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伊藤健司

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伊藤健司(いとうけんじ) / 研修講師

オフィスT&C

コラム

カスタマーハラスメントについて、最近のニュースから

2024年6月13日

テーマ:ハラスメント

コラムカテゴリ:ビジネス

前回のコラムに引き続き、カスタマーハラスメント(カスハラ)について取り上げます。
ここ2~3か月、ニュースや新聞記事で「カスハラ」の文字を見ることが増えた気がします(私がアンテナを立てているせいかもしれませんが)。いくつか気になったニュースをご紹介します。

「カスハラは増えている」と感じる人が多い

ますは、カスハラに関するアンケートの記事です。
6/5、カスハラに関する大規模な調査結果の発表が、たまたま同日に2件ありました。ひとつは「UAゼンセン」が今年1月~3月に実施した「カスタマーハラスメント対策アンケート調査」。これは、流通業やサービス業などの労働組合でつくるUAゼンセンが、所属組合員約3万人を対象として行ったもので、前回2020年から4年ぶりの調査でした。
UAゼンセン「職場におけるカスタマーハラスメントの実態把握へ」

もうひとつは「パーソル総合研究所」が今年2月~3月に実施した「カスタマーハラスメントに関する定量調査」。こちらは顧客折衝のあるサービス職のうち、過去3年以内にカスハラを受けた被害者3,000人を対象としたものです。
パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」

UAゼンセンの調査によると、「直近2年以内に迷惑行為被害にあったことがある」という回答は46.8%と、約半数を占める高い水準でした。「直近2年以内で迷惑行為は増えていると感じるか」には33.7%が「増えている」と回答。「減っている」の6.7%を大きく上回りました。この点は、パーソル総研の調査でも、被害経験者の32.6%が、ここ3年でカスハラ経験が「増加」と回答しており(「減った」は13.8%)同様の傾向が見られます。

どちらの調査においても、「さらに対策を強化すべき」と訴えていますが、企業の対策について聞いたところ、UAゼンセンの調査では「あなたの企業で実施されている対策」に対して「特に対策していない」が42.2%、パーソル総研の調査では「カスハラの予防・解決策は」に対して「実施されていない」が43.0%と、いずれも「対策なし」の比率が最も高くなりました。この項目は、UAゼンセンの前回調査(2020年)と比較しても1.2%の改善にとどまり、依然取り組みに対して腰が重い企業が多数を占めている様子が伺えます。

ちなみに、迷惑行為をした顧客像ですが、UAゼンセンの調査によると、推定年齢は60代が29.4%、50代が27.2%と、中高年が目立つそうです。パーソル総研の調査においても、加害者の属性は「女性」よりも「男性」が多く、年代では「高齢層」ほど多くなるとしており、中高年の男性は(私も含めて)わが身を振り返って襟を正す必要がありそうです。

目先の取引よりも従業員の保護

次のニュースは、4/25の北海道新聞に掲載されていたもの。
東京のとある企業(以下A社)が、「顧客企業によるカスハラが原因で社員が抑うつ状態になったほか、業務を妨害された」として釧路市などの企業(以下B社)を相手取り、1100万円の損害賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こした、というものです。

カスハラというと、「個人客」から受ける被害、というイメージが強いですが、本件は「取引先企業」を訴えたケース、ということで、専門家によると「全国でも珍しい」そうです(道新記事による)。

私も以前、企業に所属していた頃、長くBtoBの営業職でしたので、取引先企業から「理不尽な要求」や「理不尽な扱い」を受けた経験は多々あります。営業職を経験された皆さんであれば、同様に「あるある」と頷いていただけると思います。そんなとき、企業側の姿勢は基本的に「ガマンできるだけガマンする」ことがほとんどでしょう。それは、「顧客重視」「お客様第一」であると同時に、企業にとっては「取引」「売上」が重要でもあるからです。

今回のケースにおいても、A社の道内での売り上げのうち、B社との取引が約16%を占めているそうで、重要顧客であることは間違いありません。通常であれば、提訴まで踏み切ることには覚悟が要ります。
A社曰く、「重要顧客である被告との取引が断絶するとしても、取引の適正と従業員の保護を実現するために提訴した」とのこと。前回コラムのタイトルのように、まさに「カスタマーハラスメントから従業員を守る」ことを最重要と考えたようです。
カスハラ対策の機運が盛り上がる中、この訴訟には注目していきたいです。

全国初のカスハラ条例となるか

最後のニュースは、6/6の北海道新聞に掲載されていたもの。
道議会最大会派の自民党・道民会議が制定を検討している「カスハラ防止条例」の素案が判明した、というものです。自民党・道民会議は、先立って今年2月に、条例制定に向けた検討部会を設置したことを発表していましたが、早ければ2024年度中の条例化を目指しているようです。
カスハラの防止に特化した条例はまだ全国で例がないようで(東京都も現在検討中)、都の進捗次第では、全国初の制定となるかもしれません。

ハラスメントの問題は、単純に「法律ができれば解消される」といったものではありません。しかし、さまざまな労働現場でカスハラに対する意識が高まることは非常に歓迎すべきことです。カスハラが身近な問題であることを理解し、他人事ではなく(自分自身が加害者になる可能性も含めて)意識を高めていきましょう。

弊社では「カスタマーハラスメント対応研修」を承っています。弊社の研修は一方的な講義形式ではなく、皆さんの職場環境で発生する可能性のあるカスタマーハラスメントへの対応について、グループで意見交換を行うなど、多くのワークを取り入れた内容となっています。職場の仲間同士でカスハラに対する意識を共有するだけでも、従業員の皆さんを疲弊から守ることにつながるでしょう。インハウスでの研修(訪問研修)も承りますので、ぜひお問い合わせください。

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