<医学博士が解説>増え続ける口の中のがん 口腔がん検診のススメ (口腔外科、舌がん)
1.年末は化膿による歯茎の腫れが多いんです!
1年が過ぎるのは早いもので、気がつけばすでに12月も半ばです。
私は土日も関係なく日々の診療に追われ、朝夕が寒くなってきたこと以外は、季節感もほとんどなく暮らしておりますが、おそらく世間では忘年会シーズンがピークをむかえ、会社によっては決算期前の追い込み時期でしょうか?皆さん、お忙しくお過ごしのことと思います。
さて、毎年この季節を迎えると来院される患者さんの傾向に特徴があります。
それは「腫れもの」が多いということです。
つまり、
①智歯周囲炎(ちししゅういえん)=埋まっている親知らずの周囲の歯茎にバイ菌が入って化膿している状態
②根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)=神経を取った歯、差し歯などの根の先が膿んでいる状態
③急性の歯周炎=歯周病(歯槽膿漏)の炎症が急性化したもの
④鼻炎を伴う上の奥歯の歯痛や、歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)=歯からバイ菌が入って生じた鼻炎
など、要するに普段はほとんど症状のなかった病巣や、その中で大人しくしていたバイ菌が、寝不足や過労、風邪をひくなどで身体の抵抗力が低下すると、急に元気になって暴れだして炎症がひどくなるために、腫れてきたり痛みだすわけです。
言い方を変えれば、忘年会の連チャンによる不摂生、残業や大掃除で張り切り過ぎるとバイ菌に付け入るスキを与えてしまうということでしょうか。
放置したむし歯が引き起こす最悪の結末とは?
2.年末に腫れてくる患者さんのほとんどが親知らず(親不知)
上記の中でも患者さんの数が一番多いのが、①智歯周囲炎で毎日2~3名の方がこれでお見えになります。
智歯周囲炎についてもう少し詳しくご説明すると、智歯(ちし)とは、いわゆる親知らずのことです。専門的にはこう呼びます。要するに親知らずの周囲が不潔になって化膿し炎症を起こした状態です。
現代人は硬い食べ物をだんだん食べなくなり、あごが小さくなってきているんです。歯のサイズは昔の人と変わりません。あごが小さいと、永久歯のなかで一番最後に生えてくる親知らずのためのスペースが不足します。斜めに生えたり、半分埋まったような生え方になってしまうことが多く、歯磨きしにくい上に不潔になり易い環境になってしまいがちです。食べかすが手前の歯との間や親知らずの周囲の歯ぐきに入り込み、常に不潔なバイ菌の溜まり場になってしまいます。
親知らず(親不知)を抜歯して小顔になる?!
3.智歯周囲炎になったら親知らずは早めに抜歯しましょう
智歯周囲炎になると、まず周りの歯ぐきが赤くなって腫れ、押さえるとにぶい痛みが出てます。体調次第で良くなったり悪くなったりを繰り返すうちに、歯ぐきから膿が出てくるようになり、口が開きにくくなったりします。炎症が拡大して喉の方向に進むと、唾を飲み込むと痛んだりします。
そのまま放置して重症化すると、化膿性の炎症が広範囲に拡大し、きわめて稀なケースではありますが不幸な転帰をたどる場合もありますので油断は禁物です。早い段階で適切な処置を受けましょう。
歯科でよく使われる抗生剤「ジスロマック」は画期的なお薬です
治療手順は腫れていたり、炎症が強ければ、まず抗生剤(化膿止め)で原因になっているバイ菌をやっつけます。
通常は数日間抗生剤を内服していただき、腫れが治まった1~2週間後に抜歯していきます。腫れたまま歯を抜こうとすると、炎症がある状態では麻酔の効きが悪く、拷問のような処置になってしまう場合があること、歯を抜いた後の傷口に元気なバイ菌が沢山いる状態だと、傷の治癒が遅れたり化膿し易いため、それを防ぐ目的で先に抗生剤をお飲みいただきます。
避けては通れない!!親知らず(親不知)の抜歯
抜歯の方法やリスクについては、親知らずの生え方や根の形状などの諸条件によりだいぶ異なりますので、詳しくは担当の先生にお尋ねくださいませ。
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