木造住宅の外壁基礎知識【後編】〜材料と種類
先日弊社でで設計監理した、茅ヶ崎の家の植栽工事が完了しました。
この家は細長い通路を有する旗竿敷地で、周辺が全て隣地で囲われているため、どのようにプライバシーを確保するかが課題でした。
そこでリビングダイニング・浴室の共用部と寝室1室で三方を囲われた、居室の延長としての中庭と、玄関画面する前庭、洗濯室に面する裏庭の、性格の異なる三つの庭をつくって、プライバシーを確保しつつ、十分な採光通風を確保することにしました。
庭木の選び方
こうやって建築と庭の配置は決まったのですが、具体的になんの木を植えてどんな雰囲気の庭にするのか、は最後の最後に決定されます。
もちろん搬入や土の広さなどもあるので、だいたいどの程度の大きさのものにするかなどの技術的なことは決まっていますが、具体的な樹種などは白紙にしています。
外構工事前の状況
この状態で、実際の光や風の入り方、土の状況等の最終条件をグリーンデザイナーさんに見てもらってから、実際に植える木を選びます。
緑があるお庭はとてもよいものですが、生き物ですからちゃんと手を掛けていただかなければなりません。私たち建築家やグリーンデザイナーは、この敷地条件で最大限美しく、育てやすく、虫がつきにくいものは何かを、検討してデザインしますが、そのあとはお施主様が育てていくもの。愛着を感じて楽しくお世話いただくことが重要なので、弊社では、お施主様にできるだけ圃場(庭木の畑)まで出向いていただいて、主要な木は選んでいただきます。
今回は春植えのお庭だったので、圃場に行く時期はまだ葉がでておらず、樹形で選ぶというちょっとハードルの高いお願いになってしまいましたが、広い圃場をくまなく見て選んでいただいたのが以下の四本。
左上:中庭のイロハモミジ 右上:前庭のヒメシャラ
左下:裏庭の常緑ヤマボウシ 右下:前庭のアセビ
もちろん好きな樹種や雰囲気だけ伝えて、グリーンデザイナーさんにお任せしてしまうことも可能ですが、同じ樹種でも枝振りも全く違いますし、「繊細な株立で」というイメージは同じでも、幹の色や枝の伸び方など千差万別です。
この家でも、来訪前の仮決め時には、中庭は株立のエゴノキ、前庭は株立のモミジ、裏庭はソヨゴで考えていましたが、
・お施主様が一目惚れした一本立ちのイロハモミジは、暮らしに密接した中庭に植えたい
・前庭ならば幹の色が赤くツヤがある株立のヒメシャラの方が冬も趣があるかな
・裏庭はプライバシー上常緑がいいけど、ソヨゴよりヤマボウシの方が密度は低いけど好みに合う
などなど、行ってみるとお互いイメージが膨らみます。
また圃場の方にその木の来歴や育て方などいろいろ聞けるのも魅力の一つ。圃場は広いスペースが必要な分、行きにくいところにあるので、お子様連れのお施主様にはお手数をお掛けしましたが、とてもよい収穫でした。
実際の風景
中庭のイロハモミジ。
選んでから三週間程度でしたが、もうすっかり若葉が出そろっています。
モミジという樹種も鑑みて、下草も和モダンをテーマに選定されました。
もちろん、虫がつきにくく、丈夫なものたちばかりです。
圃場での写真では随分小さい?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、圃場は周りが広く、公共建築に植えても遜色ないような大きな木もたくさんあるので、住宅のスケール感とはかなり印象が変わります。個人的な感覚では圃場で見るより敷地で見た方が1.5倍くらいの迫力があります。
よっぽど目が肥えている方ではない限り、素人の方だけで圃場に出向いてしまうと、ぎゅうぎゅうな庭となってしまい、2年もして木が育つともうどうにもならないことになってしまうので、このコラムでご興味を持った方も、植える場所のスケール感を熟知した専門家と同行されることをお薦めします。
前庭のヒメシャラ。長く続く旗竿の通路の中央にみえる、この家の顔となる木です。外壁の白色と合わせて、木の回りだけ白の玉砂利で引き締めました。
玄関前まで進むと見える低木群。中からは見下ろしの視点で楽しめます。
そして裏庭。
上の写真は洗濯室から見たものですが、リビングからもディスプレイのガラス棚が印象的な出窓の先に見えるヤマボウシを楽しめます。
お施主様にも「圃場行くの大変だったけどいった甲斐があったわ。成長が楽しみ」と言っていただけました。
これからも新しく根付いた木々が、お施主様との暮らしと一緒に幸せに育っていけますように。
今回のお庭のグリーンデザインはysteezの岡部陽子さんでした。
ysteez
私は建築のプロでありますが、いえづくりは領域の幅が広く、得意な分野と、常識程度は知っている程度の分野とあります。全てを自分でやる考えもあるかと思いますが、私は得意分野以外は信頼できるプロと協働するタイプです。
この庭でも岡部さんには大変お世話になりました。
今回はスナップ写真でのご紹介でしたが、竣工写真ができあがったら、またインテリアと合わせてご紹介します。