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小川哲也

借地権・底地の問題や投資物件の評価に強い不動産鑑定士

小川哲也(おがわてつや) / 不動産鑑定士

おがわアセットカウンセル株式会社

コラム

高齢者向け住宅等の選択について(個人的経験からの感想)

2019年2月22日 公開 / 2021年1月4日更新

テーマ:住宅

コラムカテゴリ:住宅・建物

今回は不動産の範疇ではありますが、高齢者向け住宅等の選択に関わる私自身の体験上のお話になります。

10日程前、私の父が亡くなりました。告別式を済ませ、現在は少し落ちつきを取り戻しつつある状況です。
この6年間、父は介護付有料老人ホーム、高齢者向けサービス付き住宅の3件でお世話になっており、その施設選択に際しての所感を述べたいと思います。

ここでは一般的な介護施設の分類等による特徴等は述べません。
私が選択した施設・住宅でしたが、当初はこんなに移転するとは思っておらず、その経緯と、感想を中心に述べさせて頂きます。

1件目の選択


約6年前、母は既に亡くなっており、父は76歳で実家に一人暮らしをしていました。
当時私はあまり実家に行くことが無く、せいぜい年に2~3回程度でした。
しかし、久々に行った実家で異変を感じることになります。
家の中が若干ゴミ屋敷になりつつあり、父が痩せこけていたのです。
後で知ったのですが、どうも軽い脳梗塞を患ったようで、認知症が進んでいた状態でした。
買物に行く気力が無く、ヘビースモーカーであったものの、タバコを買いに行く気力が無いため、自然に禁煙している状態でした。
このため、週に最低1回は実家に行き、食料を置いてくる生活が始まりました。その間に介護認定を受ける準備をしていましたが、父の不注意による火事を出してしまい、実家は住めない状態になってしまいました。幸い、父は近所の方に助けて頂き、軽い火傷を負っただけで済みましたが、寝泊りする場所を探さなければならなくなりました。
2週間程度の入院期間がありましたので、とりあえず病院から紹介して頂いた介護付き有料老人ホームに入居させて頂きました。
こちらは選択する余裕もないため、とりあえず3ヶ月を目途にお世話になることに致しました。
なぜ3ヶ月という短期になったかは、以下の2点になります。

1.費用が高い(月30万円以上)。
2.立地が世田谷区で、実家、私、妹の家のどこからも遠い。

施設のサービスは標準的だったと思います。これで費用がもう少し安くて実家に近い場所であれば、長期的にお世話になったかもしれません。

2件目の選択


上記の問題が解決できるよう、費用(月総額25万円以下)、実家に近い立地を考慮して、2件目の施設を選択致しました。こちらも1件目と同様に介護付き有料老人ホームになります。
契約前に一応、施設の見学をさせて頂き、サービス的には1件目の施設と大差なく、雰囲気も明るいと感じたため契約させて頂きました。

私は実家から遠く、車で2時間掛かかる場所に住んでいましたが、妹の家が施設に近く、費用の点でも父の年金の範囲で賄えたため、数年は精神的に安定した生活を送れました。

しかし、施設に入って4年目に行方不明となったり、他の部屋へ無断で入って行ったり等の問題行動を起こし、もろもろありまして、結局入居5年が過ぎた頃、その施設から追い出されてしまうことになりました。
これが想定外の始まりになりました。

3件目の選択


2件目を退去する頃体調を崩し、某病院に入院していたのですが、病院のベッドから落ちて大腿骨を骨折し、そこから車椅子の生活となってしまいました。
車椅子のため、問題行動の心配も無くなりましたが、一応、今までの経緯を了承して頂ける施設を探すことになりました。
探すに当たっては、以下の点を重要視しました。

1.私の家から近い施設(今までは何かあると車で2時間かけて私も疲れてしまいました)
2.今までの経緯を了承してくれる。
3.車椅子でも支障がなく生活できる。
4.デイサービスが併設している等、イベントが多い施設。
5.費用は総額月25万円以下。

このような条件のもと、私の家からも職場からも近い施設の入居が決まりました。こちらはサービス付高齢者向け住宅(以下、「サ高住」と表記)であり、今までのような有料老人ホームではありませんでした。
しかし、サービス内容が特に劣るものは無く、むしろデイサービスが併設しており、部屋に一人でいることが少なくなって充実しておりました。

