ファーストペンギン精神

シリーズVol.18をお届けします。
今回のテーマは——
言葉にできないけれど、伝えたい。
もがきの中にある力と、心の呪縛をほどく関わりについて
心が生み出した呪縛をほどく関わり
昨日今日と、線状降水帯による水害が各地を襲い、
日常が一瞬で揺らぐような時間が続いていました。
そんな現実の前で、
「言葉にできないけれど、伝えたい」というテーマは、
どこか無力で、空々しくさえ感じられます。
語ることの限界に立ち尽くす
産業カウンセラーは、災害の現場に足を運ぶこともある仕事のひとつ。
とはいっても、何かできるわけでもなく。
あなたに私の何がわかる?
偽善者ぶらないでよ!
話すことで元に戻るならいくらでも話すわよ。
——そんな言葉が返ってくることを、私は知っています。
こうやってコラムで語ることすら、
時に蚊帳の外の存在と受け止められやすい。
こうやって文字を連ねていても陳腐にしか感じず手が止まる。
その思考停止の危うさを、私は体感しています。
それでも、心の呪縛を解くことで動きに変化が生まれることも知っています。
だからこそ、何とかできないだろうかという衝動が湧いてくるのです。
できることを探して行動する
目の前にいる人が困っているのに見て見ぬふりはできません。
私は困っていたら助けてもらいたい。
だからこそ、私にできることを見つけて行動するのです。
ですが、その衝動は時として傲慢さを生み出すことにもなる。
だからこそ、セーブしながら、
私は、目の前の人の思考が動き出す瞬間を待つ。
その人の混沌とした心が向かう先に、
ほんの少しの光が見えるように、
気づきにつながる関わりをいつも探しています。
語れないことの中にある、力の芽
言葉が出てこない
のどまで出かかっているけど言葉にできない
その言葉の奥には、
まだ言葉になっていないけれど、
確かに存在している気持ちがある。
それは、誰かに届いてほしいという願いであり、
伝えることへの小さな覚悟の芽でもあります。
語ることができなかったとしても、
語ろうとしたその瞬間に、
その人の中にある“伝えたい”が、静かに動き出しているのです。
心の呪縛をほどくという関わり方
私は、整える人ではありません。
導く人でも、寄り添う人でもありません。
ただ、その人の中にある“認知の縛り”がほどけて、
自分の力で前に進めるようになる瞬間を共に創造することができる。
過去や出来事に縋り付くのでは、自分の時が止まります。
だからこそ、現実を明らかに認め、
前進する力が沸き上がるような、
そんな関わり方を常に目指しています。
それには、時間と機会を待つ洞察力と忍耐力が必要です。
言葉にならない時間の中で、
その人自身が、自分の言葉を見つけていくための、
小さなきっかけを手渡すようなものだからです。
まとめ:語れないことの中にある、願いと決断
言葉にできない。
のどまで出かかっているのに言語化できない。
語ることの限界を知りながら、
それでも、何とかしたいという衝動をセーブしながら、
私は、心の呪縛がほどける瞬間に関わるのは、自分を試されていることでもあります。
その人が、自分の言葉で、自分の力で、
前に進む決断をできるように。
そのための“気づき”につながる関わりを、
“その人らしさ”と合わせて、私は常に探し続けています。
次回は…
「決断を語った人に、どう寄り添うか」
ということを書いていきます、
そろそろ始まる人事異動の準備。
通達と共に、これまで鬱々としていた「願望」が首をもたげます。
そんなところで、話を聞いて「どうしたら良い??」と困惑する相談がボチボチ始まるからです。



