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安澤武郎プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

社員が育つ組織の特徴(2/2)

安澤武郎

安澤武郎

テーマ:人材育成

前回に続き「社員が育っている企業」の事例を紹介したいと思います。

かつては、なかなか幹部で話し合った方針や施策が展開されていかない企業でした。
それが、組織の状態が変わり「今までになく施策が展開され、担当者が新たな営業に挑戦する」
ということが起きるようになった事例です。


直接的な原因は、担当者を会議に出席させ、施策についての議論をしたことです。
担当者も参加して直接話をすることで、
「自分もやってみよう」という意欲が湧き実践につながったということです。


ただし、「担当者を会議に出席をさせたら施策が展開される」かというと、
そうでない企業もたくさんあるでしょう。
会議の進め方にコツがあるのです。


当初、担当者が参加をした会議の冒頭では、幹部からの質問に担当者の表情は強張っていました。
その会議には初参加であり、質問を批判と感じてしまっていたのかもしれません。
しかし、その担当者には語るべきことがありました。
新規顧客から契約をお預かりした事例があり、
そのヒントを周りの担当者に伝える役割がありました。

幹部から「周りの人に教える」という立ち位置で話をさせるように問いかけていくと、
自然体で自分の意見を語れるようになっていきました。
また、その会議では、複数の担当者の意見をヒントに
「クロージングのコツ」がホワイトボードで纏められていきました。
参加した担当者は、文字を見ながら考えることで、
しっかりと肚に落とすことができたのかもしれません。


会議には全担当者が出席しているわけではありませんので、
会議後に自部署に持ち帰り、もう一度「ホワイトボードを使いながら議論をする」
という取り組みをされているマネジャーがいました。

そのマネジャーは、担当者と意見交換をしながら、
「物事の考え方・考えるべき視点」や「具体的な事例研究」をホワイトボードに書き出し、
整理をすることを型として実践されています。
そして、その取り組みを「ワーク」と名付け、
「ワークをすることで担当者の参加度や当事者意識が上がる」と仰っています。

私は実際の議論に参加したことはないのですが、
議論をしながら目の前で論点が整理されていくことで、しっかりと理解を深めることや、
自分ならどうしようというアイデアが生まれる効果が出ているのではないかと思います。

「ワーク」は貴重な業務時間を週に1時間〜2時間割いて取り組んでいるということですが、
他のマネジャーからは、
「本来業務をした方が良いのではないか?」
「その分の仕事をどうやってやりくりするのか?」
などと質問が出ていました。

ポイントは、「活動量が少し減ってもそのワークをした方が成果になる」のか、
「ワークをせずに訪問をした方が成果になる」のか、での判断でしょう。
実務の水準とワークの水準のバランスになると思いますが、
リーダーの方は必要性を自分で見極めチャレンジをされても良いでしょう。


有名な「斧をとぐ木こり」の話があります。

斧を研ぐ



「ワークの水準」の話が出ましたが、
良いワークをするコツは何か?
そもそもワークは何のためにするのか?
どんな効果を期待して行うのか?
という議論をすることが必要な場合もあります。

言葉の一人歩きは怖いものです。
「ワークをすると良い」という話を聞いてきたマネジャーが、
「ワークとは何か?」をよく考えもせず、実践して、
期待する効果が得られるとは限りません。

最大のポイントは、参加者の肚に落ちて、新たな行動が見つかる、
可能性を発見し挑戦したいという気持ちになることでしょう。
そのためにどうするか、
ワークの事前準備から事後フォローまでの流れを考えて取り組んでいくと良いと思います。

このように、
日々世の中では数多くの会議が開催され、
「営業のあり方」「技術のあり方」「研究開発のあり方」など
たくさん議論がなされています。
会議が有効であったかどうかを決めるのは、
それらの考えを最終的に実践する人の「肚に落とす」ことにあります。


多くの企業でビジョンが謳われ、中期経営計画が立案されています。
しかし実行されていない多くのケースは、「肚に落とす」プロセスが抜けているからです。
どんなに素晴らしい計画であっても経営企画室や幹部が考えただけの計画に対して、
現場の社員は動きません。というか、自分の活動をするイメージが湧いていないので動けません。


営業やマーケティングをされている方なら分かるでしょうか?
相手が肚に落としてくれない限り、動いてはくれないのです。
そして、相手に肚落ちをさせるためには、自分の中でイメージが湧き、
納得できたストーリーを持っておくことが大事でしょう。

例えば、新聞を販売するのであれば、
「顧客はどういう状況で新聞を買うのだろうか?」
「暇つぶしなのか?」
「ビジネスのための情報収集なのか?」
「単に日課だからなのか?」
を自分の中で固めることが出発点でしょう。
そして、その物語を相手に提供する際には、一方的に発信をするのではなく、
相手が咀嚼し、肚に落とせるように寄り添って
(質問をしたり、意見を話してもらったり)付き合うことが必要でしょう。

マネジメントも同じです。
リーダーとして構想した世界をメンバーの肚の中に落とし込んでいくことが必須です。
場合によっては、リーダーが明確な答えを持たず、一緒に構想をした方が良い場合もあります。
チーム環境に応じてやり方(HOW)は選んでいけば良いですが、
丁寧に進めて行くことが求められます。

誤解があるといけないので補足をしておきますが、頭でシナリオを考えることは必要です。
相手が機関銃や戦車で攻めてきているのに、
「竹槍で特攻する!」と思考停止になっては勝てません。
勝つべくシナリオはちゃんと考えないといけません。
ただし、「こうすれば絶対勝てる」というシナリオが存在しないのが、現実世界であって、
「成功確率五分五分だけど、これで成功させてやろう!」などと、
どこかで肚をくくる、肚を決めることが実業においては大事だということです。
そのような組織では、社員はどんどん行動を起こし、
どんどん失敗しながらも学び成長をしていきます。

時には、頭ではなく肚を使って会議をしてみてはいかがでしょうか?

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安澤武郎
専門家

安澤武郎(経営コンサルタント)

株式会社熱中する組織

どのような組織にも「常識の壁」「アクションの壁」「スキルの壁」「仕事のやり方の壁」「コミュニケーションの壁」「情熱の壁」があり、能力を活かしきれていません。その壁を取り除き、組織を生まれ変わらせます。

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