当介護施設でクラスターが発生しなかった事を振り返る

馬場田晃一

馬場田晃一

テーマ:新型コロナウィルス 感染防止 介護施設

当介護施設でクラスターが発生しなかった事を振り返る


みなさんこんにちは ケアホームカナンです。

今日は趣を変えて、新型コロナウイルス感染対策についてお話していきたいと思います。

ついに政府はこのほど、新型コロナウイルスの感染法上の位置づけを
5月8日から季節性インフルエンザワクチンと同じ五類に引き下げることを発表しました。 しかしながら、いまだ新型コロナ感染予防に苦労している介護施設が多いと思います。
そこで、カナンでは、施設内クラスターが発生しなかったことを踏まえ
クラスターを予防できた原因と対策を七つのポイントに絞って説明、振り返っていき
皆様の施設運営や感染症対策の参考にして頂けたらと思っております。



ポイント1 個室対応による生活空間の区分け


先ずニュースや資料の統計によると、介護施設でクラスターが
発生しやすい原因として、集団生活による感染症の蔓延が多く見受けられました。
集団生活をしていると感染症は蔓延しやすくなります。
そこで大事になるのが生活空間の区分けや利用者さんの健康管理を
より厳しく行う必要があるのですが、
ケアホームカナンでは基本、入居者さんのお部屋は個室対応をとっていましたので
集団生活による密を回避しやすかったという点もクラスターが発生しなかった
一因だと思われます。


ポイント2 医師や薬剤師と連携し服薬の調整を行う



また実際にクラスターが発生した施設の方から
認知症の利用者さんは、区分けに関係なく行き来をしてしまうことがあり
スタッフも対応に困るという事例をよくお聴きしました。
こちらに関しては、主治医や専門医と密に連携し、服薬の調整を行い
徘徊や多動を上手くコントロールし回避する事が出来ました。
利用者さんの日常生活動作や覚醒レベルなどを落とさず服薬調整をするには
何度も受診に通い、医師や薬剤師と相談する手間暇、時間はかかりましたが
ここで労力を惜しまず、調整する事はとても重要だと感じました。
クラスター発生後の労力を考えると、ここで予防線を張っておくことの方が
大事だと自分に言い聞かせ、医療と連携し服薬調整する事も大事なポイントだと思いました。

ポイント3 換気の徹底



カナンでは、基本的な感染予防対策として、とくに気をつけたのが換気です。
山形県は豪雪地域なので、真冬などはとても寒くなり、なかなか換気が難しくなるのですが、
ここは心を鬼にし、定期的に換気の時間を設け、特にお昼と夕方の換気を徹底しました。
個室の各お部屋にも換気扇が設備されており、こちらも徹底して換気を行うよう心掛けました。
スタッフ(介護員だけじゃなく清掃員や調理員にも協力いただき)や利用者さんの理解を得ることが出来るように丁寧な説明と声掛けは根気がいりますが
この対策も大きなポイントだったと思います。


ポイント4 穴があいてもいいシフト調整


利用者、職員ともに体調の変化に注意し毎日検温を行っています。
情報の共有を行い
体調不良がある時には、すぐに申し出ることができる職場環境が大切です。
発熱したにも関わらず、休んで迷惑をかけたくない、と我慢させずに働ける
環境作りが大事です。スタッフが休んでシフトに穴が開いてもいいように
管理者や施設長、経営者側も介護や調理のヘルプに入ったりできる
体制作りが必要ですので、上下関係なく全員で助け合える職場環境作りも大事です。
また、シンプルなオペレーション、ルール作りを意識する事で
穴があいてもいいシフト調整もしやすくなります。
具体的に言うと、スタッフやスタッフの家族に、体調不良者や濃厚接触者が出た際は、
抗原検査を実施し、疑わしい場合は、すぐにスタッフが休める環境を整備。
人が足りない場合は、ジョブローテーションのように
管理者、施設長、経営者、相談員も含め、垣根を越えた
ポジションチェンジによりスムーズにフォローしあう事が出来ました。
どうしても人が足りない場合は、すぐに相談できる人材派遣会社のネットワーク作りや
応援にこれるスタッフの体制作りも普段から心掛けてきました。

