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精神の発達をどうとらえるか

吉田洋一

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テーマ:発達障害とは

 <発達の異常ではない>

 今まで情緒障害や発達障害について説明しました。皆さんに少しでも発達障害の子どもさんについて理解していただきたいとの思いで参照文献も踏まえて解説しました。前述では「子どもの行動にぴったりの引き出しがみつからない」、「その引き出しを開けば、その子への理解や支援が詰まっているわけではない」と述べました。
 なぜこうもひとり一人が違うのでしょうか?当たり前ですが、子どもも一人の人間だからです。
 私たちの<こころ>のしくみは、個人(脳)の内側だけで成り立っているものではなく、その外の世界に社会的・共同的な広がりと繋がりをもって初めて成り立っています。従って、そのような仕組みができあがっていく発達のプロセスは、脳の神経組織がDNAのプログラムどおりに成熟を果たしていくだけの過程ではありません。<こころ>がはらむ共同性・社会性を、子どもが外から(社会的に)学習していく過程という面を深く備えています。
 このため、その社会における文化のあり方次第で、精神発達のあり方は多様なヴァリエーションをもつと考えられ、時代や文化の差を越えて普遍的な発達論はありえないと考えられます。
 だから、子どもは本来(正しくは)こう育つという精神発達、いわゆる「正常発達」なるものがこの世に存在するわけではありません。普通、正常発達と呼ばれるものは、その時代と社会の中で、そこでもっとも一般的な養育形態を通して育った子どもたちをたくさん集めて平均をとれば、どんな発達のパターン(定型)が取り出せるかというものに過ぎません。つまり、精神発達そのものに普遍的な決定版は存在しないのです。
 近年、「正常発達」に代えて「定型発達」という言葉が選ばれるようになったのはこの理由によります。「正常発達」がない以上「異常発達」もないわけで「発達障害」とは発達の異常ではないことをまずご理解いただきたいと思います。

※参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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