投信の手数料打ち切りも 米国投資家に学ぶべきコト
2024年4月の日銀金融政策決定会合で、日銀保有ETFの出口論が話し合われました。
中央銀行が株式保有をすることを問題視する意見が根強くあります。
植田日銀総裁は保有ETFの取り扱いについて
「少し時間をかけて検討したい」とのコメントを出しました。
日銀の出口戦略について筆者なりに現状の整理をしてみたいと思います。
日銀保有ETFがもたらした効果は?
結果的にみると、日銀が日本株のETFを購入したことで、
日本の株価上昇への貢献
があったと考えられます。
また、株価の安い時に購入した日銀保有ETFは
大きな含み益を日銀にもたらしています。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏の推計では、2024年4月末時点で
簿価約37兆円、時価約73兆円とされています。
この推計ベースで累積のリターンでは 97.3%となります。
「安い時に買っておく」、優秀なファンドマネージャーのようでもあります。
そして、ETFを保有することで
1兆円を超える分配金が2014年頃から毎年、もたらされています。
日銀がETF出口戦略に時間をかけたい理由は?
この日銀ETFの将来の売却について、日経新聞 清水功哉氏が詳しく解説をしています。日経新聞2024/05/14 『日銀会合でETF売却の意見 「埋蔵金論」をけん制か』記事、BSテレビ東京、日経モーニング+FT 2024/05/21放送の内容をここで引用、紹介いたします。
巨額の保有ETFについて、様々な政策用途に活用し得る「埋蔵金」のようにとらえる空気が政府や政界に広がっているのをけん制したい思いもありそうだ
背景にありそうなのが、日銀ETFについて様々な活用論が浮上しているとされること。政府側の組織に簿価や時価で譲渡し、分配金収入を一定の政策目的に活用するとか、割引価格で個人に売って投資家の育成を後押しするとかといった案が、政府や政界、市場などで出ているようだ。これに対して、日銀としては、株価への影響に配慮しつつ、少しずつでも自らマーケットで時価による処分をしたいとの意向を示し、けん制したように見える。
もっとも、日銀には譲渡より保有を優先したい思いがある。短期間の売却で巨額の利益を手にしても、仮にその多くが国庫納付されるなら日銀の手元にはあまり残らないかもしれない。一方、持ち続ければ分配金を継続的に得られる。分配金の規模は今や年間1兆円を超え、保有国債の利息収入に迫る。重要なのは、これが金融政策の正常化を円滑に進めるための貴重な財源になる点である。
利上げ過程では、金融機関が積んだ日銀当座預金の大部分にかかる付利を上げる手法をとる。大規模な金融緩和のもと当座預金は500兆円を上回り、利上げを進めれば銀行への利払いが膨らむ。その影響の緩和にETF分配金は貴重だ。
日銀ETFの出口戦略を考えるポイント
・日銀が保有ETFを売却しても、国庫納付では日銀の手許に残らないのではないか
・現状、毎年1兆円を超える分配金が日銀に入っている。これは利上げ局面での銀行への利払いが必要となる。この資金の確保に分配金が重要
・近時、政府側から日銀保有ETFの活用案がでてきている。これを日銀が意見表明することで牽制する狙いがある
これらが日経清水氏の記事の、筆者見解でのポイントだと考えています。
筆者も清水氏の見解と同じ考え方です。ただし筆者は日銀や関係者への取材をしている訳ではないので、本コラムはあくまで報道事実などから分析した私見です。
日銀の保有しているETFは、
長期保有で、1兆円を超える分配金という果実を毎年もたらしています。
これは、「インカム戦略」そのものです。
賃貸ビルや賃貸アパートの大家さんが、毎年家賃を得られているような構図と同じと考えられるのです。
それを他人から
「物件売却して、お金にしてよ」と言われることは、日銀として望む姿ではないということなのでしょう。
そして日銀の対応は、関係者や取材記者に対して、過度なハレーションを起こさないように、丁寧な言葉で意向を少しだけ伝えたものだとも考えられると思います(私見)。
筆者が考える、日銀の出口戦略は以下です(現状の私見)。
日銀はETF売却を積極的に行わず、
分配金収入を得ながら、
市場にインパクトを起こさない範囲で、
時価で少しづつ売却していく
今後の日銀の動向は、引き続き注目を集めるでしょう。
※本コラムは特定の有価証券又は金融商品を勧誘するものではありません。
また、ここで示した方向性を保証するものではありません。