ワークライフバランス?働き方改革?コロナで進む企業問題!定義や対策

並木将央

並木将央

テーマ:成熟社会の理解度アップ!

コロナ禍の影響でリモートワーク、テレワークが浸透しました。
「通勤時間がないから、オンオフの切り替えが難しい」
「終電がないから、いつまででも仕事ができてしまう」
「プライベート空間での仕事だと捗らない。プライベートが侵されている気がする」
という声がよく上がっています。
ワークライフバランスがコロナ禍の影響で注目を集めているといえます。

ワークライフバランスという言葉は2007年12月に内閣府が「ワークライフバランス憲章」を策定した頃より話題にはなってきたものの、今回のコロナショックによって真剣に考えた人が多かったようです。
では、そもそも「ワークライフバランス」とは何かを見直してみましょう。内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室が掲げている「ワークライフバランス憲章」を見てみると、下記のように書いてあります。

「我が国の社会は、人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくい現実に直面している。

誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。

仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる。

そのような社会の実現に向けて、国民一人ひとりが積極的に取り組めるよう、ここに、仕事と生活の調和の必要性、目指すべき社会の姿を示し、新たな決意の下、官民一体となって取り組んでいくため、政労使の合意により本憲章を策定する。」

はい、ではここで質問です。
仕事と生活のどちらが大事だと言っていますか?
国語の問題だと思ってもう一度、読んでみてください。

この憲章は何のために策定されていますか?
「そのような社会の実現に向けて」ですね。
そのような社会とは、持続可能な社会です。

では、「持続可能な社会の実現にも資することとなる。」の主語は何でしょう?
「(誰もが意欲と能力を発揮して)労働市場に参加することは、」ですね。

つまり、大事だと言っているのは、仕事です。決して時間や余暇を与えましょうというものではありません。誰もが意欲と能力を発揮するために必要なものが、前述されているのです。

「誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。」

・誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす
・個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができる

ここでは、残業時間を抑制することではなく、働くというのがどういう状態なのかを説いているのです。ワークライフバランスは、決して仕事と生活の時間について述べているわけではないのです。それにも関わらず、働き方改革で福利厚生を充実させたり「ノー残業デー」を設けたりした企業も多かったようです。福利厚生を充実させても残業時間を減らしても、社員が求めている働き方の改革にはなりません。事実、「ノー残業デー」の悪影響として、家に仕事を持ち帰ったりカフェで仕事をしていたりするニュースが当時、たくさん報道されていましたね。

もし、あと1時間あればこの仕事が片付き、すっきりしておいしいお酒が飲めるのに、残業時間カットで強制退社させられ、セキュリティ上、会社の外にも仕事を持ち出せず、明日に持ち越さなければならないとなったら、その日のお酒はおいしいものになるでしょうか。

本来、人間はここまでがワーク、ここからがライフとはっきり気持ちを切り替えられるものではありません。仕事でミスをすれば家に帰っても落ち込み、良い仕事ができたらおいしいお酒が飲めるのです。

このワークとライフの両輪への考え方が成長社会と成熟社会では、大きく異なっているというのが今回、お伝えしたいことです。

成長社会では、ワークとライフのバランスを考える天秤のような考え方でした。
良い暮らしをすることが幸せで、そのために仕事をする、という価値観が定着していた成長社会では、ワークでお金を増やすことで、天秤が釣り合うように、その分ライフの豊かさも増えていきました。逆に仕事(ワーク)を辞めてしまえば、ライフが下がります。ですので、ワークとライフが天秤のような動きをしていました。

イラスト参照:著書『成熟社会のビジネスシフト』

しかし、成熟社会では、天秤のようなものではなく、コップ型であるといえます。
コップの中(ワーク)が満足してから、溢れた部分がライフに繋がっていきます。

やりがいや充実感という水でコップが満たされ、そこから溢れた水がライフを潤します。その水を自己啓発・自己学習として、またワークに注いでいくのです。当然、コップ(ワーク)を変えることは可能です。よりコップから溢れる水が多くなるように、していくのが仕事選びに関わってきます。

ワークライフバランスに悩んだときに、成長社会のような考え方で残業を減らそうというのは安易な考え方だということがお分かりいただけましたでしょうか。いかに社員にやりがいや充足感を与えられるかが重要となります。

働き方改革は企業が行うものではありません。社員が考えて企業に提案していくものです。社員がイキイキと働くために、社員が提案して会社が用意する。会社が準備したものを社員が使う成長社会とは逆なのです。長く成長社会を過ごしてきた人にこうした話をすると、社員にリーダーシップを学ばせようとします。しかし、それが正しいとも限りません。企業に属するサラリーマンの100%が自信と意欲に満ち溢れているかというと、そうではないでしょう。全員が起業家マインドを持ったり、リーダーシップを取ったりすることが必要ではありません。「船頭多くして船山に登る」ということわざがあります。リーダーシップを持つ人、ビジョンを描く人が多過ぎるとかえって物事の統制が取れなくなるものです。怪獣のキングギドラには3つも首がありますが、どうやって意見を統一しているのか不思議に思います。

私は幹部研修の依頼を受けてリーダーシップやフォロワーシップ、自律性の研修やセミナーを多く行いますが、すべての社員にそれが当てはまらなくてもいいのです。
おかしな言い方になりますが、意識が高くなることで、自分の会社のアラを見つけてしまい、辞めていく人も増えます。成長社会から成熟社会へ切り替わる段階では、どうしてもアラは残っています。アラをなくすことも大事ですが、それよりも社員の力をもって会社を変えていくことが重要です。必要なのはリーダーシップを学ぶことではなく、この会社でどう幸せになっていくかを社員(役員も従業員も)が共有することです。その結果が働き方改革となります。本質的なところから変えていかなければ働き方改革にはならないのです。

ニュータイプの成熟社会で考えるべきワークライフバランス及び働き方改革とは【仕事を通じて、社員の自己実現となる場がその企業にある】ように変えていくことです。

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並木将央
専門家

並木将央(経営コンサルタント)

株式会社ロードフロンティア

人口減少に伴う「成長社会」から「成熟社会」という社会の大きな変化に対応した経営変革を支援。人材獲得、人材育成、業務効率化、資金繰り、売上UPなどの課題を同時解決するコンサルティングサービスを提供。

並木将央プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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