無料知的財産相談会(日本弁理士会)
今回も特許法を解釈する上で関連する民法の解説をします。
特許権者になれる人
特許権者とは下記条文に明記されています。
特許法第68条
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
上記の条文等の定義に基づき、特許権者は、「者」=「人」である必要があります。
法律上「人」とはどういうものを指すかは特許法でなく、民法の方に定義規定があります。
「人」の定義
法律上、人とは自然人又は法人です。
人(自然人)は、民法第3条第1項により、私権の享有を出生に始まります。
自然人は、出生により私権を享有し、契約等では制限できないの根拠条文です。また、当該条文は強行規定であり、契約等による制限は無効です。
一方で、「人」は、自然人以外に「法人」があります。
「法人」の定義
定義:法人格とは、権利又は義務の帰属する主体となれる地位をいう。
(法人の成立等)
民法 第33条 法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。
2 学術、技芸、慈善、祭祀し、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。
民法の原則上、法人格を有する法人、又は、自然人でないと特許権等を含む権利を所有できない(=特許権者になれない)。
一方で、特許法上では、例外があります。特許法第6条で定める手続き等が可能です。
(法人でない社団等の手続をする能力)
第6条 法人でない社団又は財団であつて、代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において次に掲げる手続をすることができる。
一 出願審査の請求をすること。
二 特許異議の申立てをすること。
三 特許無効審判又は延長登録無効審判を請求すること。
四 第百七十一条第一項の規定により特許無効審判又は延長登録無効審判の確定審決に対する再審を請求すること。
2 法人でない社団又は財団であつて、代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において特許無効審判又は延長登録無効審判の確定審決に対する再審を請求されることができる。
特許法上、法人格がなくとも可能な手続きは主に特許権の権利行使に対して対抗する為の手続きです。したがって、これは法人でない社団等でも権利行使を受けるということの裏返しになります。
法人でない社団等の典型例は、登記前の会社(正確にはまだ「会社」ではないですが)、又は、組合等の法人格を有さない商店街等です。
近年、AIが発明者となってが特許出願された国際出願等があります(こちらは「発明者」の話ですが)。
国際公開番号 WO2020/079499 発明者名 DABUS, The invention was autonomously generated by an artificial intelligence
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/WO-A-2020-079499/F4CA5A8A4306048216C28204715811ABFE17FA6ABC6319B4660035BD15B1FC19/50/ja
欧米では出願却下となっています(例外は南アフリカやオーストラリアです)。
以上、ご参考まで。