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住宅展示場の見方、チェックポイント

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:住宅

家を建てようと思ったときに最初にすることの一つに、住宅展示場の見学というのがあるかと思います。

軽い気持ちで住宅展示場を見に行って、そこで見たモデルハウスが気に入って、営業の人の感じが良くて親しくなって、最終的にそのまま家を建てた・・・そういう人もいるかもしれませんね。

何事もきっかけが大事ですから「住宅展示場を案内して貰ったのが縁」そういうのも良いかもしれません。


家を建てる最初のきっかけになるかもしれない住宅展示場見学ですが、初めて住宅展示場を見学する人には、意識しておいてほしいチェックポイントがあります。

住宅展示場でのチェックポイント


住宅展示場でチェックすること、それは家の基本構造です。

あまり意識していませんが、ハウスメーカーを決めるということは、建てる家の基本構造をここで1つに決めてしまうということです。

具体的にいうなら、

ハウスメーカーを決める=家の基本構造が決まる=部屋の大きさと形、基本性能がほぼ決まってくる

ということになるのです。


住宅展示場に出展しているハウスメーカーでは、メーカーによって基本的な家の構造がほぼ決まってきます。

そして殆どのハウスメーカーは、自由設計といっても基本的なモジュールを組み合わせで「平面的な間取りを作っていく」モジュール設計となっています。


最初から基本構造が決まっているからこそ品質が安定し、間取りを決めるだけで設計できるためあまり悩まずに家を建てられるという利点もあります。

しかし、この方法はその基本構造を外れた家を建てるのには向いていません。

つまりあなたの家に対する要望が「天井をもうちょっと高く」「廊下をあと5cm広く」となったときに、この手法は合理的に使えなくなってしまいます。

RC住宅
ロフト付きのリビングの例。天井高は3.7m。開放感のあるリビングです。


基本構造をあらかじめ決めてモジュール単位で設計を行うことは、設計や施工の時間を短縮し、住宅を大量生産する方法としては非常に合理的だと思います。

多くの人に一定の品質の住宅を提供する方法としては、非常に有効は方法だと思います。


しかし、たとえばあなたの建てたい家の理想の中に、

◇リビングの天井高を高くして開放感を得たい

◇2階に広いガーデンテラスを作りたい

◇ロフトを作りたい

◇スキップフロアで収納や子供部屋を作りたい

・・・などがあったとき、あなたの考えている家、理想の家はそのモジュールに当てはまらなくなる場合があります。


◇部屋いっぱいに書庫を作りたい

◇薪ストーブを置きたい

◇防音を性能を上げて楽器室を作りたい

◇ビルトインガレージ、ガレージハウスを作りたい

◇大型食洗機、業務用キッチンを使いたい

・・・このあたりもハウスメーカーの基本構造、標準仕様では難しくなる可能性があります。

RC住宅
柱や壁の無い6.8m×7.8m、約32畳のLDK。天井高も高いので、開放感があります。


勿論、メーカーの想定する家と、あなたの理想の家が一致する場合、理想的な家づくりが可能となるでしょう。
(予算の問題は別にありますが)

しかし、あなたの求める家がメーカーの想定する基本構造に当てはまらない場合、「自由ではない」自由設計の注文住宅になってしまう可能性があります。


住宅展示場で家の構造をチェックする


現在、日本の住宅の構造については、大まかに下記のようなものがあります。


木造

→壁式(いわゆるツーバイフォー)

→軸組(いわゆる在来木造)
※在来木造に高強度の集成材を組み合わせたSE工法のような家ももあります


鉄骨造

→軽量鉄骨構造(いわゆるプレハブ工法)

→重量鉄骨(ビルと同じ工法です。通常ハウスメーカーでは取り扱っていません)

→中量鉄骨特殊工法(ヘーベルハウスなど)


鉄筋コンクリート構造

→ラーメン構造(ビルと同じ工法です。通常ハウスメーカーでは取り扱っていません)

→壁式構造(通常ハウスメーカーでは取り扱っていません)

→SRC構造(高層ビルと同じ工法です。あまり家には向いていません)

→RCパネル工法(一部ハウスメーカーで取り扱っています)



住宅はその構造によって、基本性能、特性が違ってきます。

よく言われているのは、


木造軸組

 →安い、比較的工期が短い。自由度が高い。

 →気密性、防音性が高くない、揺れやすい。大空間は苦手。


鉄筋コンクリート

 →剛性が高くあらゆる災害に強い、水に強い。気密性、防音性が高い。

 →やや高い。工期が長い。重い。施工会社が限られる。


重量鉄骨

 →大空間が可能。リフォームにも向く。地震にも強い。

 →防音性、気密性はそんなに高くない。


・・・こんな感じでしょうか。


家の構造には様々なものがありますが、あなたの建てたい家に合わせた構造をハウスメーカーの担当者が選んでくれることはありません。

ハウスメーカーの場合、メーカーを選んだ時点で、家の構造は決まってきます。

モデルハウスで気に入ってそのハウスメーカーを選んだ時点で、その家の形、基本性能のかなりの部分は決まってくるのです。


モデルハウスの見学では、家の基本構造に注意して見学して下さい。

あなたが思う家の形、部屋の大きさ、間取り、天井の高さ、安全性が、そのハウスメーカーの設計で実現可能なのかをチェックしてみて下さい。


住宅展示場の営業マンもプロです。契約してもらえるかどうかは自分の生活がかかっているのですから、説得力もあるし、押しが強い人もいます。

モデルハウス見学の目的は家作りの第一歩、「情報収集」が目的です。

営業の人に流されて、家を建ててしまわないようにして下さい。
(営業の人にも経験豊富で優秀な人も、それほどでもない人もいます。いろいろな人と話をしてみて下さい)


きっかけが何であれ、最終的に思ったような家を建てることが出来れば良いと思います。

モデルハウス見学は、その「きっかけ」になると思いますが「最終決定」ではありません。

ハウスメーカーを最初に決めたせいで、家の基本構造が固定されるのは良いことではないと思います。

モデルハウスを見学することで、どんな家を建てたいのか、具体的なイメージを固めていくようにして下さい。
ハウスメーカーを決めるのは、その理想の家を実現できる工法を持っているかどうか(そして予算に合うかどうか)それを見極めた後になると思います。


さらに言うなら、階高や部屋の広さ、防水性や耐火性などで自由の効く「重量鉄骨」「RC」などの構造は、大手ハウスメーカーにはありません。

気密性や防音性、災害に対する安全性まで考えて家を建てたいという方は、ハウスメーカー以外の「自由設計」も視野に入れて、いろいろと検討してみて下さい。

参考「丈夫な建物に避難してください」「安全な建物に避難してください」の意味


  ◇ ◇ ◇


家を作るときに考えて欲しいことについて、こちらのページに纏めてみました。

テーマ別コラムのまとめ【ペット/寒さ対策/子育て/地震に強い鉄筋コンクリート住宅など】

興味のある分野があれば、是非、目を通して下さい。


 ◇ ◇ ◇


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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

浅井知彦プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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