リラックスの達人? 無理なく心の休息を手に入れる
目次
シリーズVol.15をお届けします。
今回のテーマは…。
声にならない違和感を見逃さない。
——微細なサインに寄り添う支援のあり方です。
産業カウンセリングの現場では、
「言葉にされていないけれど、何かが滲んでいる」
そんな場面にしばしば出会います。
表情の揺れ、呼吸の浅さ、言葉の選び方の変化…。
それらは、本人がまだ気づいていない違和感のサイン。
今回は、声にならなかった感覚にどう寄り添うか、
産業カウンセラーとしての姿勢と感性について書きます。
微細だけどサインを見逃さない
言葉にならない違和感に気づくのは経験がものを言う。
見習い期間はもとより産業カウンセラーなりたての頃は、この繊細なサインが出ていても見落としがち。
思い返せば、104時間にわたる体験学習開始時期など、さっぱりわかりませんでした。
最終近くごろに何とか感覚を掴めたくらいに、厳しかった…。
それは、実践訓練の評価を気にするあまり、
相手に心を寄せることの意味を頭でわかっていても体得していないからです。
言葉はなかった。
でも、何かが変わった気がした。
「大丈夫です」と言ったその人の声が、少しだけ硬かった。
「特に問題ないです」と語る表情が、どこか遠くを見ていた。
「いつも通りです」と返したあと、ほんの少し沈黙が長く続いた。
会話をしていても、言葉には何も問題がない。
だけど、その場の空気に、わずかな違和感が漂っていた。
産業カウンセリングの場では、こうした“声にならないサイン”に気づけるかどうかが、支援の質を左右します。
違和感は、本人の中でもまだ言葉になっていない
人は、自分の不調や迷いにすぐ気づけるわけではありません。
むしろ、違和感は「なんとなく変だな」「うまく言えないけど…」という形で、
言葉になる前の感覚として漂っていることが多いのです。
- いつもより言葉が少ない
- 返事が早すぎる、または遅すぎる
- 話題が変わるタイミングに、少しだけ躊躇がある
こうした微細な変化は、本人がまだ整理できていない感情の表れかもしれません。
産業カウンセラーは、その“言葉にならない揺れ”に、静かに耳を澄ませる必要があります。
見逃されがちなサインに、どう寄り添うか
違和感は、はっきりした症状や言葉ではなく、
場の中に滲む“気配”として現れることが多いもの。
「何かあった?」とすぐに訊くのではなく、
「今日は少し静かですね」と空気を受け止めるように声をかける
「大丈夫?」と詰めるのではなく、
「無理せずいられてますか」と余白を持って問いかける
支援とは、気づいたことをすぐに言葉にするのではなく、
その人が自分で気づけるように、場を整えることでもあるのです。
とはいえ、傾聴や心理面について学ぶまで
「大丈夫?」という言葉が “詰める行為” だとは1ミリも思ってもいなくて。
「大変ですね」と言う言葉が ”突き放した” と受け取りやすいとは考えもしなくて。
学び始めの頃は、考えも及ばない自己中な私と向き合いました。
違和感に気づける関係性が、安心の土台になる
「何か変だな」と感じたとき、
それを言葉にせずとも、そっと見守ってくれる人がいるだけで、安心が生まれることがあります。
- 話す準備が整うまで、待ってくれる
- 話さなくても、気にかけてくれていると感じられる
- 話したくなったときに、受け止めてくれる場がある
産業カウンセリングでは、違和感を“問題”として扱うのではなく、
その人の感覚が動き始めたサインとして尊重することを大切にしています。
違和感に気づける関係性は、
その人が自分の感情に向き合える土台を育ててくれるのです。
まとめ:声にならない違和感に意識をを向ける支援
言葉にならなかった感覚。
説明されなかった不調。
本人もまだ気づいていない揺らぎ。
それらに気づける支援者のまなざしは、
「話す前の安心」をつくる力を持っています。
支援とは、語られたことに応じるだけでなく、
語られなかったことに耳を澄ませること。
その姿勢が、働く人の自己理解と、関係性の深まりを支えていくようです。
次回は…
Vol.16|「気づいてくれていた」が支えになる。
——見守ることの力と、沈黙のケアについてへ
言葉をかけられなかったけれど、気づいてくれていた。
その記憶が、働く人の心を支えることがあります。
“見守る”というケアのかたちについて書きます。




