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吉田洋一

テニスを通じて子どもの心身発達を支援するプロ

吉田洋一(よしだよういち) / 心身発達の心理士

一般社団法人JSTC

コラム

培ってきた脳の発達2

2023年2月1日

テーマ:運動による心身の発達

コラムカテゴリ:出産・子育て・教育

 前々回、神経発達症(発達障害)のケアには「活発に、身体を動かすこと」が必要であることを説明しました。
 「活発に」とは、自ら、自主的に、自分の意思で、自己決定でなど他の人が指示、命令、指導など関与しない、「心地よい身体の運動」が必要ですと解説しました。
 なぜ「楽しい、心地よい身体運動」が人間には必要なのでしょうか。「楽しい、心地よい身体運動」環境を違う視点から考察してみましょう。第二弾です。
 スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンは、その著書「運動脳」㈱サンマーク出版において、次のように述べています。
 <科学が示す「現時点で最新の結論」>
 脳は、身体を活発に動かすとドーパミンを放出して気分が爽快になるようにプログラミングされている。それは、狩りが生存の可能性を増やすからだ。そのほか危険な猛獣から逃げたり、住みやすそうな場所を探したりすることも、生存の可能性を増やす。
 脳は1万年前からほとんど進化していないため、現代の私たちにも、このメカニズムが残っている。そのため、祖先の生存の可能性を増やしたい行為と同じことをすれば、脳はそれを繰り返させようと快感を与えてくれる。
 私たちがランニングやウォーキングをして家に戻ると、脳は食べ物や新しい住み処を探しているのだと解釈し、報酬として多幸感を与えてくれる。運動が身体によいと書かれた雑誌やこの本を読んだからといって、ドーパミンやセロトニン、エンドルフィンは放出されない。幸せな気分になれるのは、生存の可能性を増やす行為をしたときだけだ。
 座りがちでいると調子が悪くなる「お仕置き」をされることも、それで納得がいく。一日中座ってばかりいれば獲物は捕まえられず、新しい住み処も見つからない。座ってばかりいると生き残れない。多くの現代人が心や身体を病んでしまう理由は「脳」と「私たちの環境」の矛盾、そこにある。
 こうして考えれば、運動によってほかの様々な機能を強化できることも理解できる。
 サバンナで祖先が狩りをするときには、集中力を保つことが必須だった。獲物を仕留めるには精神を集中して忍び寄り、わずかな動きも見逃さず、すばやく行動する必要があった。あなたや私が運動をすると集中力が高まるのは、そのためである。
 運動は記憶力も高める。それはなぜか。祖先にとって、動きまわることは新しい住み処や環境を探すことでもあった。座ってばかりいて動かないと、脳は新しい体験をしていないと解釈して、記憶力を高める必要はないと考える。それに、スマホやパソコンを通して新しい経験をするために、脳は進化していない。座って画面を眺めていても、脳はそれを新しい経験だと考えない(覚える必要なしとみなす)ので、記憶力は高まらないのだ。
(同p348-349)

 前述のとおり、また前回のとおり「楽しい、心地よい身体運動」が脳を発達させることがお分かりになったと思います。
 また、スマホやパソコンなどといったスクリーン漬けが、現代の子どもの心や身体を病ませているのです。
 わが子の神経発達症(発達障害)のケアに限らず、“からだのおかしさ”にお気づきの保護者の皆さまがお多数訪問していただいていることと存じます。
 「身体を活発に動かすほどに脳を変えられる」つまり、神経回路に変化を与えられるのです。神経回路に変化を与えるとは、新しい脳のネットワークが形成されるということです。これをシナプスの可塑性といいます。新しい脳のネットワークとは、保護者の皆さまがお考えになる「定型発達」にということです。神経細胞の刈り込み前、つまり子ども期に早期にケアすることが重要になります。次回に続きます。

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