富裕層は急落相場にどのように備えているのか?
スイスの老舗プライベート・バンキングであるクレディスイスがUBSに買収されることになりました。
有名だからといっても、経営が盤石だとは限りません。
イメージが良いからといっても、ガバナンスの面で問題があれば、経営が破綻することもあるのです。
スイスのプライベート・バンキングは優れていたのか
「スイスの老舗プライベート・バンキング」との取引で、富裕層の仲間入りができたと思う投資家もいたことでしょう。
筆者は1999年からプライベート・バンキングの関連業務を始め2015年まで行っておりました。
日系のメガバンク、米系の証券、欧州系の信託銀行という様々な業界でのプライベート・バンキングを経験してきました。
実際にスイスのPBとも取引をしていたお客様がいました。
数年取引を経験した後に、スイスのPBとの取引を止め、資金を引き揚げることにしました。
【全てこのようになると断言するものではありません。一例として紹介します】
・本場のPB顧客として、相手にしてもらえない(数億円では大口顧客ではない)
・運用コストは高いのに、リターンは期待外れ
・日本の税制に合致するサービスが得られない
・時差があり、コミュニケーションに苦労をする
イメージは一流ながら、実際のサービス水準としては期待外れだったと、その投資家は語っていました。
実際のバンカーの資質でサービス内容は異なる
欧州系のプライベート・バンキングに勤務していた時の経験談を紹介します。
同じ職場であっても、顧客に提案する商品はバンカーによって違いがあったのです。
私自身は、「自分の親に勧められるモノしか、お客様に勧めない」という尺度で判断をしていました。
しかし、同じ職場であってもバンカーには
「稼いでナンボ、客の金だから、リスクはあるけど勧めて販売する」という人もいたのです。
リーマン・ショックで財産を無くした投資家のバンカーは?
バンカーの言うなりになったり、自身で高いリターンを目指した結果、過度にリスクを取り、リーマン・ショックで財産を無くしたケースもありました。
・レバレッジ(借り入れ)を過度に利用
・仕組み商品の短期運用(為替、株式、EB)
・新興国通貨関連の外国債券投資
・ハイイールド投資
・ヘッジファンド投資
これらが全てダメだということではありません。
しかし、金融危機などが起こった場合に、借入までして運用している投資家は、担保不足で強制売却を強いられるケースも発生したのです。
また、流動性(換金性)のない資産は担保評価として見ることができないという事態に遭遇したのです。
CoCo債を売ってきたバンカーのリスク許容度は?
クレディスイスのCoCo債(AT1債)が無価値となる見込みが出ています。
偶発転換社債(CoCo債)は「その他ティア1債」(AT1債)としても知られ、手りゅう弾が付いた高利回り投資と表現されることが多い。
Bloomberg 2023/03/20 『クレディ・スイスのCoCo債、なぜ価値を失ったのか-QuickTake』
一見すると高い利回りが期待できそうな商品がいろいろあります。
しかし、それらはバンカー=販売者に、大きな販売者収益をもたらす場合が多いのです。
ギラギラした、企業内で成績の良いバンカーが顧客想いとは限りません。
会社にとってもは「稼いでくれる」ことが重要なのかもしれません。
販売者にとって収益性が高い「高いリスク商品」を勧めてきたバンカーは、顧客想いなのでしょうか?
そうは思いません。
私自身は少なくとも、投資家の資産が失われるような、投資を指南したくはないのです。
その結果が「自分の親に勧められるモノしか、選択肢としない」ことなのです。
プライベート・バンカー卒業者は、米国でRIAになる
米国のRIA(Registered Investment Adviser=投資助言業者)がある国際会議でこのような内容を語っていました。
・かつてはメリルリンチやゴールドマンに勤務することがエリートの証しだった
・現在の米国ではプライベート・バンキングを卒業して、RIAとなることが信頼されるエリートの証
販売者として、証券会社で上がった手数料の一部を受け取る、コミッション型ビジネスは顧客と利益相反の関係にあります。
プライベート・バンキングといっても、「販売者ビジネス」である場合も多いのです。
一方、フィーベース型のRIAでは、顧客の資産が増えることで、RIAのフィーも少しだけ増える形です。
顧客とWIN-WINの形が築けるのです。
日本では知名度がほとんどない、「顧客サイドのアドバイザー、RIA(投資助言業)」。
しかし、米国では「RIA登録」している者だけが、アドバイザーと名乗れます。
米国では、プライベート・バンキングを卒業し、顧客サイドの中立なアドバイザーRIAになる者が増えているのです。
プライベート・バンカーはアドバイザーなのか?
富裕層は身近に「金融の執事」であるアドバイザーを置きます。
今回の事例で、クレディ・スイスのブランド、従業員の言葉を信じた投資家は痛手を受ける場合があるでしょう。
勤務先の情報を悪く告白できる販売者は少ないでしょう。
金融商品の販売を業務にしていることがなければ、顧客である投資家が収益至上主義の犠牲になることも防げた可能性があると思います。
販売者にアドバイザー機能を求めても限界があるのです。
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