自意識過剰のミステリー:あなたに見せる思い込み幻想
産業カウンセラーの鎌田千穂です。
チホズスタジオは福岡市に拠点を置き、オンラインや訪問をあわせた産業カウンセリングを実施。
・事業内容は産業カウンセリング及びコンサルティング。
・人材育成の仕組みづくりのための自発的行動を促す教育研修。
・「業務改善・組織変革」の企画提案実施です。
他にもチホズ文字分析による、人材分析及び提案も。
今日のお話は、福岡県久留米市田主丸町の静かな街並みの中に佇む若竹屋酒造場の親子の挑戦。
300年にわたる歴史の中で、この地と共に歩んできた酒造場は、ただ単に酒を造るだけでなく、地域と共に成長し、挑戦を続けてきました。
特に12代目蔵元林田博行氏と13代目蔵元林田伝兵衛氏の親子の絆は、巨峰栽培からワインの醸造までの道のりにおいて、地域との深い関わりとその発展を象徴するものです。
目次
この記事では、戦後の困難な時代に始まった巨峰栽培から、今や日本を代表する巨峰ワインの誕生に至るまでの物語。
田主丸を舞台にした若竹屋酒造場の歴史とその挑戦を通じて、親子の絆や地域社会のつながりについて探っていきます。
田主丸と若竹屋酒造場の軌跡
福岡県久留米市田主丸は、耳納連山の広がる豊かな自然に囲まれた地域。
そして巨峰の産地としても知られています。
ここに300年以上続く伝統を持つ若竹屋酒造場があります。
若竹屋酒造場は、ただ酒を造るだけではありません。
社会問題に目を向けて、課題を少しでも軽減するために新たな事業を創造し、現代まで息づいている企業です。
~ちょっと余談~
実は交配を重ねてできた品種改良の植物。
世の中に出回っていないモノがたくさんあります。
昨年、ちょっとした経路から貰ったブドウ。
糖度が30度ありました。
シャインマスカットのような食味でタネがなく粒は楕円形。
とても食べやすいのですがガムシロップを食べているような甘さで驚きました。
そうですねぇ。。
メロンが甘いという糖度が15~18度です。
新種がどのようなものか知りたくて試しに植えてみたそうです。
とはいえ、このブドウは手がかかるため世の中には出回らない幻のブドウということで。
世に出回る品種はエリートなんでしょうね。
巨峰栽培の挑戦と成功
皆さんは、ご存知でしょうか?
今では名のしれた粒が大きくて甘い巨峰。
実は、戦後の日本では、全国で巨峰が一般栽培される地域はありませんでした。
巨峰は「落第果実」として扱われていたからです。
ですが、田主丸の若竹屋酒造場12代目蔵元である林田博行氏は、地元農家と共にこの巨峰に着目。
巨峰の生みの親である大井上康氏の愛弟子、越智通重氏を迎え入れ、巨峰栽培の研究を開始。
そして1957年、ついに一般栽培に成功しています。
革命的な発想:巨峰狩り観光農園の誕生秘話
巨峰は物流の問題で房から粒が落ちやすく、輸送が難しい果実。
そこで、林田博行氏は「巨峰を運ぶのではなく、お客様を運べばいい」という逆転の発想で巨峰狩り観光農園を考案しました。
それこそが日本初の観光果実園の誕生。
シーズン中には70万人もの観光客が田主丸を訪れる大成功を収め、瞬く間に田主丸という地域が巨峰の産地として知れ渡ることになったのです。
誰もやっていないから「やってみる」
やったことがない人は反対することが当たり前。
この柔軟な発想とイノベーションの精神が、田主丸を巨峰の産地として全国に知らしめました。
父から子へ受け継がれる夢:林田親子の絆
巨峰を作る担い手を探すのは骨が折れ理解者を募るのは大変だったようです。
それはそうですよ。
農業というのは収穫期含めて年収です。
月収ではないのですから一年にかけるわけです。
一年をダメにしたら、次の一年まで待たなければなりません。
そこで、林田博行氏は「巨峰が売れ残ったら必ずワインの原料として買い上げる」と農家たちに語ったそうです。
そして広がった巨峰栽培。
できることを広げるリスクヘッジ思考
林田博行氏は「ワインの原料として買い上げる」と農家たちに伝えた段階で、ワイン作りはしたことなかったそうです。
とはいえ、新しいことを始めるにはリスクヘッジは考えておくもの。
巨峰を作るとなった段階で商売を考えていないと、夢だけではご飯は食べられません。
その行く末、いわゆる酒造場だからこそできることは酒作り。
巨峰ワインの可能性を考え続けていたようです。
その姿勢を見て育ったのが13代目蔵元林田伝兵衛氏。
父の夢を実現するために、発酵工学博士としての道を選び、巨峰ワインの研究開発に取り組んでいます。
単身フランスのボルドーで最適な酵母を探し出し、10年にわたる努力の末に納得のいく巨峰ワインが完成。
もともと、巨峰はワインには向かない種類。
誰もそんな苦労をしてまで着手しようとは考えつかない。
だからこその日本初の巨峰ワインの誕生です。
このワインとともにできた「巨峰ワイナリー」は地域の誇りとなり、田主丸の発展に大きく寄与しています。
フルーツワインの誕生と地域の未来
若竹屋酒造場の新たな取り組みは終わりません。
次に取り組んだのはフルーツワイン。
美しい耳納連山にある久留米市田主丸町の近郊は、巨峰をはじめ、いちご、桃、すもも、ブルーベリー、柿、キウイなど豊かなフルーツの里でもあります。
13代目蔵元林田伝兵衛氏は近郊の農家たちと関わるうちに、店頭に並べることのできない規格外のフルーツは破棄されるということにも心を痛めています。
その際、13代目蔵元の林田伝兵衛氏は「自然への冒涜だ」と言ったとか。
「果実は自然からの預かりものとして大切に扱う」。
そのために生食用のぶどうでワインを醸造するという技術力で、他のフルーツを原料としたフルーツワインの製造に着手しています。
博多駅などで行われるマルシェや大手百貨店でも見る機会があるのではないでしょうか。
その取組を始めたのは若竹屋酒造場。
地域との共生:自然と共に歩む若竹屋酒造場
若竹屋酒造場と巨峰ワイナリーは、地域と共に成長し続けています。
親の姿を見て育つ子どもが、自らの道を見つけ出し、地域と密接に関わり合いながら事業を進化させる姿勢は、多くの人に勇気や気づきを与えるはずです。
新鮮なフルーツは収穫されてすぐ、ひとつひとつが職人の手で仕込まれているそうです。
多くの手間と時間がかかっても、生産者への苦労を思い、一年のねぎらいが込められる手作業。
地域と自然への感謝を忘れず、生産者への敬意を込めて作られたワインですね。
決して派手な打ち出し方や大量生産できるわけではない。
けれど、地域が繋がり人がつながって地域に根ざしたワイナリーだからこそできる酒作り。
地域の活性化を考え、自然の恩恵を生かす「農業の表現者」としての姿勢も伝わってきます。
最後に:差別と偏見と無関心にどう向き合っているか
新しいことに取り組む姿勢について、必ず「失敗するからやめな」という否定と偏見。
そして、規格外という言葉で廃棄される収穫物を通じて生まれる差別。
人との関わり合い方も規格外あつかいされている時代。
その偏見と差別こそが、あなたの可能性を閉ざしていることにつながってはいませんか?
そして、植物にも命があり、生産者も命をかけている。
その事実に、私たちは真摯に向き合っているのでしょうか?
当たり前と信じて疑わない自身の判断基準に、思いを馳せる機会となりますように。