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中田和宏

つらい痛みを軽減し、心身の健康を導く鍼灸のプロ

中田和宏(なかだかずひろ) / 鍼灸師

トキの森鍼灸院

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コラム

産後の腰痛には、このツボ!周産期のマイナートラブル-仙腸関節をひきしめて痛みを解消-

2021年11月18日

テーマ:はりきゅうとツボ

コラムカテゴリ:医療・病院

コラムキーワード: 不妊鍼灸育児休業 申請漢方薬 妊活




幸せなはずが・・・



 出産に伴う腰痛は、周産期のマイナートラブルで最も多い症状です。妊娠22週から出生後7日未満までの期間を周産期といいますが、この時期に起こったマイナートラブル(危険はないけれど不快な症状)は周産期を過ぎても続くことがあります。
 つわり、産前産後の腰痛、抑うつ気分、緊張と不安、排尿トラブル、便秘、こむら返り、むくみなど、妊娠期間から出産後にお母さんの体は大きく変化します。



 授乳が始まるとおっぱいが出なくて胸が張って痛い、夜間の授乳で寝不足になり疲労感が取れないなど。
 特に腰痛はホルモンの関係で妊娠初期から起こることがあります。(注1)
 それに加えて赤ちゃんの夜泣きや、おっぱいを飲んでくれないなど自分以外の心配事が増えて、ますます大変になります。
 鍼灸は痛みを軽減し、心身をリラックスさせる効果があります。お薬を使えないこの時期にはぴったりです(注2)。
 コロナ禍が落ち着いた今、不快な症状を治しご家族で旅行に行ったり公園に遊びに行ったりできたらいいですね。子供は元気なお母さんが大好きです。



産後の腰痛で育児が大変なお母さん





 31歳の主婦が左の腰痛を訴えて来院されました。
 20日前に第1子を出産後、2~3日して左の腰からお尻が痛くなってきました。起き上がるときや寝返りするときにすごく痛みます。立ち上がってしまえば歩くことはできますが、立ち上がる際に「ギクッ」っと痛みが来ます。けっこう激痛でしばらくは動くことができません。
 この20日間、痛みが軽くなったりすることはなく、授乳やオムツを替えるときに痛くてつらいとのことです。安静にしていると痛みはありませんが、ちょっと違和感があります。
 また眠ってしまうと痛みはありませんが、夜間の授乳や赤ちゃんの鳴き声で目が覚めて、からだを動かそうとすると大変痛いとのことでした。
 今までに腰を痛めるような大きな病気をしたことはありません。中肉中背で妊娠中は7kg体重が増加しましたが現在ではほぼ元に戻っていて、血圧や脈拍は基準値以内でした。
 食欲はあり一日3食キチンと食べます。睡眠は午後9時にお布団に入り午前7時に起床します。
その間3回授乳を行ないます。下痢や便秘はありません。
 腰を動かしてもらうと後屈と右側屈で左のお尻痛みが出ます。あおむけで股関節を動かしてもらうとお尻の筋肉が動く際に痛みが出ます。仙腸関節に負荷をかけるテストをすると痛みが出ます。両足に慢性的な冷えがありました。
 腰部椎間板ヘルニアなど神経の異常を疑う所見はありませんでした。



仙腸関節は骨盤のちょうつがい


 仙腸関節性腰痛です。仙腸関節は骨盤を形作っている仙骨と腸骨のつなぎ目の関節をいいます。たくさんの靭帯で補強されていて、普段はガッチリつながってます。3~5mmというわずかな動きをしていて、体のバランスを取っています。
 妊娠すると赤ちゃんがおなかの中で大きくなるので、この仙腸関節も広がっていきます。妊娠中にリラキシンというホルモンが子宮をゆるませ仙腸関節をつなぐ靭帯をゆるませることがわかっており、そのせいで腰痛や臀部痛が起こるのです。緩みをささえるためにお尻の筋肉が頑張り筋肉痛を併発します(注3)。

 鍼は筋肉の緊張を取ることが得意です。お灸は緩んだ筋肉を引き締める効果があります。両方を使って、こったところには鍼を、緩んだところにはお灸をしました。
 

そして周産期の腰痛には、このツボたちに効け!



 

「三陰交(さんいんこう)」と「至陰(しいん)」


 三陰交は以前このコラム「育児疲れでもうへとへと。お母さんの強い味方、それはこのツボ!」で紹介しました。うちくるぶしの上約7cmのところにあります。
 至陰は足の小指の爪の付け根にあります。







 実はこのツボたち、逆子のお灸に使うツボなんです。逆子ちゃんは頭を下にしようとしてもなかなかできないでいます。それは子宮の筋肉が固かったり血流が弱くなっていたりするからと言われています(注4)。
 この2つのツボ(両足で4つ)にお灸をすると子宮の筋肉が柔らかくなり血流が改善します。そしてホルモンバランスがよくなります。
 左臀部の鍼は直径0.12mmのものを数本、3mmほどの深さで刺したままにして15分間休んでもらいます。お灸は台座灸というものを使いました。市販されているものではせんねん灸などの名称で知られています。これを仙腸関節のところに2ヶ所、火をつけて置き、熱くなったら取るということを2回繰り返しました。なるべく熱さを我慢してもらいました。
 初診の治療終了後、一番痛かったときを10として、後屈をしてもらったら治療後の痛みは5に減ってました。効果ありということで、ご自宅でお灸をしてもらうことにしました。2週間、3回の治療でほとんど痛みがなくなり終了しました。その間ご自宅で毎日お灸をしてもらいました。
 
おわりに

 今回のお母さんのように、過去に腰痛の経験がない産後の腰痛であれば早く治ります。妊娠前から続く腰痛であればほかの要因を考えて治療しできるだけ早く治るようにします。
 周産期のお母さんは我慢せずにどんな症状でも相談してください。当院の受付は私の妻です。治療中赤ちゃんを見てあげることができます。お電話でご予約の際に赤ちゃんと一緒にいらっしゃることをお伝えいただければ受診日の調整をいたします。
 お子さんとの生活を楽しく過ごすために、腰痛を改善しましょう。




注1:公益社団法人日本看護協会
https://www.nurse.or.jp/nursing/josan/oyakudachi/kanren/sasshi/room/index04.html
注2:鍼で癒し-リラックスセーション及び心地よさの化学科-
http://www.meiji-u.ac.jp/research/files/9863ae720edc0da7984122b5a0dfe7db.pdf
注3:妊娠期における運動開始時期と分娩後仙腸関節痛の関連性について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/46S1/0/46S1_H2-95_1/_article/-char/ja/
注4:女性と鍼灸-子宮の神経性調節と体性感覚刺激-
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/51/1/51_1_44/_article/-char/ja/

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中田和宏

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