度解説します。
 なぜ、ケアがシナプスを増やすことなのでしょうか?それは、脳の神経回路に変化を与えられるからです。つまり、神経回路に変化を与えるとは、新しい脳のネットワークを形成するということです。
 神経発達症(発達障害)は、脳の機能障害です。つまり、脳の情報の伝達がうまくいかなくなり、興奮と抑制のアンバランスが派生しているのです。主な原因としては、胎児期に神経系回路の発達が正常に働かなかったこと、つまり脳の発達期にシナプスの可塑性がうまく働かなかったことが考えられます。
 この現状の機能障害を起こしている神経細胞(ニューロン)のシナプス以外のシナプスを増やすのです。これがケアになります。
 このケアは一度ではできません。失敗を繰り返しながら学習します。そして学習から修正しながらエラーを減らしていきます。失敗する過程がとても重要で、そうした経験によって脳のはたらきを変えることができるのです。これがシナプスの可塑性です。
 訪問の保護者の皆さまへ、もう一度「脳を育てる」からこの「新しい脳のネットワークをつくる」をご確認ください。かけがいのないわが子のケアは皆様に委ねられます。結果ではなく経過をたいせつにしましょう。

 以前のコラム「子どもの心身の発達」をもう一度解説します。
 このケアを行っているのが、当法人の活動目的になります。トップページにも掲載していますが、子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行うことにあります。
 この活動には、競技スポーツクラブやスポーツ少年団などと全く違う目的をもっているものがあります。それは自分を知ること。第三者を知ること。グループを知ること。です。ただただスポーツをして、勝つための練習をしているものではありません。
 なぜ、独自の活動目的があるかですが、そこには発達障害の子どもたちを含めどんな子どもでもこの活動を続ければ心身の発達につながるのです。テニス打法の習熟は当然ながら、身体運動からの脳の可塑性を促進させます。
 保護者の方でわが子に、楽しく運動をさせたい、テニスを上手くさせたいやわが子で運動が不得手な子、ちょっと気になる子などでも心身の発達ができます。

 以前のコラム「脳の発達には「楽しい、心地よい身体運動」を行う環境が必要」をもう一度解説します。 
 前回、神経発達症(発達障害)のケアには「活発に、身体を動かすこと」が必要であることを説明しました。「活発に」とは、自ら、自主的に、自分の意思で、自己決定でなど他の人が指示、命令、指導など関与しない、「心地よい身体の運動」が必要ですと解説しました。
 保護者の皆さまで、わが子の神経発達症(発達障害)の原因や要因を追及してもケアにはなりません。わが子のケアを考えてみましょう。
 私は、「楽しい、心地よい身体運動」という環境の中に、子どもが自分なりに「わかること」と「できること」を生み出す心の働きそのものの発達を明らかにしようとしてきました。(「子どもの発達の意欲値及び自分の伸びしろ値理論」)「わかる」と「できる」という働きは、子ども自らの気づき、発見です。
 私は、子どもと対象との相互作用のなかで何らかの新しいものの産出があり、そうした創造のプロセスが子どもの心身の発達の本質であると考えています。そして、子どもが自らわかったことや自らできることに基づいて反応することが発達です。
 では、「楽しい、心地よい身体運動」という環境とは何でしょうか。それは、前頭に述べました、自ら、自主的に、自分の意思で、自己決定でなど他の人が指示、命令、指導など関与しない運動が行われる環境です。
 私の取り組みについて説明します。取材記事にも紹介されていますが、テニス競技のJr-Openを開催しています。これが一つ目の環境です。1回きりではなく、シーズンを通して開催しています。これが「経験を増やす」ことつまり、脳の可塑性です。たくさん経験することで脳の神経細胞のネットワークが多様に形成されます。次に競技スポーツを「楽しい、心地よい運動」に変換することです。つまり、「勝ち負けに拘らない」こと。“「競技スポーツだから勝敗に拘るのが当たり前だ」「子どもだけでは負けるから」「子どもの負けるところを見たくない」”など勝利至上主義的な昨今でいえば、ブラック部活的な大人のエゴイズムです。勝つためには手段を択(えら)ばない方が身近にもおります。子どもを自分の都合の手段に利用しているようです。
 Jr-Openは「勝ち負けに拘らない」つまり、結果を重視しているのではなく、自分でどうしたのかという経過を大切にします。これを有言実行させます。ベンチコーチはありません。また、フェンス越しの身振り手振りも禁止です。声援ではなく拍手により応援することなど大人の介入なしに、「自分の力でどのくらいできるか」を実践できることになります。これが二つ目の環境です。
 次に、第三者の力を借りずに「自分の力でどのくらいできるか」を実践しますと、子どもたちが自己決定と自己責任でプレーしながら自分の価値を認め、「自分っていいな」と自己肯定感をもってプレーをするようになります。子ども自ら「わかる」「できる」を感じて、物事に率先して取り組む姿勢こそが大切なのです。これが三つ目の環境です。
 ここで間違った解釈をしている学校の先生や指導者、保護者など大人の方がおります。「自分の力でどのくらいできるか」を結果だけで判断していることつまり、点数がいいとか勝ったとかで判断している大人です。これは間違いです。
 この第二環境の「勝ち負けに拘らない」ことと第三の環境「自分の力でどのくらいできるか」は、脳のシナプスの可塑性を促進させます。
 私たち大人が介入すべきことは、子どもを信じて「楽しい、心地よい身体運動」を探し出し、実践することなのです。
 今後Jr-Openのように、競技スポーツを「楽しい、心地よい運動」に変換して、活動を行う方がたくさん増えることを期待しています。

 次回に続きます。

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専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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