コロナ禍における千葉県を中心とした今年前半の中古住宅価格動向
平成31年公示地価発表
平成31年地価公示が国土交通省から発表されました。平成最後の地価公示の発表ですね。
地価公示は毎年1月1日現在の地価について国土交通省所管のもと、全国の不動産鑑定士が調査して国土交通省が発表しているもので、地価の一定の指標とされるものです。
全国の前年変動率は、住宅地、商業地、工業地ともにプラスとなりました。これだけ空家問題、人口減少問題等がマスコミを賑わせていますが、地価はまだその影響を受けていないのでしょうか。
ちなみに、住宅地は全国平均で前年比+0.6%、地点数は全国で18,046地点です。
商業地は同じく全国平均で前年比+2.8%、工業地も同様に+1.3%と、日銀総裁が物価を2%上昇させるのに苦労している中、地価の上昇は好調ですね。
しかし、全国において住宅地が下落している県は、28県もあります。実は全国の6割近い県はいまだ下落しているというのがまた別の側面です。一方、住宅地の上昇が目立つ県(都)は、宮城+3.5%、東京+2.9%、福岡+2.6%、そして沖縄はなんと+8.5%となっています。
千葉県の傾向
さて、話を千葉県にフォーカスさせますと、千葉県は以下のようになっています。(国土交通省発表資料より)(括弧内は前年の変動率)
住宅地・・・・+0.6%(+0.4%)
商業地・・・・+2.9%(+1.7%)
工業地・・・・+1.9%(+1.8%)
これを見ると、住宅地は若干上昇率が拡大、商業地は上昇率が拡大、工業地はほぼ横ばいから若干の拡大で平均値はそれほど特記すべき動きではないように見えます。
物流の需要が高いものの意外に工業地の伸びが低いように感じます。
商業地については、市川市等が大幅に上昇しているので、その影響を受けたものと推察します。
東京は別格として、埼玉県、神奈川県と似た動きになっております。
なお、同じ関東地方でも、群馬、栃木、茨城については住宅地、商業地とも下落となっています。
千葉県全体の平均値では住宅地が+0.6%、商業地が+2.9%、工業地が+1.9%でしたが、市別の変動率は以下の通りになっています。
これを見ると市川駅~千葉駅間の総武線沿線が好調のようです。特に市川市の商業地は本八幡駅周辺の再開発事業の影響からか、+9.3%とかなりの上昇率となっています。また、房総エリアでは木更津、君津の上昇率が高いです。特に最近では君津市の上昇が目立ちます。現在もアクアライン効果が継続しているようです。
一方、内陸部では下落している市も目立ちます。中でも野田市の住宅地は▲2.6%と前年の▲1.9%よりも下落率は拡大してしまいました。こちらは、大規模区画整理された土地が供給過剰気味な点が影響しているようです。
柏市の傾向(住宅地、商業地、工業地)
さて、私の地元である柏市をピックアップすると以下の通りです。(括弧は前年変動率)
住宅地***▲0.5%(▲0.7%)
商業地***+1.4%(+1.0%)
工業地***+3.8%(+4.9%)
住宅地が▲0.5%、商業地が+1.4%となっています。動きとしては前年から継続して住宅地は若干の下落、商業地は若干の上昇です。
以前にも書きましたが、柏市は市域面積に比して鉄道駅が少なく、駅距離が遠い住宅地が多いために、住宅地の平均を取ると下落傾向となってしまいます。
しかし、住宅地の実態としては、JR常磐線「柏」駅、「南柏」駅から徒歩10分以内は上昇または横ばいとなっています。また、TX線「柏の葉キャンパス」駅周辺の住宅地はかなり上昇している地点もあります。
最近では、TX線「柏たなか」駅の区画整理事業が終了し、戸建住宅地域として熟成が進みつつあり、地価も数年前よりもかなり上昇してきています。
一方、JR常磐線、TX線の駅から遠い住宅地、概ね1.2km(徒歩15分)を超えたエリアの住宅地域や、東武野田(アーバンパークライン)線沿線、旧沼南町に所在する住宅地域は依然として厳しい状況となっています。ここ数年は駅から近ければ近いほど人気が高い土地となっており、極端な言い方をすれば居住環境は二の次な面があります。
従って、同じ柏市内でもエリアによって地価動向が異なっています。
今年の特徴としては、極端に下落している住宅地が無くなった点にあります。例えば、柏-5(柏市大室)は、平成29年地価公示で▲8.5%と住宅地で日本一の下落になりましたが、平成30年で▲6.8%、平成31年で▲3.7%と下落率が縮小してきました。また、柏-36(柏市西山)もここ10年で30%程度下落してきていましたが、平成31年については▲2.6%と少し落ち着いてきました。
次に商業地ですが、実際のところ「柏」駅周辺の商業不動産の事例が把握できない状況であり、なかなか地価変動率を把握することは難しいです。首都圏における商業不動産市況が依然として好調な点から利回りは低下しており、また、「柏」駅周辺の賃料、空室率ともに安定した状態であるため、商業地の地価はやや上昇しているものと推察できます。なお、周辺における大規模商業施設の利回り低下の動きが鈍化しているとも見えることから、私の個人的な感想ではありますが、郊外型大規模商業施設関連の地価上昇にはやや懸念が生じています。
また、柏駅東口の柏そごう跡については、依然として旧店舗の建物が存した状態ですがが、人の流れは駅東口から南口が中心となっており、旧店舗のまわりはやや閑散とした印象も残る時間帯があります。
工業地については、依然として物流倉庫の需要が強く、地価は上昇傾向です。しかし、昨年に比較して過熱感はやや冷めている状況であり、昨年の上昇率に比較すれば上昇率は縮小しました。しかし、平成30年には外環道が市川方面と繋がり柏IC付近の交通利便性が更に上昇しているため、大規模物流倉庫用地としてのポテンシャルは依然として高いものと言えましょう。
なお、東京圏における工業地の変動率上位順位表(国土交通省発表)によれば、柏9-3(柏市青田新田飛地)の上昇率は+5.6%で、東京圏で8位に入っています。
以上、柏市を中心とした平成31年公示地価の傾向をお伝えいたしました。
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不動産鑑定士 小川哲也