引きこもりへの全く見当違いの対応が、ますます長期化を招く
目 次
1.顔の見えない父親
2.子育ては母親だけの仕事?
3.父親の役割とは?
4.自立できない若者の背景にある父親の存在感
顔の見えない父親
講演、講座、相談会、個別相談。こういった会場に姿を見せられるのは、ほとんどが母親です。
もちろん平日や時間の関係で参加しようにもできないといった場合もあります。
しかし、私共が継続的な支援をしている場合でも、最初から最後まで結局は一度も顔を見せら
れないといった父親も少なくありません。
引きこもり状態から、復学、進学、就職を果たせた後にもです。
最近は「おやじの会」といった催しも随所で開催されており、父親の子育て参加も強調されて
きつつあるようです。熟年離婚なるものが流行り、その対策という向きもあるようですが、
いずれにせよ、父親、亭主族を家庭に向けさせる動きが強まっているようです。
子育ては母親だけの仕事?
私もかねてより、父親の家庭内での役割をお話ししますが、一般的に養育していることで、
任務を果たしているかのように感じます。
もう一つの「教育」を忘れてはいないでしょうか。
「子育ては母親の仕事」と勘違いされている父親もまだまだ多いようです。
母親と同じ時間、子どもたちと関わってほしいとは申しません。
ただ、父親でなければという部分があるのは確かなのです。
中には、共働きで、母親も同じだけフルで働いているにも関わらず、家事、子育てはほとんど
しないという父親もいます。
そして「俺は家族のために働いているんだ。家にいる時ぐらいゆっくりさせてくれぇ」です。
何かおかしくないでしょうか?
最近は単身赴任で、家を留守にしている父親のケースもありますが、「居ないので子どもに
影響与えるもないでしょう。子育ては家内に預けていたわけですから。母親の甘やかしですよ」
という方もいます。
居るから、接しているから子どもに影響を与える。いないから与えないではないのです。
居ないことが大きく影響を与えているんです。
本来親子は一緒に生活しているものです。
それが何らかの理由で共に生活できないでいれば、子どもにとって、親が不在であることが
影響を与えないはずは無いことは分かってほしいです。
いなくても何の影響も家族に与えない存在でいたとしたら、その父親の存在意義って
何でしょう?
父親の役割とは?
男子の不登校や男性のひきこもり、ニートの場合、本人達からよく聞かれるのは父親のことです。
その父親とのコミュニケーションが十分でなく、父親から与えられるべきものが与えられないで
いたことがほとんどです。
私共が子どもとのコミュニケーションを促しても、「何と声をかけたらいいのかが分からない。
どう接すればいいのかが分からない」といった声を父親からよく聞きます。
わが子との人間関係を結べなくなっているのです。
わが子の暮らす環境を安全にするのは両親のつとめです。安全であればこそ安心していられます。
父親は羅針盤として生きる方向性を示し、挫けてもいつでも帰れる港が母親の役割と思います。
そういう意味でも、最も身近で子どもに安全を与えてあげられるのは母親ですが、その母親を
安心させてあげられるのは父親なのです。
母親に緊張と不安を与えてしまう父親では、子育ての責任を母親に転嫁できる立場にはありま
せん。
自立できない若者の背景にある父親の存在感
ニート、引きこもり問題では、父親が羅針盤の役目を果たし得ていないところが目立ちます。
「社会の中で働くというのは」「仕事とは」「自立とは」「生きがいのある暮らしとは」
というようなことを全くわが子に示すことができていないのです。
「誰のおかげで食べていられると思っているんだ!」という態度でいれば、「はい、お父さん
のおかげで食べていられますので、これからもよろしく」とばかりに、ひきこもりを続けるで
しょう。
実際、「働かなくても食べていけてるので、「働かないと食っていけないだろう!」と言われ
てもピンときません」と言った青年もいます。
父親の役割は、食料の提供ばかりではありませんよね。ましてやATMではありません。
引きこもり者たちは、社会へ出ていく覚悟ができないでいます。
怯えがあり、荒波の中へ船を出す勇気をもてないでいるのです。
ですから母港にいつまでも停泊しています。
父親は、そんな彼らにとって、社会(人)の象徴でもあるのです。
父親の姿から、社会という世界をうかがい、社会の中で生きていく喜びや厳しさを感じとって
いきます。また父親が人生に対して能動的な生き方か受動的かで、自身の将来を積極的に創って
いこうという姿勢になるか否かが変わってきます。
自力で食べていけるようになるための指針(手本)を示す重要な役割が、父親にはあるのです。
よく言われるように、釣った魚ばかりを与えるのではなく、魚の釣り方を教えてあげることが
より重要だということです。
また、家庭運営の舵取り役としては、家庭の全体像を捉え、家族間の関係性の調整にも気を
配っていく必要があるでしょう。
母子関係は、父親以上に密着しやすいものです。
だからこそ、その間に分け入ってほどよいバランスを保てるようにするのが父親なのですが、
「居れども、此処に在らず」といった状況になってしまっている家庭が多いように感じます。
経営者が会社の色(雰囲気)をつくるように、家庭の雰囲気をつくるのは父親の影響が大きいもの
です。家庭の雰囲気に父親の存在感が現れます。
家族が安心できる安定した空気感をつくっていきましょう。