まち木造の可能性
先日、私が所属している真美文藝の詩の研修旅行で金沢を訪れました。
文学を学ぶ旅でしたが
建築設計に関わる者として、どうしても訪れたかった場所がありました。
谷口吉郎・谷口吉生記念 金沢建築館です。
建築を見ることを目的に訪れましたが
印象に残ったのは建物そのものだけではありませんでした。
展示のなかで知った「金沢診断」という言葉です。
その土地の歴史や風景、暮らし、水や緑のあり方まで読み取りながら
その場所にふさわしい建築や景観を考えていく視点。
建物を単体で考えるのではなく
まち全体との関係のなかで建築を考えるという考え方です。
これは住まいづくりにも、とても大切な視点だと思います。
家づくりというと
どうしても間取りや広さ、設備といった「建物の中」に意識が向きがちです。
もちろんそれらは大切です。
けれど本当に心地よい暮らしは
建物の中だけで完結するものではありません。
家の前の道の雰囲気。
窓から見える景色。
光の入り方。
風の通り道。
近くにある緑や水の気配。
そうした“建物の外にある環境”も、暮らしの質を大きく左右します。
今回の金沢では、そのことを改めて感じました。
たとえば、まちのなかを静かに流れる用水。
観光のための景観ではなく
今も暮らしのすぐそばに水があり
生活の一部として自然に息づいています。
犀川沿いの古い桜並木にも
このまちが長い時間をかけて育ててきた風景の豊かさを感じました。
さらに印象的だったのは、朝の兼六園です。
朝は無料開放され、地元の方が散歩をされていました。
日本を代表する庭園でありながら
観光のためだけの場所ではなく
人の日常のなかに自然に存在している。
守られているだけではなく、
暮らしのなかで使われている景色です。
住まいづくりも同じだと思います。
家をつくることは、建物をつくることではなく、
その場所でどんな時間を過ごすかを考えること。
間取りだけを考えるのではなく、その家がまちとどうつながるかを見ること。
そうした視点があると、住まいづくりはもっと豊かになります。
今回、詩の研修旅行として訪れた金沢でしたが、
文学の視点と建築の視点を行き来しながら、
「まちを読む」ということをあらためて考える時間になりました。
詩集『まちをまくらに』
この旅の少し前に、詩集 『まちをまくらに』 をつくりました。
建築を学び、旅をし、まちを歩くなかで感じた
「ことば」と「かたち」の風景をまとめた一冊です。
住まいづくりもまた、建物だけを見るのではなく、まちとの関係のなかで考えるもの。
そんな視点に興味のある方に、手に取っていただけたら嬉しいです。


