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浅井知彦

コンクリート住宅設計のプロ

浅井知彦(あさいともひこ) / 一級建築士

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

コラム

盛り土に家を建てるのは危険なのか。傾斜地に安全に家を建てるには。

2021年3月14日 公開 / 2024年1月22日更新

テーマ:神戸、芦屋、西宮で家を建てる

コラムカテゴリ:住宅・建物

家を建てるとき「軟弱地盤に建てる」ことが危険なことは、皆さんの共通認識としてあると思います。

しかし、家を建てようとする土地が平坦で無い場合は、どのようにすれば良いのでしょうか?

今回は、切り土、盛り土などの造成地で家を建てること、特に「盛り土に家を建てて大丈夫なのか」について、書いていきたいと思います。


盛り土は長い時間を掛けて沈んでいく


まず、敷地に土を盛って造成した場合について考えていきます。

地盤が低い場合、傾斜地などで平坦で無い場合、敷地に土を入れ、平坦に造成した後、家をたてることがあります。


このような場合、その盛り土造成された地盤面は長い年月をかけて沈下していきます。

その沈下速度は盛り土の種類、含水量、載荷荷重などによって異なりますが、早くても数年、長ければ数十年かけてゆっくりと沈んでいきます。

盛り土の沈下
昔は「田んぼを埋め立てても、土を盛って1~2年すればそのまま家が建てられる」というような業者がありましたが、今ではそのような考え方は通用しません。

現在の設計では家を建てるときには地盤支持力に関する安全性もキッチリと調べますので、軟弱地盤に土を盛って、そのまま家を建てるようなことは出来ません。

地盤改良杭などを使えば大丈夫なのか?


このような盛り土造成地に家を建てるとき、その家を支える地盤さえ良ければそれで大丈夫なのでしょうか。

地盤の沈下が予想される造成地に家を建てる場合、一つの方法として地盤改良杭を使うという設計手法があります。

この方法を使うと、「家」自体は確実に支持されます。

しかし、それ以外の部分、庭やエントランスなどの部分は支持されていませんので、長い間に家とその周辺の土地の間に段差が生じる可能性があります。

支持杭があるときの地盤の沈下

勿論、少しの地盤沈下、段差であれば、簡単な外構の再工事で大きな問題は生じないと思います。

盛り土造成されてからかなり年数の経った土地、たとえば20~30年前に造成された土地であれば、少しの地盤沈下するだけで済むと思いますので、大きな問題が発生することはないでしょう。

しかし、新たに盛り土造成を行ってそこに新築住宅を建てるのであれば、その敷地は今後数年~数十年かけて大きく土地が沈んでいく可能性があります。

盛り土の土地が下がっていくのは、「土の間にある空隙が詰まっていく」「土中の水分が抜けていく」など複数の要因から発生しており、地盤の低下は長い時間をかけて進行していくものです。

「盛り土で土地を造成して1~2年以内に家を建てる」というのは、たとえ家の基礎部分に杭などを用いたとしてもリスクのある行為だと思って貰った方が良いでしょう。

盛り土が駄目なら掘削すれば良い?


「盛り土をして、すぐに家を建てるのは避ける」ことを考えると、たとえば家を建てる敷地が傾斜地である場合、どのような方法があるのでしょうか。

まず、考えられるのが、土地を掘削して平坦地をつくり、そこに家を建てる方法です。

傾斜地に家を建てる

傾斜地に家を建てる場合、ハウスメーカーに聞くと、まずこのようなプランを提案されると思います。

しかし、この方法は、

・掘削する面積が広く

・家と別に擁壁が必要

なため、家を建てる以外の費用がかなり高くなります。

場合によっては家の本体工事費より造成費用の方が高くなる場合さえあります。

一般的にハウスメーカーの行う造成工事はかなり高額になります。ハウスメーカーは平坦な土地に家を建てることが専門で、造成などの土木工事に慣れていないからでしょう


盛り土せずに家を建てる、もう一つの選択肢


傾斜地に盛り土をせず掘削を最低限に抑えて家を建てる場合、もう一つの選択肢として下図のように「建物と擁壁を一体で考える」という方法もあります。

傾斜地に安く家を建てる

この例では半地下になる部分をビルトインガレージや倉庫にして、風通し、陽当たりの良い2階(1.5階?)より上に居室を配置しています。

土地と工事費の有効活用としては、かなり合理的な方法でしょう。


実際には、敷地形状、傾斜の角度など、様々な要因があるため、ここに書いた「家と土地の問題を一体で考えて建てる」方法だけが最適解であるかは判りません。

しかし傾斜地に家を建てる場合、必ずしも敷地を平坦に造成してから建てる方法だけが選択肢ではありません。

傾斜地に家を建てる場合、盛り土、切り土だけなくいろいろな設計方法を検討して頂いて良いと思います。

この記事を書いたプロ

浅井知彦

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浅井知彦(レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所)

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