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浅井知彦

コンクリート住宅設計のプロ

浅井知彦(あさいともひこ) / 一級建築士

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

コラム

建築条件付き土地について【建築条件付の契約トラブルに気を付けてください】

2020年5月6日 公開 / 2023年12月8日更新

テーマ:建築士と土地探し

コラムカテゴリ:住宅・建物

家を建てるための土地探しをしていると頻繁に目にする建築条件付とは、どのようなものでしょうか。

今回は、建築条件付の土地について、その内容と気を付けて欲しいことを書いていきたいと思います。


「建築条件付」の土地とは?


インターネット検索で土地探しを行うと、まず目立つところに「建築条件付」土地が幾つも表示されます。

建築条件付の土地とは、土地を購入するときに「一定期間内に指定した建設業者で家を建てる」という条件がついた土地のことです。

基本的にその土地を購入する場合、指定された工事会社で家を建てる義務があります。


最初に結論を書きますが、私は建築条件付の土地はオススメしません

これは、私が建築条件付宅地でのトラブルを幾つも見てきた結果からの結論です。

「建築条件付」の土地から逃れられない?


「建築条件付」物件は、他の土地に比べて価格が安く、検索の上位に多数表示されます。
(その理由はあとで書きます)

また、わかりやすい参考プランも用意されています。

土地と建物を含めた総額がわかりやすく、家の完成イメージもしやすい。

初めて家を建てる人には、非常に魅力的な物件に見えるかもしれません。

・・・このまま何の問題もなく予算内で理想の家が建てられれば良いのですが・・・多くの場合、なかなかそう上手くはいきません。

神戸の遠景


業者からみた「建築条件付」土地の強み


「建築条件付の土地」は何故、相場より少し安いのか・・・それは「建築条件付の土地」は「土地の売買の利益」だけでなく「建物の建築費用で元を取る」という収益構造のためです。

土地取引による不動産仲介手数料は、宅地建物取引業法により定められた上限額があります。

建設業者からすれば、正直、仲介手数料はそんなに大きな利益になりません。

それよりもその土地に建物を建てた場合の方が、大きな利益を生むことが出来ます。

建築施工で利益を上げられるという見込みがたっていれば、土地の方は多少、安くしてもかまいません。

不動産手数料より高い建築施工での利益を見込んでいるからこそ、ネット広告費にお金をつぎ込んでいるともいえます。

「建築条件付」の土地の価格設定は、悪い言い方をすれば「客寄せのための土地価格」になっているのです。

業者優位の家づくり


もちろん土地に指定された建築業者に「良い家」を建てて貰えればまったく問題が無いのですが・・・なかなか上手くいかないことが多いようです。

「建築条件付」は、家を建てる建築業者側からすれば「他の業者に乗り換えられない」という「業者優位」の仕事になります。

「お客様から解約されない」工事なのですから、予算も設計も業者主導で行うことが可能です。

既に土地の仮契約を行っている施主は、業者から少しくらい無理を言われても聞き入れるしかありません。

また、この契約には施工契約までの期限がついており(3ヶ月程度が多い)、多くの場合じっくり検討する時間を与えられません。

住宅設備の仕様なども、業者主導で決められます。

土地を担保に取られており、時間に制約のある契約は、施主側に圧倒的に不利です。

建築士として幾つかの例をみてきましたが、建築条件付の土地での建築トラブルの多くは「施主が我慢して、そのままになる」ことが殆どです。

神戸の夜景

建築条件付きの土地購入は慎重に


土地というのは一品モノです。同じモノは他にありません。

どうしてもその土地が気に入った場合、土地購入のための取引材料として「建築施工契約」を迫られると、なかなか断り辛いと思います。

そんな場合でも「建築条件付」の土地を契約するのは、よくよく考えてから行って下さい。

「どうしてもその土地に住みたい」「家を建てる業者、営業担当、設計担当、施工担当は充分信頼できる」という考えが固まってから、契約するようにしてください。

もし、その土地を買いたい理由が「相場より少し安いから」であるのでしたら、もう一度、じっくりと考え直してから結論を出して下さい。

建築条件付の土地は慎重の上にも慎重に、これが建築士からのアドバイスになります。

この記事を書いたプロ

浅井知彦

コンクリート住宅設計のプロ

浅井知彦(レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所)

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