大黒柱(精神的支柱)を欠いた現代家庭に求められる「生命の教育」

中光雅紀

中光雅紀

テーマ:解決のための視点

目 次

1.生きていく意味に気づかせていく

2.生かされ支えられている命への目覚めが慢心を防ぐ

3.変化へのためらいが挑戦を阻む

4.共依存が招く長期化

5.自己を支える拠りどころを喪失している現代家庭

生きていく意味に気づかせていく

家庭は生命を産み、育て、見送る場(フィールド)です。

家族が築き上げていく生命の場です。

今その「家庭」が、生命のはたらきを妨げてしまう場になってきているようです。



生命には目的があります。

独自のはたたらきがあるのです。

他者との関わりという社会の場でこそ活かされるはたらきです。

ひきこもる若者たちは、自らのはたらきを発揮することもできず、自身の価値を実感する

こともかないません。

自己の存在価値を見失った者は、さらに自分をおとしめていきます。

周囲が自分に期待していないと信じているからです。

生かされ支えられている命への目覚めが慢心を防ぐ

心身医学の分野で、癌の自然退縮の研究がなされています。

末期癌の宣告を受けた患者が、心理的な変化によってその癌が自然に消えていくというのです。

その心理的変化、転換というのは、「大いなる生命、大自然と無数の他者からの支えによって

生かされている自己に目覚め、それらとの結びに感謝し、今を大切に生きる」

というものです。

この目覚めによって、内なる生命エネルギーが最高度に高められるのです。



生命の場である「家庭」のエネルギーを高めるためにも、この目覚めは必要です。

地球規模の環境問題は、自然をコントロールしようとした人間の傲慢さの結果です。

大自然は共生していくものです。

子どもたちもまた自然の子です。

親のエゴからコントロールしようとすれば、子どもたちは歪み、本来の自分を見失い、

はたらきができなくなってしまいます。

傲慢さは、「生かされている」という感謝の気持ちが無いところから発生します。

謙虚さや他者への敬いを喪失させ、相手を無意識のうちにコントロールしようとしてしまう

のです。



家庭教育は「生命の教育」です。

ひきこもりをそのままにしてしまえば、子どもたちの生まれてきた意味すら失いかねません。

今こそ私たち親たちの目覚めが必要な時なのです!

変化へのためらいが挑戦を阻む

支援活動をしている中でよく感じられるのが、当事者やその家族が「変化」に対して順応する

ことが、なかなかできないということです。

だからこそ、長期化してしまっているとも言えますが、その頑さは、「変化を起こさずにして、

変化(問題解決)を望む」といった表現で言い表せるような、全く矛盾した状態です。

現状を改善するためであっても、そのために何か新たな事に取り組むことまではしたくない

という心境です。

変化を起こすこともためらわれるのですが、そのことで望まざる結果も起こりかねないことが

怖いのです。

傷つくことへの過度な怯えです。

共依存が招く長期化

支援者の介入により、それまでの家庭環境に変化が起き出すと、途端に改善の動きを阻む

親御さんがいます。あたかも問題解決を望まない動きを始めるのです。

また、当事者へのアプローチを促すとそれを拒む親御さんも少なくありません。

慣れていないのです。



それほどかねてのコミュニケーションが分断されてしまっているのですが、それよりも

一番大きな理由は、親としてわが子をコントロールできない自身の無力さへの悲嘆を

味わいたくないからです。



不登校・ひきこもり・ニートを抱える家庭の問題は、わが子の世話をやくことで、親としての

アイデンティティを維持でき、「頼られている」という精神的な充足感を得られる。

これが親にとっては甘い蜜となってしまうことです。

当事者はというと、世話を受けることで、それまで味わうことが少なかった「愛されている」

といった実感を得られるという利点があり、また、世話をやかせるということで親を

コントロールできる満足感が得られます。

これは、当事者にはこれまで、少なからず親からコントロールされてきたという思いがあり、

その裏返しです。

親子で共に依存しあい抜き差しならぬ間柄となり、互いが相手が自分から離れていく

(自立していく)ことを許さなくなるのです。

「共依存」の呪縛です。

自己を支える拠りどころを喪失している現代家庭

これは、親たちが拠りどころを失っているからです。

バックボーン(精神的支柱)を持てていないのです。

一貫した判断基準、価値基準を持ち合わせていないために、変化に対して臨機応変に対応

できる柔軟性に欠けています。



心療内科医の星野仁彦氏は著書『機能不全家族』(アートヴィレッジ)の中で、日本人特有の

心理「直視恐怖」は、「日本人に無神論者が多く、概して確固とした宗教をもたないことも

関連しているのかもしれない」と述べていますが、要は、生き方の哲学をもっていないことが、

家族成長の発達過程における様ざまな危機に対処できない状況を導いてしまっているのです。



マンションや和室の無い家屋の増加にともない、大黒柱というものがあまり見られなくなって

きました。

一家の大黒柱としての父親の存在感も希薄になってきている昨今、家庭に必要なものは、

精神的大黒柱です。家族の安全を保証する大屋根を支える心柱です。

精神的大黒柱を持たない家庭は、安定や安心を欠き、変化を怖れ、現状がどうあれそこに

固執するといった生き方しか選択できなくなってしまうのです。



生命には目的があり、それぞれの役割があることを実感できず、生きていく意味を見い出せずに

いるのが「ひきこもり現象」です。

今「生命の教育」が最優先で求められているのです。

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中光雅紀
専門家

中光雅紀(不登校・ひきこもり支援者(家族心理教育コンサルタント))

NPO法人地球家族エコロジー協会

トラウマの視点からひきこもりの原因を見える化していくアプローチを行い、そのもがきのプロセスから人間としての成長を果たし、ひきこもりから脱却。新しい自分に生まれ変わるような変化をサポートしていきます。

中光雅紀プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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