ポイント5 感染経路の遮断




面会を制限、管理する事で感染経路を遮断し
クラスター発生を防止する事が出来ました。
やむを得ない場合を除いては、出来るだけ制限する事が望ましいと言えました。
2020年1月に国内で新型コロナの最初の感染者が出たあと、
かなり早い段階(2月初め)で、面会の全面中止を決めました。
面会の全面中止は、入所者の精神面への影響があり、
難しい問題ではありましたが、早い決断が功を奏したようです。
ご家族との交流機会を完全になくすことは避けたかったので
地域の感染状況が落ち着いている時には、感染予防対策を徹底した上で
短時間の面会を実施するといったような臨機応変な対応が大切になってきましたが
そこは柔軟に対応をしていきました。
中には、面会制限に対し、不服やクレームを言われる方もいらっしゃいましたが
ここも、しっかり向き合い、理解を得れるように丁寧な説明と対応を行ってきました。
また、オンラインでの面会やSNSでの発信でご家族に利用者さんの安否を
伝えるなどの方法で、家族の「安心やニーズを満たす」ことも大切だと感じました。

感染拡大の一因として利用者のサービス事業所併用により
感染が広がる事例もありました。
感染が酷い場合は、ケアマネさんやご家族と相談連携しサービスの併用中止を打診したり
と、かなり踏み込んだアプロ―チも行いました。



ポイント6 スタッフの休憩時間を別け、密を避ける



職員が普段の手洗い・うがい、マスクや咳エチケットを徹底してくれた事で
クラスターを未然に防ぐ事が出来たと思います。
また、地域の感染状況を把握する事も大切になってきました。
職員の感染理由としてよく耳にするのがスタッフ同士の休憩時間、昼食時間での
クラスター感染です。これを防止するために大事な事は、食事時間に密にならないように
工夫する事です。具体的にスタッフの休憩時間や食事時間を別ける事で防止できたと思います。
また換気をしながら食事を行う、パーテーションで区切りながら食事中に
迎え合わせにならないように注意する等の工夫も行いました。




ポイント7 リハビリやレクなど、集団で行う活動時に密をさける



リハビリやレクはADLの維持や利用者さんの楽しみの為
重要である事には変わりはないのですが、集団での実施となると
感染予防対策は厳しく行う必要があります。
定期的な換気はもちろん、互いに手を伸ばしても届かない距離感を意識したり、
実施の前後に手指の消毒を徹底しました。
一番、コロナが多い時は、シネマ方式で椅子に座り、体操コンテンツやレク映像をスクリーンに投影し椅子に座って出来る運動や体操を多用しました。
これにより効率よく身体を動かし、ADLを落とさず、かつ、感染リスクを下げ、活動を行うことが出来ました。


その他にも共有物の消毒や、活動スペースの清掃
消毒用のアルコールや防護服の準備
感染発覚時の人員配置のシュミレーション等を行いましたが、
一番大事な事は、発生の想定や実践をしておくことです。
実際に、感染やクラスターが発生した場合の動きを
施設全体で想定・実践しておくということが大事だと思いました。
カナンでは幸い、クラスターは発生しませんでしたが、スタッフのご家庭内感染
や濃厚接触による連続欠勤等。想定外の非常事態を何度も経験しました。
やはり、そうならないよう想定や準備も念入りにする必要があります。
感染症対策は、感染が起きてから行うのでは遅い為、
平時からの職員全体の感染予防意識の底上げが
最も効果的な感染症対策になっていたのかもしれません。






5月の感染症 五類引き下げまで、後少し、施設クラスターが発生しないように
感染症対策を引き続き、頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

一日でもはやくコロナウイルスが終息しますように
一読いただき有難うございました。

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Mybestpro Members

馬場田晃一
専門家

馬場田晃一(介護福祉施設の運営)

ケアホーム カナン(株式会社カナン)

音楽と運動を融合させた介護予防プログラム「音楽健康セッション」を展開。健康増進に加え、幅広い世代の方々の関心を集めており、加えて、より望ましい福祉の環境づくりにも効果を上げています。

馬場田晃一プロは山形新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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