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浅井知彦

コンクリート住宅設計のプロ

浅井知彦(あさいともひこ) / 一級建築士

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

コラム

中古マンションのリフォーム条件付き物件について。建築士からのアドバイス

2020年5月7日 公開 / 2023年12月9日更新

テーマ:住宅

コラムカテゴリ:住宅・建物

前回、建築条件付の土地購入の話をしました。

建築条件付き土地について【建築条件付の契約トラブルに気を付けてください】

今回は、最近増えてきたリフォーム条件付中古マンションについて書いていきます。



建築士としてはリフォーム条件付マンションをお勧めしません


今回もまず結論から書きますが、リフォーム条件付中古マンションをお勧めしません。

その理由は私の経験上、

・不動産の売買契約と建築施工契約の責任範囲が曖昧であること

・施工費用が相場より割高になりがちなこと

・施工業者が施主の要望を聞かないことが多いこと

・結果としてトラブルが起きやすい契約方法であること

などが見受けられるからです。

上記から考えると、リフォーム条件付きマンションは元々買い主側に不利な契約であると言えるかもしれません。

マンションリフォーム

そもそも「リフォーム条件付」マンションとは何か


「リフォーム条件付物件」という不動産の販売方法については最近増えてきたものですので、内容をよく知らない人も多いかもしれません。

リフォーム条件付中古マンションとは、中古マンションを不動産として購入するとき、物件購入と同時にリフォーム工事の契約も行うという、一種の「抱き合わせ販売」のことです。

一応、この契約のメリットとしては、

1.不動産購入の契約には工事価格を含むので、工事代金を含めて一体的に「リフォームローン」を組むことが出来る

2.住み始めるまでの総額が想定しやすいので予算が立てやすい

3.リフォーム済み物件を購入することに比べると、内装、住宅設備などを自由に選ぶことが出来る

という点にあります。

特に販売業者からは、3.の「内装、住宅設備などを自由に選ぶことが出来る」点を大きなメリットとしてアピールされることが多いようです。

施工業者を選べないことのリスク


確かに「内装、住宅設備などを自由に選ぶことが出来る」というのは、魅力的な条件のように思います。

リフォーム条件付きの物件では完成予想図のCG画像などを用意していることも多く、リフォームで「新築同様のマンション」になるというのは大きな訴求力を持っています。

しかし冷静に考えると、購入時に行われるリフォーム工事の契約内容は、

工事内容の詳細も決まってないのによく知らない業者と工事契約を行うこと

です。

一千万円近い工事を依頼するのに、こんな状態で契約を決めてしまっていいのでしょうか?

更にいうと、この契約では実際の「工事価格」がいくらなのかもはっきりしません。
(不動産会社へのキックバックがあると思われるため)

ちゃんと支払った金額分の施工が行われているのかどうかも判らないのです。


マンションリフォーム

分譲マンションの工事は管理規約に則って行われる必要があります


もう一点、リフォーム条件付マンションで問題になるのは、管理組合との関係です。

分譲マンションにおける自治管理は、区分所有法に則り、区分所有者で構成された管理組合が行います。

リフォーム工事はたとえ室内の工事であっても、管理組合の定めた管理規約に則って行われる必要があります。

室内だからといって、勝手に工事できるとは限りません。

全面リフォームのような、いわゆるリノベーション工事になると、管理組合の許可を得なければ工事出来ないことも珍しくありません。

ちょっとした工事であっても、搬入、撤去でのエレベータの使用、工事車両の出入りなどでは管理組合に確認をとる必要が出てきます。

この手続きを疎かにすると、引っ越す前から近隣住民の印象を悪くしますし、最悪、管理組合から工事の停止を求められることもあります。

勿論、マンションでの工事に慣れたちゃんとした業者であれば、このあたりの事情は熟知しています。

しかし施工会社を選べないリフォーム条件付き契約の場合、ちゃんと手続きを行った上で工事をおこなってくれるかどうかは業者次第、どうなるのかわかりません。

そして工事でトラブルを起こし近隣の人に迷惑を掛けたとしても、その後そこに住むのは購入した人であり、引っ越す頃にはもう施工業者はいなくなっています。

不平等な立場がトラブルを生む


勿論、施工を行う会社が良心的で親切、コミュニケーションにも技術力にも問題ない、信頼出来る業者であれば問題ありません。

しかし何か問題が発生した場合でも「リフォーム条件付」の契約は工事費用がセットですから、物件自体を解約しない限り工事業者を変えることは出来ません。

施工会社は、この工事が「簡単には解約されない契約」であることを充分知っています。

工事の発注者と工事請負者の関係ですが、最初からその立場が不平等なのです。

施工会社は「不動産会社からの紹介」で仕事をしている訳ですから、機嫌を損ねて困るのは仕事を廻してくれる不動産会社であり、この物件を購入した人ではありません。

施工会社の立場からすると、発注してくれたお客様は不動産会社であり、購入した人はお客様でさえ無いと言えるかもしれません。

このようないびつな力関係ですから、一度トラブルが発生すると、解決するのは非常に困難です。

この契約に若干のメリットがあるのは理解しますが、その分(それ以上?)リスクがあることは、知っておいて欲しいと思います。

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浅井知彦

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浅井知彦(レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所)

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