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安東隆司

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安東隆司(あんどうりゅうじ) / 投資顧問

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コラム

名門だったクレディ・スイスはなぜUBSに「時価総額半分で買収」? AT1債は無価値?

2023年3月20日

テーマ:所長解説のおカネ学♫

コラムカテゴリ:お金・保険

スイスのプライベート・バンキングが揺れています。
スイスの大手金融機関、クレディ・スイスがUBSに買収される見込みです。

買収金額は30億スイス・フラン(約4300億円)規模の株式交換 (中略) クレディ・スイスの株式時価総額は17日終値時点で約74億スイス・フランで、買収額はこの半分未満となる

Bloomberg 2023/03/20 AM5:39「UBS、クレディ・スイスを30億フランで買収へ-歴史的銀行統合」

なぜ名門プライベート・バンクは凋落したのか

スイスなら資金がバレない、は既に消滅

かつて名門だったスイスのプライベート・バンキングはなぜ凋落してしまったのでしょうか?
かつてのスイスはナンバード・アカウントという口座名義の秘匿性がありました。
有名アニメや映画で富裕層が名前を隠して資金を送付する、アレです。
しかし犯罪資金の温床となる恐れもあり、口座情報の秘匿性は無くなりました。

不祥事のオンパレード、ただし勤務者は決してそのことは触れない

 クレディ・スイスでは近年、ブルガリアの麻薬組織によるマネーロンダリング(資金洗浄)を巡る有罪判決、モザンビークでの汚職への関与、元従業員と幹部が関与したスパイ・スキャンダル、顧客データのメディアへの大量リークなど不祥事が相次いでいた。
  これに加え、破綻した英金融ベンチャー、グリーンシル・キャピタルの創業者レックス・グリーンシル氏や、破綻に至ったアルケゴス・キャピタル・マネジメントとの関係が明らかになったことで、内部統制の甘さが浮き彫りになった。この結果、多くの顧客が同行に見切りをつけ、2022年後半に前例のない規模の顧客流出が進んだ。

Bloomberg 2023/03/16 11:33 『クレディ・スイスを危機に陥れたのは何か-QuickTake』

顧客を顧みない体制、営業インセンティブが問題

今回のSVB破綻での銀行セクターの下落、リスクオフが引き金となりました。
しかし、じわじわとボディーブローとして効いていた内容があります。
「アルケゴス問題」です。
2021年7月29日の、アルケゴス問題で巨額損失が生じた問題に対する報告書には以下の記載があります。

「アルケゴスを制御できず貪欲なリスクテイクを許した」と批判した。クレディ・スイスは「リスク管理全般の転換点にする」と応じ、事件を教訓に抜本的な体制見直しを図ると約束した。22年2月までに最高リスク責任者(CRO)に米ゴールドマン・サックスから同分野のベテランを招く。投資銀行部門が暴走しない体制づくりを急ぐ。

日経新聞 2021/07/29 『クレディスイス「警告顧みず利益専念」 アルケゴス報告書』
結果的には、一度失った信頼を取り戻す体制構築は間に合わず、今回の経営不振、身売りとなりました。

儲かることが正義、金融機関の収益至上主義

クレディ・スイスにも内部には警告者はいたことでしょう。
しかし、警告は無視され、「儲かることが正義」となる風潮は、リスク管理をも犠牲にしてしまうのです。
これは今回のクレディ・スイスに限った話ではありません。
日本でも市場のルールを完全に無視したインサイダー取引違反などは記憶に新しいところです。
営業部門が強い会社には、「コンプライアンスを軽視しても収益優先」という風潮があると筆者は考えています。

クレディ・スイス持ち株会社のAT1債は無価値か?

レディ・スイス持ち株会社のベイルイン対応債券と「その他ティア1債」(AT1債)は約760億スイス・フラン(約11兆円)に上る。連邦金融市場監督機構(FINMA)によると、当局がクレディ・スイスの預金者を保護するため介入すれば、このAT1債は無価値となり、ベイルイン対応債券は株式に転換される。

Bloomberg 2023/03/18 『クレディS、約11兆円の債券にベイルインリスク-社債価格が織り込む』

集中投資が招く危険性

「クレディ・スイス」ブランドなら大丈夫と思って、有利と思われる条件に乗った投資家はダメージを受けることでしょう。
分散を軽んじた集中投資は、当たれば大きなリターンである反面、今回のような経営危機では流動性(換金性)を失い、大きな損失となり得るのです。

プライベート・バンカーはアドバイザーなのか?

富裕層は身近に「金融の執事」であるアドバイザーを置きます。
今回の事例で、クレディ・スイスのブランド、従業員の言葉を信じた投資家は痛手を受ける場合があるでしょう。
勤務先の情報を悪く告白できる販売者は少ないでしょう。

金融商品の販売を業務にしていることがなければ、顧客である投資家が収益至上主義の犠牲になることも防げた可能性があると思います。

販売者にアドバイザー機能を求めても限界があるのです。

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券その他の投資商品についての勧誘や、売買の推奨を目的としたものではありません。
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