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この古民家、約30年前に敷地内移動をしたそうです。
農地の区画整理に伴い、地盤を2mも土盛りをして、曳き屋さんに少しずつ移動してもらったそうです。
区画整理当時は、潰して別の敷地に建てようという話(そちらの方が安くつく)もあったそうなのですが、おじいさんが若い頃にお建てになった家で、それを継いだお父さんが、がんとしてお許しにならなかったのです。
【庇の瓦を降ろして、土を取り除いています】
家を曳いたとき、母屋と離れは切り離しましたが、瓦はそのままで引っぱりました。
瓦は愛知県のものだと言われていたので、たぶん三州瓦のいぶしだと思われます。
今回、欠けているところは多少見受けられましたが、表面は何ともなっていませんでした。
10年余りで再塗装をしなければならない〇ラーベストとは雲泥の違いがありますね。
瓦を固定する土は、いわゆる土壁の家の土です。乾くとカチカチになります。
今のように釘ではなく、壁土の上に瓦をのせて重ねているだけです。
【面積の少ない庇にも大量の土と瓦がのっていました】
最終的に、降ろした瓦は1トン車の荷台をほぼ占領、土は軽トラックに小盛りいっぱいありました。
そうとうな重量ですが、これを140年も風雪に耐えて木が支えていたのかと思うと、感動的ですらあります。
もともとは茅葺(かやぶき)屋根でしたが、茅が寿命だったので30年前に鉄の安全屋根をかぶせたのです。
将来、茅そのものが無くなるだろうと心配されて、当時、茅を葺きかえるのをあきらめられたそうです。
【庇が下がっているのがわかりますか?】
今日の仕事のメインは、W字型に波打っている軒先をまっすぐに揃えることです。
土の下は杉板が葺いてありました(今は瓦仕様でもほとんどが合板ですね)。通気性を重んじる日本伝統の知恵です。
垂木(たるき)も、雨が強くあたる場所はさすがに腐っていますが、少し中に入るとなんともありません。
ビスがしっかりきく強度を維持していました。垂木(たるき)はたわみに強い松が使われています。
今でも、梁に常に使われる強い木です。今回、補強で入れる垂木も松になります。
【たわんでいる箇所に、垂木を差し込んでいきます】
垂木は、丸桁の上に差し込まれていますが、古い垂木が場所によって曲がったり、傷んだりしていますので、横一文字に糸を張って高さの不ぞろいを見ながら作業します。古い垂木の箇所ごとに合わせて現場でくさびを作ります。
バールで起こし、職人さんが肩で支えながらほこりまみれで作業が続きます。
棟梁、大工さん、サポートさんの、まさに三位一体の仕事です。
【何度も修正しながら、何とか初日で庇をまっすぐにできました】
「だいぶ、あがったな」
「そうですね、でももう少しあげられますよ」
「そこ、もう少し上がらんか」
「そこのくさび、代えてみたらどうや」
丸一日作業場におりましたが、この妥協のない職人魂が家づくりを支えるのです。
水平に糸を張ったぎりぎりの高さまで、上げたり下げたりしながら丁寧に仕事をしてくれました。
明日は、板金の下地づくり、軒裏化粧板の準備になります。
こんな職人さんが、当社の置き床生活や木製内窓の工事をしてくれるのです。
感謝感激であります。
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