グリア細胞
前回、グリア細胞について述べました。グリア細胞はニューロンとは異なり、電気的な活動がないとみられていましたが、最近の研究では、健康な脳機能の維持や脳の情報処理に重要な働きをしていることが明らかになってきました。
その中で注目するのが、アストロサイトです。アストロサイトについて、数回コラムに掲載していきたいと思います。
アストロサイトは、脳の中の老廃物を除去したり、脳内環境を以一定に保ったりする役割が主ですが、最新の研究では、脳の情報処理にも積極的に関与している可能性があることがわかってきました。
アストロサイトとシナプスのつながりから説明します。
学習や記憶には、神経細胞(ニューロン)のつなぎ目のシナプスの伝達率が重要な役割を果たしています。シナプスの伝達効率は一定ではなく、やりとりされる神経伝達物質の放出量が増えたり、受け取れる量が変わったり、物理的にシナプス自体が大きくなったり、と柔軟に変化することで記憶や学習の効率を高めています。そのシナプスの柔軟性に影響を与えているのが、アストロサイトが放出する独自の伝達物質「グリア伝達物質」です。
アストロサイトが神経細胞(ニューロン)からの信号を受け取るだけでなく、自らも伝達物質を放出し、脳の情報伝達に関与しているのです。
1つのアストロサイトが、数百万ものシナプスとコンタクトしていることや1mmにも及ぶ長い突起をもつものもあることから、アストロサイトは遠く離れた細胞同士を接続し、情報を統合しているのではないかと考えられています。
アストロサイトは、脳にエネルギーを供給しています。脳にとってのエネルギーは、ブロウ糖(グルコース)です。そのほとんどは、神経細胞(ニューロン)の電気的な活動に使われるのですが、神経細胞(ニューロン)は血管と直接コンタクトしていないので、エネルギーを摂ることができません。そこで、血管を取り巻いているアストロサイトが、グルコースを取り込み、神経細胞(ニューロン)が使えるようにしてから与えています。
さらに神経細胞(ニューロン)は、その活動に伴って老廃物を放出しますが、それをアストロサイトが吸収したり、洗い流したりすることで脳内環境を一定に保っています。また、シナプスの情報伝達に用いられている主要な神経伝達物質の一つにアミノ酸の一種のグルタミン酸があります。アストロサイトは、役目を終えたグルタミン酸を速やかに回収してリサイクルしています。
このように、アストロサイトはシナプスの情報伝達に深く関与しています。また、最新の脳の研究から、アストロサイトの機能不全が、神経発達症(発達障害)や精神疾患の症状を発していることがわかりました。
次回に続きます。