しかし、その施設で比較的安定した生活をはじめて約半年、私の携帯に連絡があり、誤嚥性の肺炎を起こして救急車で病院に運ばれたと連絡がありました。
このあたりから施設の態度が変化したのを感じました。
なぜなら、その施設では痰吸引が出来ないことが判明したからでした。
施設のパンフレットでは、吸引についてはご相談というような内容でしたが、実態としてはそれを24時間体制で行うことは厳しいようでした。

退院しても、またすぐ救急車で運ばれるということを2回繰り返し、病院と施設が話合ったようで、結局、別の施設を探してくれと病院から言われることになりました。


4件目の選択(検討中で終了)


最後に入院した病院にはソーシャルワーカーがいらっしゃり、父の状態に即した施設を紹介して頂けることになりました。これはとても心強く感じました。

選択については以下の点に留意しました。

1.できれば私の家に近い施設
2.24時間看護体制の施設
3.費用が許容範囲内(24時間看護はやや高いので月もろもろ30万以内としました)

これらを考慮し、候補が2件上がりました。しかし、その内1件は放漫経営で民事再生会社となってしまい、運営上心配があるのでやめることにしました。
残りの1件は大手ではありませんが、医療法人系のサ高住で、訪問医療の部署も併設し、24時間看護体制が整った施設でした。立地も条件に合い、料金的にもギリギリ許容範囲でしたので、早速施設の見学をさせて頂きました。
私の方は、施設の許可が下りたらその施設にお願いする気持ちでいましたが、肝心の父の病状が思わしくなく、退院の見込が立たないため、その施設についてはペンディングとなっていました。

その後、主治医から、施設ではなく、長期療養型病院に入院した方がいいかもしれないと言われ、とりあえず病状の様子を見ることにしました。
しかし、その後、父の病状は回復することなく、肺炎で亡くなりました。

もし、ある程度回復していたら、おそらく長期療養型病院に入院することになったかと思います。


移転は本人の症状の変化が大きく関係


1件目から2件目の移転は、立地と費用の問題でした。もちろん、この2点は重要な判断材料です。費用については、緊急で大金が必要になる場合もあるので、貯金を取り崩すのは出来るだけ避けた方がよろしいかと思います。
立地についても、実際に大変になるのは訪問する方ですから、主に訪問する方の都合に合わせた立地条件を定めることが必要になります。

しかし、2件目から3件目、されに3件目から4件目を検討したことは、父の症状の変化が原因となるものでした。

3件目を決める際、車椅子にはなっていましたが、まさか肺炎になって、吸引等が必要になると考えていませんでした。本来でしたら、その点も考慮して決めていれば、もう少し、父の命が延びたかもしれないと思うと、申し訳ない気持ちにもなります。
従いまして、車椅子生活になった等、今までと異なる状況になっている場合は、施設の看護体制がどうなっているかが重要な要因であると感じます。
これは、介護付き有料老人ホームでも条件を満たしていない場合があり、逆にサ高住で条件を満たしている場合もあるので注意が必要です。
また、介護施設紹介ホームページ等で、対応できる看護・医療体制で、△となっているものには注意が必要と感じました。また、看護師が常駐していても24時間体制でない施設が多い状況も注意が必要です。

考え方にもよりますが、施設での生活を考える場合、その時々の状況によっては移転する可能性があることを事前に把握しておくことが必要だと思います。
最初から全てが揃っている施設もあるかもしれませんが、費用面での負担が大きくなってしまいます。
ご本人には精神的、体力的に負担が掛かり申し訳ない面もあるのですが、当初は立地面、費用面、運営会社の体制、施設の雰囲気等を重視して、一般的な介護施設に入居し、その後、ご本人の症状に合わせて施設を選び直すことがよろしいのではないかと思った次第です。

私は当初、父が施設にお世話になっていることに引け目を感じていましたが、それぞれのご家庭にはそれぞれ事情がありますし、無理をすると共倒れになる可能性もございます。もし、年金等である程度の費用が賄えるのであれば、そういった施設でお世話になることが、ご本人にもご家族にも結果的には良い方向に導かれるのではないかと感じています。

以上、個人的に経験した中での感想でした。

(なお、私の場合、選択時間に余裕がない場合が多く、特養については考慮外であったことを付け加えてさせて頂きます)

この記事を書いたプロ

小川哲也

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