リノベーション➂~景色のよい2階で暮らしたい
マンションに調湿する素材を取り入れる
夏、無垢の木の床を素足で歩くと、
さらりとした感触に気づきます。
一方、化粧シートで仕上げた床では、
足の裏にべたつきを感じることがあります。
同じ室温でも、使われている素材で、
心地よさは変わるのでしょうか。
木がある部屋、木がない部屋
今夏、改装した友人の家を
訪ねました。
自然素材の木を張った部屋と、
そうでない部屋がありました。
同じ家の中にあるのに、
空気が少し違うそうです。
温度の違いというより、
肌に触れる空気の質の違い。
木を多く使っている仕事場で、
私はいつも過ごしています。
今夏、コンクリート造の
ワンルームで過ごしました。
温度だけを見れば、それほど
高くなかったのかもしれません。
けれど、肌に湿気がまとわりつく
ようなべたつきを感じました。
暑さだけではない、
気持ち悪さがありました。
同じ温度でも、暑さの感じ方は
同じではありません。
室内に使われている素材も、
心地よさに関わるのでしょうか。
床と天井に木を使った住まい。
木は室内の空気や感覚にも関わります。
木が水分を受け取る仕組み
木には、目には見えない
小さな孔がたくさんあります。
湿気の多いときには、
空気中の水分を受け取ります。
手や足で触れたときにも、
水分を受け取り、さらりと感じます。
木の表面を厚い塗膜で覆うと、
この働きは小さくなります。
木の調湿性を活かすには、
表面の仕上げ方も大切です。
プラスチックや化粧シートは、
水分を表面で止めます。
汚れを拭き取りやすい一方で、
湿気をほとんど受け取りません。
木は、水を完全に遠ざける
材料ではありません。
水を受け取りながら、
水と付き合っている材料です。
家に使う木には乾燥が必要
山で育っていた木は、
幹に多くの水を含んでいます。
家の材料として使うためには、
伐った木を適切に乾燥させます。
乾燥が十分でないまま使うと、
縮みや反り、割れが生じます。
けれど、乾燥させることは、
木から水をなくすことではありません。
家に使える状態へ整え、
水と穏やかに付き合えるようにします。
削った跡と割れを残す一枚の木。
湿気を受け取りながら動く素材です。
除湿と調湿の違い
乾燥した木も、室内の湿度に応じて
水分を吸ったり、放したりします。
湿気を外へ取り除くことを、
「除湿」といいます。
湿気が多いときに受け取り、
乾いたときに放すのが「調湿」です。
木は、除湿機ではありません。
湿気を外へ排出することはできません。
室内の湿度の変化を
やわらげてくれる材料です。
窓を開けることや換気、
除湿機やエアコンも必要です。
そのうえで、床や壁や天井が
湿気を受け取れたらどうでしょう。
室内の空気の感じ方も、
少し変わるかもしれません。
マンションには調湿素材が少ない
マンションの室内は、
工業製品だけで仕上げることが多く、
湿気を受け取れる素材が
少ないこともあります。
だからこそ、無垢の床板や
木の壁を取り入れる意味があります。
木目や色柄だけではないもの
木を選ぶとき、色や木目を見て
決めることが多いかもしれません。
けれど、木がつくるものは、
目に見える表情だけではありません。
触れたときの、さらりとした感覚。
空気の変化をやわらげる働き。
木目の奥には、水と育った時間と
今も水と付き合う力があります。
木は、色柄として張るだけの
仕上げ材ではありません。
人の身体と室内の空気に
関わり続ける材料です。
自然素材と工業製品を使い分ける
木目は一本ずつ違い、湿度によって
伸びたり縮んだりもします。
均一で動かず、汚れにくい
工業製品より扱いにくく見えます。
施工しやすく、掃除しやすく、
手入れに時間がかからないこと。
それらが住まいに
求められるようになりました。
その変化の中で木を使う人が減り、
木を扱う工場も減ってきました。
今の暮らしと木は、本当に
合わなくなったのでしょうか。
木の動きや手触りを受け止めることを
忘れてきただけなのでしょうか。
家は、完成した商品である前に、
人が日々を過ごす場所です。
山や職人、まちの風景とつながる
暮らしの文化でもあります。
家のすべてを自然素材に
戻す必要はありません。
水に強く、寸法が安定し、
手入れしやすい工業製品もあります。
性能を安定させたい場所では、
工業製品の力を借りる。
人の手や足が触れる場所や、
空気や湿度に関わる場所には、
木や自然素材を取り入れる。
それぞれのよいところを見ながら、
使う場所を選べばよいと思います。
木と白い壁を組み合わせた室内。
使える場所から木を取り入れています。
マンションでも木を使える
マンションでも、
床を無垢材にする。
壁や天井の一部に木を張る。
木の家具を置いてみる。
木を使える場所は、
まだたくさんあります。
無垢の床板を使うときには、
管理規約や遮音性能を確認します。
下地の状態や表面の仕上げも、
暮らしに合わせて選びます。
まずは夏の日に、
木へ素足や手のひらで
触れてみてください。
そのさらりとした感触から、
木のある暮らしを考えることが
始まるかもしれません。


