自ら行う自主的な能動的「身体運動」とは
「曲を演奏するためのプログラム」によって、各領域の細胞が活動するとき、これらの領域はプログラムをうまく処理するためには、正しく連携していなくてはなりません。例えば脳を、全ての部品がきちんとつながったコンピューターと仮定して、部品同士の接続が悪いと、内蔵された部品の一つひとつが正常に機能していてもコンピューターは作動しません。
つまり、機能的に優れた脳とは、細胞がたくさんある脳でも、細胞同士がたくさんつながっている脳でもなく、各領域例えば前頭葉や頭頂葉がしっかりと連携している脳なのです。それがプログラムをスムーズに実行処理するための前提となります。そして、ここが肝心なのですが、「身体を活発に動かせば、その連携を強化できる」のです。運動によって、脳に好ましい効果が数多くもたらされるのも、様々な領域が強く連携していることが基本条件なのです。
脳の領域の連携が強いあるいは弱いなどということは、聴き慣れないことだと思います。研究によれば、人によって認知能力に差があるのは、これが理由だということです。この研究で興味深い事実が発見されました。
数百人の被験者の脳を最先端の技術によって検査した結果、プラスの特質例えば「記憶力が優れている」「集中力がある」「飲酒や喫煙に対する自制心が強い」などの特質を備えた被験者は、脳の各領域がしっかりと連携していました。一方、「かっとなりやすい」「過剰な喫煙」「アルコールや薬物への依存」など、マイナスの特質をもつ人々には正反対のパターンがみられました。脳内の連携がよくなかったのです。
プラスの特質の多くが脳に同じパターンの痕跡を残し、マイナスの特質はそれと逆のパターンの痕跡を残しました。要するに、私たちは生活習慣によって、プラスやマイナスの軸上のどちらかに脳が属するかが決まるということです。この研究チームは、「脳の連携パターンを見れば、その人がどのような生活を送っているかほぼわかる」と述べています。
「記憶力や集中力、飲酒に対する自制心の高さ」のほかにも、脳のプラス・マイナス軸のプラス側に属する特質はあるのでしょうか。もちろんそれはあります。それは、運動を自分自身で考え、行うことです。
生まれもった性質で脳の連携パターンや軸のどちら側に属するかが決まるわけではありません。それを決めるのはあくまでも生活習慣です。私たちは自らの選択によって、これまで考えられてきたよりもはるかに基本的なレベルで脳の機能を変えることができます。脳が一方的に、何を考え、何を行うかを決めるのではありません。私たちが自ら考え、行うことが脳を変え、その機能を変えるということなのです。
また、脳を操作しているのは私たちであって、脳が私たちを操作しているのではありません。ですから、脳の各領域の連携を強化するには、脳の仕組みを理解したうえで、定期的に運動することが最も重要なのです。そして、これによって身体が健康になることも、軸のプラス側に属することにつながるのです。
次回に続きます。