無垢材を床板に使う健康上のメリットとは?
【木と森の快適さを科学する 宮崎良文著】
前回は、ナラの無垢材で床施工した場合、施工前のカーペット・畳敷きに比べてダニの数が激減したという実証実験のお話をしました。でも、無垢材の香りがダニを減少させたことを実証する必要がありました。
木の香り物質がダニの行動に及ぼす影響を明らかにするため、青森ヒバの材のノコギリ屑を用いて実験しました。
この材には2%程度の油が含まれている。つまり、100gのノコギリ屑の中から2g程度の油が抽出できる。これが青森ヒバ材の香りを形成しているのです。総ヒバ造りで建てた家は、3年間、蚊が入ってこないと言われています。
実験準備
① 溶媒で抽出して油を含まないノコギリ屑を作製。
② そこにヒバ材油を添加して、ヤケヒョウヒダニの行動と繁殖を観察。
【材油含有量ごとの効果表】
実験結果は下記の通りです。
① 材油2.0%群(本来のヒバ材油含有量とほぼ同等量)
⇒ダニ数が激減し、2日後には動いているダニはほぼゼロになった。
② 材油0.25%群(本来の1/8程度の精油量)
⇒25日後には、ダニ数が93%減少した。動いていたのは僅か7%です。
③ 材油0.5%群、1.0%群
⇒13日以降は動いているダニ数がほぼゼロとなった。
④ 溶媒で抽出して油を含まないノコギリ屑ではダニ数は減少しなかった。
実証結論
① ヒバの精油はダニに対して強い効果を持ち、本来、材に含まれている精油の8分の1程度の濃度でダニ数の増加を抑制できることが明らかになった。
② 人に対して様々な効果を持つことが明らかになった桧やタイワンヒノキの材油もダニに対して同等の強い活性を示した。
もうひとつ、木材チップによるダニの行動抑制実験があります。
【特製ダニ暴露チャンバーのイメージ図】
実験準備
① 人による香り物質の吸入実験に用いたチップ(杉・桧・ヒバ)に加えて、クスノキ、ケヤキ、ミズナラのチップを用意する。
② チップ上に、写真のような特製暴露(通気性あり)チャンバーに封じ込めたヤケヒョウヒダニ(約10匹・4連)を置いた。
③ 各チップ材の人の官能評価実験も同時に実施した。
実験結果
① ヒノキ・ヒバ⇒12時間後には、50~60%のダニが動かなくなった。
② クスノキ ⇒12時間後には、90%以上のダニが動かなくなった。
③ 杉 ⇒72時間後には、60%のダニが動かなくなった。
④ ミズナラ・ケヤキ⇒72時間後でも、80%以上ダニは元気に動いていた。
⑤ 杉・ヒバの香りは、「好き」「自然」「鎮静的」
⑥ ヒノキの香りは、「好き」「鎮静的」
【木材チップの揮発成分によるダニの行動抑制効果】
実証結論
ダニは各種チップに直接触れることなく、スギ・ヒノキ・ヒバから発散された精油成分によって、非常に強い行動抑制を受けることが確認された。
ようするに、五感を介する種々の刺激によって人にリラックス感を与える無垢材を、最も重要な室内のアレルギーの源である屋内塵性ダニの防除に有効に利用できる。
つまり、湿度が高いダニの繁殖に適した場所に、杉や桧の床材を利用することが有効であることが証明されたことになります。
調湿と香り成分のダブルパンチで、ダニを退散させることが出来るわけです。
昔から、建材として利用されてきた国産のスギ・ヒノキ(ヒバは流通量が少ない?)は、住宅様式や生活スタイルの変化で室内が高温多湿型になりがちな現代生活には、もっとも有効なアイテムなのです。
次回は、和室のダニ対策について述べたいと思います。
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