トラックを運転できなくなったドライバー――原職復帰できないとき、会社はどうする?

吉元康裕

吉元康裕

テーマ:運送業の労務管理とリスク対策

運送業・企業型DC・助成金専門社会保険労務士の吉元です。

【運送業の労務管理とリスク対策】

「病気で休職していたドライバーから、復職したいと連絡があった。しかし、以前のようにトラックを運転するのは難しそうだ」

このようなとき、運送会社はどう対応すればよいのでしょうか。

本人の雇用はできるだけ維持したい。しかし、運転業務に戻れなければ、代わりのドライバーを確保しなければなりません。

特に小規模な運送会社では、運転業務以外の仕事を用意することも容易ではありません。

今回は、ドライバーが原職復帰できない場合に、会社が考えておきたいことを整理します。

1.原職復帰できないドライバーをどうするか

例えば、脳出血などの病気によって後遺症が残り、以前のようにトラックを運転することが難しくなった場合です。

まず確認したいのは、本人がどのような業務に従事できる状態なのかということです。

トラックの運転は難しくても、事務作業や運行管理の補助など、別の業務に従事できる可能性はあります。

ただし、運転業務以外の仕事を用意できるかどうかは、会社の規模や業務体制によって異なります。

従業員が数人の運送会社では、ドライバー以外の職種がほとんどない場合もあるでしょう。

一方、複数の営業所や事務部門を持つ会社では、検討できる選択肢が異なるかもしれません。

【「トラックを運転できないこと」と「会社で働くことができないこと」は、必ずしも同じではありません。】

しかし、会社が実際に用意できる仕事には限界があります。

本人の健康状態と会社の業務体制、その両方を踏まえて検討することが出発点です。

2.原職復帰できない場合、退職や解雇になるのか?

原職復帰が難しく、配置転換先も見つからない。

このような場合、会社は雇用関係をどうするかという問題に直面します。

休職期間が満了した場合の退職、本人との合意による退職、会社による解雇など、考えられる取扱いは一つではありません。

ここで重要なのは、
【「原職復帰できないから退職」と直ちに結論を出さない】
ことです。

例えば、次のような点を整理する必要があります。

・本人は現在、どのような業務に従事できるのか。

・医師の意見は、実際の運転業務を踏まえたものか。

・会社に配置転換できる業務はあるのか。

・休職期間はいつまでなのか。

・本人には、どのような説明をしているのか。

会社の規模や業務内容によって、対応できる範囲は異なります。

また、業務上の傷病による休業の場合には、私傷病による休職とは異なる取扱いが関係します。

会社として、確認すべきことを整理したうえで判断することが大切です。

3.本人との話し合いだけで終わらせない

復職を希望するドライバーに対し、会社が原職復帰は難しいと考えている場合、本人との話し合いが必要になります。

しかし、話し合いを重ねるだけでは、会社としての判断が曖昧になることがあります。

例えば、会社は「まだ復職できない」と考えているのに、本人は「復職を認めてもらえる」と理解している場合です。

そのような認識の違いを避けるためにも、会社が何を確認し、どのような判断をしたのかを明確にしておくことが重要です。

復職を認める場合には、復職日や担当業務、勤務条件などを復職命令書で明確にします。

一方、復職を認められない場合には、その理由や今後の取扱いについて、本人に説明できるよう整理しておく必要があります。

【重要なのは、会社の判断と本人への説明を、その場限りの口頭のやり取りで終わらせないことです。】

4.休職規程は、復職できない場合まで考えているか

前回のコラムでは、休職規程・休職命令書・復職命令書を一体で整備する重要性を取り上げました。

しかし、休職制度は、休職を開始するときと復職するときだけのものではありません。

【復職できない場合に、会社としてどのような手順で判断するのか。】

ここまで整理しておく必要があります。

例えば、

・休職期間満了前に、本人の治療状況や復職の見込みを確認する。

・主治医の診断書など、復職判断に必要な資料を確認する。

・原職復帰が難しい場合、配置転換や業務内容の調整が可能か検討する。

・復職できない場合、会社の判断と今後の取扱いを本人に説明する。

こうした手順は、就業規則や休職規程に定められている場合もあります。

しかし、実際に休職者が出たとき、その規定に沿って対応できる状態になっているでしょうか。

【規程に書いてあることと、実際に運用できることは別です。】

5.運送会社の実態に合った制度整備を

運送会社の休職・復職制度は、一般的なひな形を用意するだけでは十分とはいえません。

長距離輸送、地場配送、荷役作業の有無など、ドライバーの業務内容によって復職時に確認すべき事項は異なります。

また、会社の規模によって、配置転換の選択肢も異なります。

だからこそ、自社の運行体制や勤務実態に合った休職・復職制度を整備しておくことが大切です。

「原職復帰できないドライバーへの対応が決まっていない」

「休職期間満了時の判断に不安がある」

「休職規程はあるが、実際の運用手順が曖昧になっている」

このような課題があれば、一度、自社の制度を確認してみてはいかがでしょうか。

運送業専門社労士として、就業規則・休職規程の整備だけでなく、休職命令書・復職命令書、復職判断の手順など、会社の実態に即した労務制度の整備を支援しています。

【すでに休職者がいる場合の対応整理から、今後に備えた制度の見直しまで、ご相談いただけます。】

【関連コラム】

第1回「ドライバーが突然倒れた!運送会社は何から対応すればいいのか?」
https://mbp-japan.com/tokyo/yutoli-sr/column/5240962/

第2回「ドライバーが長期休職するとき、会社はどうする?――休職規程と休職・復職命令書の重要性」
https://mbp-japan.com/tokyo/yutoli-sr/column/5241121/


最後までお読みいただきありがとうございます。

運送業専門社労士としての活動はこちら。

(公式LP)https://yutoli-sr.com/

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吉元康裕
専門家

吉元康裕(社会保険労務士)

YUTOLI社会保険労務士・FP事務所

運送業の労働時間や賃金の課題に対応。2024年問題や36協定を踏まえ、ドライバーの勤務実態に応じた制度運用を支援します。幅広い業種で企業型DCの導入や就業規則の作成・見直しも手掛けています。

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