オープンでもクローズでもない、キッチンとダイニングの仕切り方

津野恵美子

津野恵美子

テーマ:インテリア

前回は部屋を仕切る引戸のお話をしましたが、今回はキッチンの区切り方についてです。

最近はオープンキッチンもだいぶ主流になってきていますが、今までご依頼頂いたクライアントで、ドラマに出てくるような、完全なオープンキッチンをのぞまれた方は、実はほとんどいらっしゃいません。やはり、常にきれいにしておかなければならないプレッシャーや、リビングと一体になってしまうことによる、お子さんやペットとの領域分けなどで、二の足を踏む方が多いようです。このコラムでは、そんなご要望のクライアントのみなさまとご相談しながら作った、完全オープンでも完全クローズでもない仕切方の事例をご紹介します。

天井高と床の仕上でキッチンの領域をあきらかに

最初の事例は変形L型カウンターのキッチンです。
壁際にコンロと作業台、作業デスクを配置し、ダイニングに正対してシンクカウンターをアイランドで置いています。


作業中もダイニングやビングが見通せる開放感はお望みでしたが、お子さんやお客様に、不用意にキッチンに立ち入られるのを好まない方でした。 この事例では、リビングダイニング部と、キッチン内とで天井高・仕上をはっきりと変え、カウンターの立上り面を壁と同じ仕上とすること で、ダイニングとの境界をはっきりさせています。


カウンターの立上りは110cm。座っているときはもちろん、立っていてものぞき込まなければ台面が見えない高さです。

スキマのある家

大きな引戸で、キッチンの開放性をコントロール

次の事例は築浅のマンション改装です。元のプランは納戸を囲んだ完全クローズなL型キッチンでしたが、暗く狭いので、納戸をつぶしてキッチンエリアを大きくし、ダイニングとの境に配膳棚と大きな引戸を付けました。

引戸の巾は1.8m。ご家族でいるときは完全開放して、オープンな環境に。来客時は、準備する皿数や親しさの度合いに応じて、ダイニングとつながる開口巾をコントロールできます。

松濤の改装

表裏両方から使えるガラス戸の食器棚で仕切る

次の事例は、プラン上はクローズキッチンの事例です。
完全クローズドをご希望の方でしたが、ご家族の人数が多く、来客も多いとのことで、間仕切を作り付けの食器棚とし、目線の高さはクローズにしつつ、ちょっと低い位置を一列あけて、 配膳台としました。

ガラス戸の食器棚は全て、キッチン側からもダイニング側からも開け閉め可能なので、配膳の手伝いや、替えのグラスや醤油差し、追加の取り皿やグラスなどを出すのにも便利です。

富士山麓の家

長手側から入るクローズドキッチン

最後の事例はクローズキッチンです。
リビングダイニングをスタジオのように広々とさせて、好きなものだけに囲まれた空間を作りたいというご要望の方で、キッチンはクローズ に、というのが一番最初の要望でした。

クローズドキッチンは、カウンターと直交する、短手側から入るのが一般的ですが、ここではあえて長手側から入れて、段差を設け、仕切の壁に厚みを持たせています。そうすることで、ダイニング側からは割と広いオープン開口で、つながりを持たせつつも、リビングからは、壁の開口は見えても、中は見えない関係性 が作れました。

光と風を共有する家

まとめ

一言でオープンキッチン、クローズドキッチンといっても、どこまで見通せて、どこまでは隠したいかの価値観は、お宅によって千差万別です。家づくりをお考えの方は、一度、ご自分たちに最もあった仕切り方というのを考えてみてはいかがでしょうか?

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津野恵美子
専門家

津野恵美子(一級建築士)

一級建築士事務所/津野建築設計室

人がもともと持っている心地よさを感じる「寸法感覚」を利用し、外部環境や家族との関係を踏まえながら、心地よさという漠たる感覚を数値化して、空間や暮らしに適切な寸法を与え、家族ごとに暮らしやすい家を実現。

津野恵美子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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