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浅井知彦

コンクリート住宅設計のプロ

浅井知彦(あさいともひこ) / 一級建築士

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

コラム

店舗ビル、オフィスビルを賃貸住宅にリノベーションする方法

2021年3月24日 公開 / 2021年3月30日更新

テーマ:建築家

コラムカテゴリ:住宅・建物

オフィスビル、店舗ビルのリノベーションについては、過去にもコラムを書いていますが、ここ数年、景気や社会状況はめまぐるしく変化していますので、再度、書かせて頂きます。


数年前、インバウンド需要が盛り上がっていた頃は、私の方にも宿泊施設建築に関する相談を受けることが幾つかありましたが、今は全く無くなりました。

オリンピック景気で建設ラッシュになるかと思えば、急な社会活動の停滞。
全く先が読めません。


不動産業界の中でも、店舗ビル、オフィスビルは景気、社会状況によって需給が大きく変わる分野ではないでしょうか。

景気などの状況によっても変わりますし、近くに大型オフィスビルが出来ることでも賃料相場は変わります。

今はリモートワークの推進で、本社機能を縮小させる会社も増えているようです。

この流れが本物なのかどうか判りませんが、少なくとも当面は店舗ビル、オフィスビルの需要はあまり期待出来ないのかもしれません。


それに比べて、あまり変化が少ないのは、賃貸住宅ではないでしょうか。

賃貸価格推移
このグラフは東京圏の1LDK・2DKの賃貸住宅の例ですが、ここ10年、あまり家賃が変わっていないことが判ります。

リーマンショック、コロナウィルス禍など、日本全体の経済を左右するようなことがあっても、賃貸住宅の相場にはあまり影響がなかったようです。

ファミリー層が中心となる分譲マンションの相場については若干の上がり下がりはあるようですが、若い年代層に向けての賃貸住宅(単身者あるいはカップル向け)については、固い需要があるようで、殆ど変わりません。
(むしろ少し高くなっているようです)

夜の室内

不動産サイト「SUUMO」の調査によると、20代独身者が住まいを選ぶ場合、最も重視することは「最寄り駅からの距離」だそうです。

ちなみに40代になると重視するポイントが「周辺環境」になります。

やはり、自分の生活を楽しむ単身者、あるいは子供のいない若い年代の人は利便性の高い都会の生活を志向し、子供のいる家庭は、環境の良い郊外を目指すということでしょうか。


この若い世代に訴求する「利便性の高い都会の賃貸住宅」の立地について考えるとき、今、オフィスビルや店舗ビルの建っているエリアは、かなり魅力的だと思います。

勿論、駅前の高層オフィスビルや街の中心部の繁華街に住むというのは無理でしょう。

しかし、中心部から少し離れた場所でも、歩いて街の中心部に出られるくらいのところであれば、利便性を考えてもかなり魅力があります。

たとえば主要駅から15分くらい離れたビルを考えた場合、今のオフィス需要では、若干訴求力が弱いのかもしれません。

しかし1LDKの賃貸物件であれば、充分人気物件になる可能性があります。


ビルの規模についても、小規模オフィスビルの人気は高いとは言えませんが、賃貸住宅であれば建物の規模はあまり関係ありません。

空室の目立つようになったオフィスビル、店舗ビルであれば、今後、賃貸住宅へのリノベーションも検討してみて良いのではないでしょうか。



以下は、以前に手がけた「店舗ビルから住宅(マンスリーマンション)にリノベーション」した例です。

元の店舗
元は大型美容院、エステサロンの入っているビルでした。
撤去
解体撤去を行い・・・
撤去後
内部をスケルトン状態にした後、内部の工事を行って・・・
リノベーション工事中
排水管工事中
リノベーション工事中
賃貸住宅物件に仕上げています。
天井高の高いリビング
このリノベーションの仕上がりについては、こちらのリンクで御覧下さい。

◇店舗ビルをリノベーションした賃貸物件をみる


正直、設計面からいうとオフィス・店舗から賃貸住宅へのリノベーションは簡単な仕事ではありません。

たとえば、

◇法律の問題
リノベーション後の建築法規をどうクリアするか。
特に消防法、避難関係など建物全体に関わる問題をどう解決するか。

◇設備の問題
水まわり、特に排水をどうするか。
空調では室外機を何処に設置するか。
給湯機を何処に設置するか。

◇窓の問題
今までと間取りが変わる中で、どうやってすべての部屋に窓を確保するか。
(窓の変更は大がかりな工事になるので、なるべく最小限に留めたい)

など、様々な問題があります。


しかし、オフィスビル・店舗ビルは、元々しっかりとした作りで建てられたものが殆どです。

立地が悪くなく、駆体さえしっかりしていれば、リノベーションを検討することに意味はあると思います。
外観


ここからは私見になりますが・・・

1LDK、2DKなど、若い人の住む賃貸住宅では、少し変わった部屋でも「個性」と見なされ、普通の部屋より人気が出ることがあります。

最近多くなった住宅を紹介するテレビ番組をみると、倉庫のような剥き出しの内装、不自然に高い天井、飛び出した梁、変形した部屋、打ちっ放しの壁などが「個性的なインテリア」として紹介されていたりします。

若い世代にとって、賃貸住宅は「住む人のセンスを表現する場所」でもあるのです。

他人と違う個性的な部屋を求める層は、確実にいると私は考えています。

ビルリノベーションの賃貸住宅は、分譲マンションのような高級な雰囲気になることは無いかもしれません。

しかし「個性的」「スタイリッシュ」な人気物件になる可能性は充分にあると思います。

たとえ古いビルであったとしても、「レトロな雰囲気」が人気になるかもしれません。

個性的な部屋は、入居者が大事に、長く入居してくれるということも期待出来ます。

リノベーションによって、今時の「新築賃貸マンション」を作ることは出来ないかもしれませんが、「他には無いデザイナーズ賃貸住宅」を作ることは出来るかもしれません。


  ◇ ◇ ◇


家を作るときに考えて欲しいことについて、こちらのページに纏めてみました。

テーマ別コラムのまとめ【ペット/寒さ対策/子育て/地震に強い鉄筋コンクリート住宅など】

興味のある分野があれば、是非、目を通して下さい。


 ◇ ◇ ◇


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