社内の給料ランキングはまだ役職順?成熟社会に合った給与計算・賃金制度とは?
「コスト削減!」が合言葉だった時代は終わった
成長社会では、利益向上のために原価低減活動が必須でした。そのため、何かにつけ「コスト削減!」という言葉が口癖になっている上司も多かったと思います。しかし、ものやサービスに溢れた成熟社会では、「安かろう悪かろう」だったのは、既に過去のこととなり、「安価で良質」は当たり前です。また大量生産にも関わらず人口減少ですから、価格も低減します。一方、原料の高騰などがあると価格を維持したくて内容量を減らしたりするなど、価格の維持には神経を尖らせています。また、ものやサービスに溢れた成熟社会では、消費者の基準以下のものは淘汰されていきます。
例えば、コンビニスイーツよりもまずいケーキ屋さんはありますか?おそらくありません。いつでもどこでも手軽に買えるように普及していったコンビニは、消費者の食の基準となります。コンビニスイーツよりも美味しくないケーキ屋さんで、わざわざコンビニよりも高い値段で買う価値を見いだせない場合、消費者はコンビニスイーツを選ぶようになります。そうして、コンビニスイーツよりも美味しくないケーキ屋さんは潰れていきます。
このようにして、様々なジャンルの製品・サービスが良質さと安価を兼ね揃えたものとなります。オフィスの製品・サービスを見渡してみてください。どれもこれも良質で安価なものばかりではありませんか?よっぽどひどい契約をさせられているという場合を除いては、「これ以上、コスト削減のために何ができるのか」を見つけ出すことは、容易ではないのではないでしょうか。ダイエットを頑張っても体重はゼロにはならないとの同じように、必要最低限のコストは削ることができません。しかし、成熟社会ではコストはゼロに近づいていく方向に向かいます。そのためにはシェアリングエコノミーの利用など自社以外に目を向ける発想の展開が必要です。また、コストを削減して必要最低限を減らす努力をするよりも、新しい価値を生み出し、販売を見直し、売上を上げて利益を高めていく方が、市場変動が激しい成熟社会では有益です。
売上向上に努めるために知っておきたいこと
では、売上を向上させるためには、何を意識すれば良いでしょう?意識するのは、消費者が貴社に対して「何に」お金を使っているのか?です。貴社の価値は何でしょうか?それを確認していくことが重要です。
例えば、うちのメンバーが惚れている切れ味のいい包丁「正広作 和包丁特上 出刃 195 ㎜ 15808」が欲しいとき、あなたならAmazon、楽天、Yahoo!ショッピングで買いますか?Amazon では 17,478 円、楽天では 25,242 円、Yahoo!では 22,446 円でした。
「一番安いから、当然 Amazon で買う」という人もいれば、「5 千円高くても Yahoo!で買いたい」「8 千円高くても楽天で買いたい」という人もいるでしょう。ここで考えてほしいのは、「5,8 千円多く出してでも Yahoo!/楽天で買う」という人にとって、 5,8 千円を多く出す「理由」は一体何なのか?ということです。
下記は価格が高くても選ばれる理由の例です。いかなる理由にせよ、人によっては Yahoo!/楽天は 5,8 千円多く出す「価値」があるということです。
・アカウントの有無。新規作成が億劫
・返品のしやすさ
・配送が早い
・保証サービス
・ポイント還元率
・支払い手段の多様性
・サイトの見やすさ
・企業の好き嫌い
・信用できる
・レビューの信頼度
人は価格だけでは商品を選んでいません。貴社の価値も、このように価格以外にもあるはずなので、自社の価値は何かを見直してみるとよいでしょう。
売上向上に貢献するには、何に投資すべきか?
