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伊藤健司プロは北海道テレビ放送が厳正なる審査をした登録専門家です

心理的安全性とコンプライアンス① 心理的安全性がもたらす影響について

伊藤健司

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テーマ:コンプライアンス

今年も残りわずかとなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今年は、ハラスメントに関する研修のご依頼をたくさんいただいた1年でした。一昨日、年内の最終登壇を終えましたが、テーマはやはりハラスメントでした。
ハラスメントも含めたコンプライアンス研修全般の特徴として、今年は「心理的安全性」についてよくお話しした印象です。ですので「心理的安全性」とコンプライアンスの関係について、2回に分けて書きたいと思います。

心理的安全性とは?


心理的安全性とは、ハーバード・ビジネス・スクールの教授エイミー・C・エドモンドソン博士が提唱した概念で、「自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態」を指します。皆さんの職場には、心理的安全性はありますか。

「自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態」とはやや抽象的な表現です。もちろん皆さんの中には「うちの会社は、何でも気軽に話せる社風だよ」とおっしゃる方も多いでしょう。ただこの表現は、他愛もない世間話を気軽に話し合えるというニュアンスとは少々異なります。

仕事を進める上では、相手にとって耳の痛いことを伝えなければならないシーンが出て来ます。例えば、相手の間違いを指摘しなければならない場合。仕事の進め方の改善を相手に要求しなければならない場合。もしくは、自分にとって都合の悪いことを伝えなければならないシーンもあります。自分のミスや失敗、間違いを伝える場合。分からないことを分からないと正直に伝えたり、できないことをできないと伝えたい場合。そのような場合はいかがでしょうか。考えや気持ちを、率直に、正直に、不安を感じずに伝え合えるでしょうか。

伝えることによって、相手の機嫌を損ねたり、叱られたり、無知・無能と思われたり、面倒くさいヤツと思われたり。人間関係のリスクを予想して不安を感じると、人は自分の考えや気持ちを引っ込める可能性が高くなります。こういった不安を感じるか感じないかは結構紙一重で、ちょっとした言葉のやりとりから、コミュニケーションのバランスが不安側に傾いたり、安全側に傾いたりするのでしょう。

「そんなことも知らないの?!」
「そんなこともできないの?!」
「またミスしたの?!」
「本当にできるの?!」
「責任とれるの?!」
「余計なこと言うなよ!」

発言する側にとっては、大きな悪意なく発せられた言葉であったとしても、こういった言葉の積み重ねが組織の風土に影響を与え、「安心して発言できる状態」を阻害していきます。

(挿絵は、「心理的安全性」のイメージをChatGPTにイラスト化してもらったものです……いかがでしょうか)
心理的安全性

心理的安全性とコンプライアンスの関係


さて、この「心理的安全性」がコンプライアンスにどう関係するのでしょうか。

コンプライアンスとはよく「法令遵守」と説明されます。2000年前後、コンプライアンスの考え方が企業に導入され始めた頃、そのように表現されていました。法律を遵守して企業活動を行うこと。ただし現在では、この表現はコンプライアンスを狭く捉えた定義と考えるべきでしょう。

現在においては、コンプライアンスは法律を守ることにとどまらず、社会規範、社会的ルール、公共の場でのマナーやモラルを守ることまでがその範囲に含まれると考えられています。社会道徳や社会倫理に従い、公正・公平に業務を行うこと。我々はコンプライアンスという言葉に、そこまでの範囲をイメージします。

ですから、業務上横領や、粉飾決算、商品の偽装、詐欺といった、いかにも「企業としての犯罪」といったものにとどまらず、情報漏えいやハラスメント、飲酒運転、不適切なSNS利用、著作権侵害、サービス残業…コンプライアンスという言葉が意味する範囲は多岐にわたっています。

範囲が明確なものであれば、ルールや罰則を決めたり、マニュアルを作成したり…といった対策を打つことができます。ところが、これだけ範囲が広く、多岐にわたると、すべてにそういった手段で対応することは難しくなります。これが、企業がコンプライアンス違反を防止することの難しさにつながっているのではないでしょうか。

そこで、心理的安全性です。組織側(もしくは管理職側)がなすべきことは、現場で発生している、もしくは発生する可能性のある「都合の悪いできごと」を、いかに迅速に把握できるか。そして、知り得た「都合の悪いできごと」に、いかに迅速に対処できるか。これが重要になってきます。

心理的安全性に欠け、「自分の考えや気持ちを安心して発言できない」組織では、「都合の悪い情報」が報告されず、大事になるまで気付かれないリスクが高まります。
例えば、従業員が小さな問題を上司に報告せずに事態が悪化し、顧客からのクレームがあってはじめて問題を認識する事例などが挙げられます。

心理的安全性があれば、「都合の悪い情報」をいち早く耳に入れ、問題が小さなうちに対処していくことが可能となりますし、それがコンプライアンス違反の可能性を下げることにつながっていくわけです。これが、コンプライアンス研修で、心理的安全性を取り上げさせていただいている理由です。

では、チームの心理的安全性は、どのように形成していけば良いのでしょうか。引き続き、次回のコラムでは「心理的安全性の高め方」についてお伝えしたいと思います。

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伊藤健司
専門家

伊藤健司(研修講師)

オフィスT&C

企業の困りごとを丁寧に引き出し、目的に応じた研修を提案・実施。大手企業での営業・人材育成経験をもとに、社会人基礎、ビジネススキル、営業スキル、マネジメント等ワンストップで対応。わかりやすさに定評あり。

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