その子の内側の体験の世界3
3か月頃には、首がすわります。首がすわると、赤ちゃんは観察したいものに自由に視線を向けて注視できるようになります。また、周りの世界を知るための活動つまり探索活動が自在になります。
啼泣とそれに対するマザリングによって芽生えた能動性と安心感が、未知の外界への積極的な探索を支えています。
乳幼児健診では、「首のすわり」が発達のチェックポイントのひとつにされています。周りに能動的に関心を向けて観察しようとする探索活動の遅れは、首のすわりを遅らせ、また、首のすわりの遅れは、能動的な探索活動を遅らせるため、遅れをチェックする目印になります。
注意をひくものを見つめ、動くものを目で追い、音のする方に顔を向けるなど、乳児期の探索は、未知な外界の全てを知ろうとするかのように周りのあらゆる対象に、万遍なく向けられるところから始まります。周りの刺激を全てスキャンしています。
この時期から、ケアをしている親を始めとした「ひと」が、とりわけ積極的な探索の対象となっていきます。ひとの顔や姿を注視し、ひとの動きを目で追い、観察を重ねます。同時に、自分の手をまじまじと見ながら、身体全体も熱心な探索の対象になっていきます。
最初は、全ての対象に万遍なく向けられていた探索活動が、次第に「もの(物)」以上に「ひと(人間)」へと向かい始めます。生後4から5カ月以内に、「もの」への関心と「ひと」への関心とが分かれていきます。
ものを対象にした探索は、一方的な観察なのに対して、ひとを対象とした探索は、観察対象の反応を引き出します。ほとんどの事物は注視してもそこにあるままですが、ひとは赤ちゃんが自分を注視していると気づけば、見つめ返したり、笑顔を見せたり、声をかけたり、近寄ったり、抱き上げたりという接近行動に引き寄せられます。ひとに対する探索活動は、観察対象の接近行動を引き寄せ起こすのです。
この相違によって、「もの」と「ひと」とが分けられていき、その中でもとりわけ、いつもそばにあらわれて接近行動を示す「ひと(親)」は、他の対象とは明らかに違ったもの、特別なものとして認知されるようになります。
一般に生後数か月になれば、はっきりとそのひと(親)を選んで笑顔を見せるようになります。
次回に続きます。