現代社会と自閉症スペクトラムの増加②
保護者の方にご理解いただきたいのが、認識の発達と関係の発達とは互いに支えあっているということです。精神発達は両者のベクトルとして進んでいきます。もちろん、発達障害をもつ子どもたちも、この精神発達の道筋を歩んでいきます。精神発達という観点からとらえるかぎり、定型発達と発達障害との間で、発達の<構造>に質的な違いはないのです。どちらも同じ道筋を歩んでいきます。ただ、発達障害のほうがその足どりがゆっくりで、社会のマジョリティが達している平均的な発達水準に届かないという相対差があるに過ぎません。しかし、その相対差が発達の<内容>にちがいをもたらし、そのちがいが実社会を生きるうえでしばしば大きな障壁として現れるのです。その困難さを指して、私たちは「障害handicap」と呼んでいます。
また、大きな障壁にぶつかりながら、そこをなんとか生きていこうとする努力が、そうした努力を必要としない一般の人々の目には「特異」とも「異常」とも映る行動のあり方をしばしばもたらします。しかし、精神発達の筋道をたどってみれば、それが決して「異常」なものではなく、しかるべき適応努力だとわかるばすなのです。
つまり、精神発達の定型的な道筋をよく理解することは、とりもなおさず発達障害をよく理解することにつながります。保護者はもちろん学校の先生方がご理解いただく必要があります。
※参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著