糖尿病の遺伝を気にする方々も楽しみにするイベントでの無料検査
子育て世代の健康を考えるまちかど糖尿病指導薬剤師の笠原友子です。
子供を健やかに育てたい親心は、いつの時代も変わりません。
では、子供たちへの健康教育は、いつからどのように誰がすればいいのか?
糖尿病の家族を持つご家庭の方はなおさら、気になるところです。
家庭でできればいいのですが、そうばかりもいかず、試行錯誤は続きます。
ここ10年あまり、中学生を通じた家庭への健康教育を試みています。
この中に皆さんへの、少しヒントがあるかもしれません。
糖尿病との出会いは衝撃的でした。幼い娘たちを残して「生きてこの娘たちを育てたい」と言い残して逝った若い父親、息子の誕生日に誰も見ぬ間に亡くなった若い母親。
子供たちの親世代が生活習慣病になっても、受診はおろか改善意欲を持っていただける患者は多くありません。
親の病気が子の進路につながる例を見て来て、子らの親世代に検査を受けたり改善のための行動変容を求めて直球勝負をかけても、見逃される確率が多いと感じてきました。
そこで、中学生自身に自分の生活習慣を考える機会を アンケート調査の形で年に1回持ってもらう試みを10年余り行ってきています。
アンケート調査の結果は、毎年の薬物乱用防止教室の際に、中学生自身が親の生活習慣にも気を配りながら受け止められるように、ワンポイントアドバイスの形でお返しします。
この活動が成人時にどのように反映するのかを、どのような形でチェックしているのかというと、成人式に糖尿病検査をする機会を設けていて、まずここ5年間の参加率で見ています。
中学生時の生活習慣チェックだけで、糖尿病検査への受検率約5倍に!
アンケート調査は、複数の中学校での実績があって、10年以上毎年行っている中学校と、単年度だけで行っている中学校があります。
単年度で実施した中学校出身の新成人には、中学時代にアンケート調査を行った年度の新成人と行っていない年度の新成人があります。
中学時代に生活習慣アンケートを行わなかった年度の新成人の糖尿病検査参加率は、5%台
〃 行った年度の新成人の糖尿病検査参加率は、26%台
中学生時代に、1度だけでも生活習慣アンケートの形で生活習慣を意識した経験があるだけで、新成人の糖尿病検査受検率が「約5倍!」に上がりました。
良く知られている通り、糖尿病は自覚症状に乏しい病気の一つで、検査をしないと病気であることすらわからない病気です。
継続的な受診と管理を要するだけでなく、この病気を誘因として数多くの合併症を持っています。
ある日突然姿を見せなくなって存在すら忘れられてしまうため、その怖さが伝わりにくくなっていますが、脳卒中や心筋梗塞といった合併症は、救命率が上がっているものの、まだ存在しますし、今問題となっている合併症には「がん」があります。
猛威を振るっている新型コロナウィルスによる全身状態憎悪が問題になっているのも糖尿病ですが、これは糖尿病が全身性の血管病であることに起因していると考えらます。
親世代の罹患が、子供たちの進路までもを左右しかねない病気を発見するためには、まず検査をすることが必要です。
検査をするための意識が、中学生時代の健康習慣チェックアンケートで育まれる可能性があるとした、少し未来に希望が持てそうな気がしてきます。
毎年健康習慣をチェックしている中学校の卒業生の成人式の糖尿病検査受検率は、7倍!
10年以上、毎年生活習慣アンケートを行っている中学校卒業の新成人の糖尿病検査の参加率は、39%台
一度も生活習慣アンケートを実施していない学校年度の卒業生の5%台と比べると、約7倍の卒業生が、糖尿病検査に参加しています。(下の図にカーソルを当ててクリックすると拡大されます)
自立心の芽生える中学生の時期に絞って行ってきた生活習慣アンケートですが、反抗期であっても中学生の心に気づかぬ間に健康意識が根付いていてくれていたようです。
中学校での健康教育の定期化は、家庭での健康教育を補ってくれる期待が持てます。
新型コロナに対する外出制限など、家族でご家庭にいる時間が多い時期は、チャンスです!
ご家庭での規則正しい生活と食事を手作りするだけでも健康教育につながります。
今後、中学生時期の生活習慣が、どのように成人時に反映されていくのか、解析を続けて行きます。