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PD0~∞?どこで削っても関係ない乱視

豊福祐史

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テーマ:知っておくべきレンズの話

PD(頂点間距離)がない、つまり横方向にレンズの中心がないメガネレンズがあります。

AX(軸度)180°の度数がゼロの単性乱視のメガネレンズがそれになりますが、
『このメガネはPDが合っていないと眼科(他店)で言われた』
とクレームが極稀に入ることがあります。

このレンズの場合は、もちろん、加工ミスなどではなく、単純に焦線のせいでPDがないだけです。

基本的なことなので、正直、眼科医・視能訓練士・眼鏡作製技能士など、
資格を持っている方が言っているとは思えないので、
単純に勘違いしているか、まだ理解されていない方なのかなと思われます。

という自分自身も、子どもの頃、単性乱視をレンズメーターで見ても、
マークが動かないから不思議に思ったことがあります。
その頃は、知識とか何もなかったので。

今回は、眼科や他店から、正確に作られたメガネが
『加工ミスしている』と、誤解されやすい単性乱視について。

※眼に関する仕事をしていない方には、少し難しい話になります。

乱視があるレンズと、ないレンズの違い

乱視がないレンズはメガネレンズの中心を直行するように、
縦と横に線を引いた場合、縦でも横でも曲率半径は同じになります。
つまり、縦と横の度数が同じということです(細かい設計などは無視してます)。

例を挙げると、縦軸:C-1.00、横軸:C-1.00の場合、
S-1.00と表記されます。
これを形にすると球面レンズとなります。

球面レンズに太陽光を通すと、一点に光が集中して焦点を作ります
(マイナスレンズの場合は、理論上、手前に)。
これはスノーボールなどで、収斂火災が発生する理由でもあります。

正乱視の場合、この直行する2本線の曲率半径がそれぞれ違います。
つまり、縦と横で度数が違うということです。

例を挙げると、縦軸:C-1.00、横軸:C-3.00の場合
S-1.00 C-2.00となります(軸度AXは度外視)
これを形にすると円柱レンズとなります。

円柱レンズに太陽光を通すと、焦線となります。
つまり焦点がないこととなります(焦点の代わりに焦線)。

度数0の場合は、平なガラスと同じなので、焦点も焦線もできません。

単性乱視と、PDが定まらない単性乱視

ある方向の度数がないものが単性乱視です。

例えば、S0.00 C-1.00 AX180などが単性乱視となります。
これは、180°方向には度数が存在しないことを表します。

その中で、PDが定まらないものは、横軸方向に度数がない
近視性単性直乱視(S0.00 C-1.00 AX180など)、
遠視性単性倒乱視(S+1.00 C-1.00 AX90など)
があります。

レンズメーターと、レンズの中心

レンズメーターとは、レンズの度数を測定する機器ですが、
レンズの光学中心を確認し、印点を打つ機器でもあるため、レンズ加工に必須となります。

レンズの光学中心は、幾何学中心(見た目のど真ん中)からずれていることもあるため、
レンズメーターのコロナマークを合わせて、正確に印点を打つ必要があります。

このレンズメーターで単性乱視のレンズを確認した場合、
レンズを端から端まで移動させても、軸度方向にはコロナマークが動きません。

では、近視性単性直乱視や遠視性単性倒乱視だとどうなるかというと、
180度方向に度数が変化しないため、コロナマークも動かない。

PDというものが、瞳孔(右)と瞳孔(左)の距離なので、横軸方向の距離となります。

横軸方向に度数がないのであれば、縦軸さえ合っていれば、横軸はレンズ上なら、どこでも良い。
PD(瞳孔間距離)は、表記上0~∞のどこでも問題ないということになります。

このメガネで、PDが合っていないとクレームがあったらどうするのか?

これが他店からの指摘であれば、お客様に説明するだけですが、
専門知識を持たれてるわけでないため、わかりやすく説明するのは、結構大変です。
なので、焦点がなく、焦線しかないことを説明した上で、オートレンズメーターを使って、
レンズを真横に動かしても中心(コロナマーク)が動かないことを見てもらいます。

眼科からの指摘であれば、眼科医へ連絡し、説明します。
基本的なことなので、眼科医の先生は即座に理解していただけるため、
指摘した方にはそうなる理由を教えておくと言ってくださることが多いです。

まとめ

・乱視にはある方向にだけ度数がない単性乱視がある
・単性乱視のうち、近視性単性直乱視と遠視性単性倒乱視はPDが測定できない
・PDが測定できないということは、レンズメーターに設置したレンズの位置でPDが変化する
・PDが変化するため、それを理解していない方が見てしまうと、加工ミスと勘違いしてしまう

極稀にしか発生しないクレームですが、眼に関する仕事をしている人には当たり前の話です。
ただ、それ以外の人には、こんな感じで結構難しい話になるので、
正直、こんなクレームは、どう説明しようかなと、いつも頭を悩ませる問題でもあります。

次回は、『度数が変わったから前のメガネはもういらない?』

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豊福祐史
専門家

豊福祐史(眼鏡小売店)

株式会社とらや眼鏡店 メガネのとらやG-room

顧客の要望や好み、ライフスタイルに合った納得の眼鏡をお勧めしています。仕入れでは、フレームのデザインはもちろん、細かい点までもチェック。視力測定や加工などは、国家資格の1級眼鏡作製技能士が対応します。

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