「今、ここ」を全力で生きる – 芭蕉の句に隠された人生のヒント

毎日の生活の中で、何が私たちを動かすのでしょうか?
今回のお話は、7歳から三井田川炭坑で働き始めた山本作兵衛氏(1892~1984)の生涯。
過酷な労働環境でも山本作兵衛氏は絵を描く夢を追い続け、その記録画はユネスコ「世界の記憶」に登録されました。
この記事では、山本作兵衛氏の生涯から学ぶ行動の力について探ります。
山本作兵衛氏の絵と共に、あなたも新たな気づきを得られますように。
炭坑労働者の夢を追う
1892年に生まれた山本作兵衛氏は福岡県田川出身です。
7歳の頃から父親と共に炭坑で働き始め、1955年の位登(いとう)炭鉱の閉山まで半世紀以上を過ごした山本作兵衛氏。
その生活は過酷なものでした。
ですが、幼少期からの絵を描く夢を捨てませんでした。
あなたは想像ができますか?
毎日泥まみれになりながら穴の中で働き、どれだけの情熱を持って生きることができるか。
それも絵を描きたくても思うように描けない中で、心は労働に支配されず、自分を保つことができるか。
記憶を描く:記録画の誕生
65歳で宿直警備員となった山本作兵衛氏は、ようやく自分の時間を持ち、自身の記憶を絵に描き始めました。
生活が苦しい中でも、自分の夢を追い続けたのです。
山本作兵衛氏は「自分の描く絵は芸術でなく記録だ」と語り、真実を描くことに徹しました。
その絵には、炭坑労働者たちの日常が生き生きと描かれており、一枚一枚が山本作兵衛氏らの生き方を伝えています。
世界が認めた遺産、ユネスコ「世界の記憶」
山本作兵衛氏が描く絵に対する想いは真実を描くこと。
自分の描く絵は芸術でなく記録だ。
だから少しの絵空事もあってはならぬ。
その姿勢に徹した行動を、後世に伝えることを決意。
ですが、最初から世の中にどのような影響を与える事ができるかわかって始めていたか?
もしも、未来が予測できて答えがわかっていたのなら、どれだけの誇りを感じることがでしょうか?
そんなことは全くわからないのが人生。
山本作兵衛氏の緻密で正確な炭坑記録画は、2011年にユネスコ「世界の記憶(世界記憶遺産)」に登録されました。
このことは、山本作兵衛氏の努力と行動が世界に認められた証。
山本作兵衛氏が亡くなって27年後のことです。
炭鉱記録が展示:田川市石炭・歴史博物館
田川市石炭・歴史博物館では、山本作兵衛氏の作品が所蔵されています。
そして、現存する絵は、実際にその目で見ることができます。
山本作兵衛氏の絵は、炭坑労働者たちの生活や歴史を生き生きと伝えています。
現代の私たちでは経験することのない働き方。
先人が変えてきた働き方から、多くの気づきをもたらしてくれます。
現代も児童労約者7,900万人が危険を伴う仕事に従事
2022年のUNICEFの報告では、児童労働に従事している5〜17歳の子どもの数は、世界で約1億6,000万人います。
そのうち、山本作兵衛氏のように幼少期から危険を伴う仕事に従事している子どもは約7,900万人。
今もどこかで、子どもたちが危険な労働を強いられている。
そのことを「常識だ」と思い込んでいる大人がいる。
その大人が子どもに教育をしている国や地域があることを決して忘れてはいけません。
山本作兵衛氏の精神を胸に
山本作兵衛氏の生涯は、私たちに気づきと行動の大切さを教えてくれます。
どのような状況下でも、自らの記憶を絵に描き続けることで、後世に貴重な記録を残しました。
山本作兵衛氏の姿勢から学び、私たちも日々の生活の中で気づき、そして行動することの大切さを覚え、いつか必ず行動に起こすことの大切さを痛感します。
自分の夢や目標を持ち、それに向かって行動すること。
私たちもまた山本作兵衛氏のように、何処かにひっそりと名を刻んでいるのです。



