子どもたちの肥満・糖尿病を予防する

笠原友子

笠原友子

テーマ:未来への絆プロジェクト

糖尿病遺伝があるからと、しばしばあきらめにも似た声を聞きます。遺伝の研究は、世界各地で進んでいますが、糖尿病は生活習慣病と言われていて、生活習慣の改善で改善する病気と言われます。
家系的に糖尿病患者が多いと子供たちへの遺伝が気になり、イベント会場での血糖検査に子供と参加する親御さんは多いです。成人して家庭から子供たちが巣立つまでの過ごし方にポイントがあるとすれば、知りたいですね。

高血糖につながる成人時の体型は家庭で作られるー将来医療費に備得る生活設計


20歳の成人時で、時間軸を分けて考えてみましょう。成人するまでは家族と一緒に生活していますから家族の生活習慣が反映しやすいですし、20歳以後の家族から独立した生活の中での生活習慣は、自分自身の生活習慣が生活習慣病へとつながって行きます。

筆者は、学校薬剤師を担当している地元の中学校を中心に「未来への絆プロジェクト」を立ち上げて、子供たちの夢を叶えるために親も子も健やかにいようと活動を続けています。この中での100人ほどの小さな研究ではありますが、成人時点で血糖状態を測定し、中学生時代の生活習慣、乳幼児期の体格、お母さんの妊娠期の状態へとさかのぼって追跡してみました。


成人時の血糖状態まで考えて体格の推移を見ていくと、10か月児の体格から、2歳児、3歳児、中学生時、成人時へと、成人時に太めの方は10か月の時からずっと統計学的に有意に体型が大きく、さらに見ていくと、お母さんの妊娠前の体格や妊娠中の増加体重までもが、成人時の体型につながっています。
お腹の中で味わった食べ物、家庭での離乳食、乳幼児期に馴染んだ食べたものと食べ方は、そのまま生活習慣となって成人時に残ってしまうのでしょう。

たとえばジャンクフードが大好きなお母さんが、妊娠中にジャンクフードを食べる機会が多かったとします、お腹の中の赤ちゃんは、ジャンクフードの味だけではなく、ジャンクフードが大好きで美味しいと感じたお母さんの感情までもを喜びと感じて記憶していきます。この食べ物と食べ方の記憶は、成長過程でも続きます。家族で食べた食事、幼いころから食べなれた地域の郷土料理は、食べた時の賑わいと共に心の中に刻み込まれた味として記憶されて行くのです。

20歳になったときに、高血糖のグループと高血糖ではないグループの二つに分けると、高血糖であったグループのメンバーは全員、中学生時代に必ず家族で食事を摂る習慣がありました。成長過程での心を養う時期に、家族で食べる食事は本当に大切ですが、この時期に生活習慣病まで養ってしまってはいけませんね。

生活習慣病の有無は、将来の個人医療費に影響

生活習慣病の有無は、将来の個人医療費に影響します。(図参照)
グラフを見ると分かるように、一番低い黄色の棒グラフは生活習慣病のない方の医療費の中央値、生活習慣病があると青い棒グラフから糖尿病のある方の赤い棒グラフへと医療費が高くなっていきます。さら糖尿病性腎症を伴うと黒い棒グラフへと高騰していきます。

からだの成長が活発な時期こそ、将来を見据えた食事習慣や生活習慣を整えることが、将来の医療費を左右する生活設計につながることでしょう。

[参考文献]
・北陸公衆衛生学会誌 Vol.47、p15-18、2020
・愛知県国民健康保険医療費データ 2008
・K Thoris,Sonography,INTECH,p328,2012
・K.Asim et.al.The potential of four-dimensional(4D)ultrasonography in the assessment of fetal awareness, Journal of perinatal medicine, Vol.33.Issue 1,pp.48-63,2005
・愛知県国民健康保険医療費データ 2008

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笠原友子
専門家

笠原友子(薬剤師)

笠原健招堂薬局(有限会社笠原)

漢方の選薬用質問と血液検査結果から微量栄養素の不足や日常の生活習慣をチェックし、微量栄養素補給と漢方薬の選薬だけでなく生活指導で糖尿病をはじめとする生活習慣病に対応し、特定保健指導までできるのが強み。

笠原友子プロは北陸放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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