人口が増えていた成長時代は、供給より需要が多かったので「借金して設備投資して効率的に大量に作り、販売して利潤を上げて借金返済」という図式が成り立っていました。しかし、人口が減少していく成熟社会では、需要が供給を下回りますので、成長社会のような設備投資して効率化&大量生産のやり方ではうまくいきません。同じものを効率的に大量に作るのではなく、価値あるものを少なくてもいいから作るほうが価値が高いこともあるのです。成長社会で築き上げたビジネス
ルールが崩壊した成熟社会では、そもそも売上向上をノルマを課してまで目指すものではありません。売上は、結果に過ぎません。企業は、売上のためではなく、【ビジョン達成のために行動していく】ことが大事です。「利益を出すために経営をする」ではなく、「達成したいビジョンのために経営をして利益を出してビジョンに向かう」ように意識を変えていく必要があります。
ビジョンを達成するために戦略を介した計画を立てて、それにかかる費用を割り当てます。立てた計画が無理ならば、戦略を変えます。計画が無理でも絶対にビジョンから揺らいではいけません。ビジョンを叶えるために戦略を考え、ビジョン達成のために投資をすべきです。会社のビジョンを達成させるために、お金をどううまく使っていくかを考えていきましょう。
コスト削減よりビジョンに沿った売上向上を狙う企業の事例
大手 EC サイトである楽天株式会社(以下、「楽天」)が 2019 年 10 月、モバイル事業に名乗りを挙げたことは皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか。「なぜ、EC サイトの楽天が?」と思った方も多いでしょう。楽天のビジョンは「グローバル イノベーション カンパニー」であり続けるだそうです。そのビジョンのもと、企業価値・株主価値の最大化を図り続ける企業であるからこそ、EC サイトで出た利益をモバイル事業へ投資していったのでしょう。では、楽天は自社の回線設備を持ち運用している事業者(Mobile Network Operator)となるために、いくら投資したのでしょう?基地局整備を中心にした有形固定資産投資は 19 年度には前期の 23 倍の 1635 億円となり、28 年度までの 10 年間で 5000 億円強の投資を計画すると発表されています。多額の設備投資はもちろんのこと、鉄壁の Docomo/au/Softbank の大手3大キャリアでいっぱいの携帯電話事業の市場に参入は無謀な挑戦のように思えたかもしれませんが、参入発表の 1 年後の今年 2020 年には、「大手 3 大キャリア」に加わり、「大手 4 大キャリア」と言われるようになりました。それだけにとどまらず、大手 4 大キャリアの中でも「総合満足度」の点で 1 位に輝きました。なぜ、1 年でそのような結果を出すことができたのでしょうか?1 年間のプラン料金の無料や月額料金の安さも魅力の一部ではあるが、うまくいった秘訣は、楽天が自社の魅力を強化させていったことにあるといえます。
<価格以外の魅力>
・楽天の他サービスとの連携
・楽天ポイントで払える、貯まる
・企業ブランドへ安心感がある
楽天の携帯電話への新規参入は、最初こそ高い投資額を投じていますが、世界初の「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」を開発したことにより、圧倒的な低コストを実現することができました。これにより、顧客に安価で良質なものを届けられるようになっています。これからどんどん回収していき、数年で黒字に転じることでしょう。
また、モバイル事業に共感したユーザーが他サービスの利用者も増えることでしょう。モバイル事業の発展により、既存事業の利用者を増やすことができます。ますます企業の力を強めていくことができます。楽天は自社のビジョン「グローバル イノベーション カンパニー」を叶えるために多額の投資を行ったと言って過言ではないと思いませんか。(ただ追従するように、NTTがAhamoを出しましたが・・・)
まとめ
「コスト削減!」「コスト削減!」と成長時代のように目先の損失に囚われるのではなく、技術や発想の転換でコストが限りなくゼロに近づく成熟社会では、売上を目標にするのではなく、会社のビジョン達成を目標に行動していきましょう。だからこそ、コスト削減を唄うコンサルタントよりも売上向上の戦略を考えるコンサルタントを選ぶようにすると良いです。