医療事故調査制度の利用
私は現在、30代後半です。
私が子どもの頃は、CTなんて聞いたこともありませんでした。
病院で撮るものといえばレントゲンです。
現在は、CTはすっかりお馴染になりました。
MRIも相当普及しているようですし、他にもPETなど様々な画像診断方法が普及しています。
CTの利点と弱点
ところで、レントゲンと比較した場合、CTは身体の内部を立体的に捉えられるということで非常に優れたものと理解されています。
では、だからCTさえあれば、ほとんどのことがわかるといえるでしょうか?
もちろん、答えは、NOです。
CTには、次のような利点と、次のような弱点があるといわれています。
(利点)
・簡単、短時間で可能
・外表からわからない内因性疾患を発見できる
・特定の出血(脳内出血など)を発見しやすい
・異物が発見しやすい
(弱点)
・放射線被ばくする
・古い出血の判定が難しい
・エックス線が透過しにくい部位(脳の奥など)の判定が難しい
・軟部組織の損傷の判定が難しい
このように、CTは万能ではありません。
もちろん、MRIその他の画像診断方法も同じです。
それぞれ利点と弱点があります。
Aiも万能ではない
以前、死因究明のための解剖の重要性について書きました。
最近はAi(Autopsy imaging、死亡時画像診断)といって、死後にCT撮影を行って、死因究明の場面で利用する動きがあります。
これ自体は死因究明のために科学力を使う一つの方法であり、有用であることは間違いありません。
しかし、他方で、これで事足りるかのような議論になることを非常に懸念しています。
先に述べたとおり、CTは万能ではありません。
先に述べた弱点でいえば、軟部組織の損傷が見つけにくいため、臓器の損傷部位の特定や筋肉内の出血を見逃してしまう恐れがあります。
また、先には挙げませんでしたが、CTに限らず画像一般に共通する死因究明の際の弱点として、薬物などの化学的な物質の検出ができないということが挙げられます。
このような弱点があるため、Aiでは解明できない点が確実に存在するのです。
過信は禁物
科学力を有効に活用することはどんどん推進してよいと思いますし、その意味では、Aiが普及していくことは好ましいことだと思います。
しかし、他方で、Aiさえあればそれでよいというような風潮になることは、非常に危険だと思います。
科学力を過信したり誤信したりせず、Aiに限界があるということを知った上で、より良い活用方法が検討されていくべきだと思います。
Aiと同時に、以前述べたとおり解剖制度の普及もどんどん進んでほしいところです。
「Aiがあるから解剖は不要だ」などということにだけはならないで欲しいと思います。