学習障害とはどういうものなのか
<発達の原動力は一つではない>
精神発達の歩みには、人それぞれなぜ広い個人差が生じるのでしょうか。この問いに、ピアジェやフロイトが「何が精神発達を推し進める原動力か」と考えたところにつながります。つまり、発達の歩みの「速い~遅い」は、この原動力の差と考えることができるからです。ピアジェやフロイトは、発達の一軸だけを取り出しているため、想定した原動力もそれぞれ一つです。けれども、認識と関係とが支え合い絡み合って進んでいく精神発達を全体としてとらえるには、ある一つの力ではなく、いろいろな力の複合、それらの総合力が発達を推し進めていると考えることが的確だと思います。
精神発達をうながすに必要な力つまりポテンシャリティは次のように説明することができます。まず、脳の生物的な基盤です。脳はDNAの設計図に基づいて物質的に成熟していきます。この成熟が発達を支える生物学的な力です。次に、環境からの物質的な条件として、脳の生物学的な成熟は様々な物質的な栄養や感覚的な刺激によって支えられています。これだけでは、人間が社会的に文化的につくり出してきた人間同士の共同世界では生きてはいかれません。つまり、すでに精神発達を遂げている、この世界を社会的・文化的に共有している人々(養育を中心とする大人たち)からのはたらきかけが必要であり、しかも、大人からのはたらきかけだけではなく、子どもの側にもそれに応えたり、子どもの側からも大人へ能動的にかかわろうとする力が必要となるのです。共感とか共感を超えた叡智ある思いやりや共同的感覚を備えたものになります。
※参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著