日本の商業放送とPRの誕生:広告が作った"みんなの時間"

鎌田千穂

鎌田千穂

テーマ:激変する時代こそ聡明である秘訣

poosan
ある日、テレビから流れてきたCMソングに、なぜか口ずさんでしまう。
ラジオで流れる企業のメッセージに、ふと耳を傾ける。
そんな経験、誰でもありますよね?

今日はそんな仕掛けと仕組みつくりのお話を。

そもそも日本には「商業放送」がなかった時代がありました。

そこから、企業の広告を通じてメディアと社会がつながることの重要性に気づいた人々が、この新しい仕組みを作っています。
その流れの中心にいたのが、電通4代目社長の福岡県北九州市小倉生まれの吉田秀雄。

広告の可能性を信じ、「情報を売る」から「企業と消費者の関係を作る」へと広告の役割を変えていきました。

吉田秀雄氏のことは前回書いていた記事をご参考くださいませ。
【北九州市小倉】吉田秀雄:広告界の革命児


商業放送の誕生:企業と視聴者が出会う場所

1940年代、日本にはNHKの公共放送しかありませんでした。
ニュース、ラジオ番組、歌謡曲…。

すべてNHKの手によって届けられ、視聴者は受信料を払って楽しむ。
つまり、企業がテレビやラジオで広告を流すチャンスはゼロ。

ですが、戦後の日本は「復興&成長」の時代。
企業は商品を知ってもらう場を求め、視聴者はより多様な番組を求めました。

そんな中、1951年に日本初の商業放送局が誕生します。
企業の広告収入によって運営される仕組みが導入され、視聴者は無料で番組を楽しめるようになったのです。

この変革は大きな意味を持ちました。

「音声+映像」の広告が主流に

ラジオからテレビへと発展し、映像を駆使した広告が可能に。

スポンサー付き番組が登場

企業が番組を提供し、その中で広告を組み込むスタイルが一般化。

視聴者との距離が縮まる

商品だけでなく、企業のブランドイメージも形成される。

この流れを見据え、広告業界は「戦略としての広告」を根付かせようと動きました。
「売るための広告」から「企業の価値を伝える広告」へと、意識を変えていったのです。

PRの登場:企業の語りかけを広げる

商業放送が始まり、企業は広告を通じて消費者に語りかけることができるようになりました。
ですが、それだけでは十分ではありません。

企業には「何を売るか」だけではなく「どう社会と関わるのか」という問いがある。
そこに登場したのがPR(パブリック・リレーションズ)です。

PRの本格的な導入は1947年。
当時、GHQが地方自治体に「PRオフィス」を設置するよう指導したことをきっかけに、企業もPRの概念を取り入れ始めました。

企業は「ただ商品を売る」だけでなく、社会に貢献し、人々と信頼関係を築く必要がある。
吉田秀雄は広告業界をけん引しながら、この点を強く意識し、「PRを活用した企業ブランディング」という考え方を広めました。

企業がPRを活用する場面には、例えばこんなものがあります。

  • 企業の社会貢献活動の発信(環境対策・CSR活動など)
  • ブランドストーリーの構築(企業の歴史や理念を語る)
  • 危機管理・リスク対応(企業の不祥事や問題への対応の透明性確保)


広告が商品を伝えるものなら、PRは企業の価値を形作るもの。広告とPRが協力することで、「企業はただの売り手ではなく、社会にとって意味のある存在」として認識されるようになったのです。

広告とPRが作る未来

今では、テレビCMを見て気になったブランドのSNSをチェックし、企業の社会的取り組みを知ることができます。

広告が商品を伝え、PRが企業の想いを伝える。
この二つがあることで、私たちは「単なる消費者」ではなく、「企業の考えに共感できる参加者」になっているのです。

吉田秀雄から浸透した考え方

今も昔も浸透した考え方は不変。
それは「広告は情報を売るのではなく、企業と社会の関係を作るものだ」というもの。
その精神は、今もメディアや広告戦略の中に形だけは息づいてはいます。

ですが、その浸透された考え方も担い手の受け止め方や解釈次第。
底の浅いものから深いものと様々に移り変わるものです。
どんなに素晴らしい考え方であっても担い手により解釈は徐々に歪んでしまうもの。

どんな理想を掲げても人が捉え方を歪めてゆく

結局は、オールドメディアと呼ばれる新聞・テレビ・ニュースから、ニューメディアと呼ばれるデジタル技術を利用した情報伝達媒体に変化しようとも、人間がかかわることに変わりありません。

広告とPRが結びつくことで、私たちの生活はどう変わるのか?
企業はどんなメッセージを発信すべきなのか?
この問いは、商業放送が始まった日から、ずっと私たちと共にあるのです。

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鎌田千穂
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鎌田千穂(産業カウンセラー)

Chi-ho’s studio

組織課題を広い視野で捉え、主体性を持った思考と行動力、公私の均衡を図る自律型人材育成を行うこと。分析・統計による業務改善の解決策を示し、個人の悩みを解き放ち、企業の繁栄に繋げることが専門です。

鎌田千穂プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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